見出し画像

ショートショート『数寄者の恋文』


数寄者の恋文

「数寄」って知ってる?
茶道で使う言葉で、風流や風雅を好むことを指すんだって。

ずっと片思いしていた同じクラスの彼に、ついに手紙を書いた。
心を込めて、震える指先で最後の一行。

「好きです。」

……のはずだった。

翌朝、机に置いた便箋を手に取る。
光にかざした瞬間、胸がひやりとした。

そこには――「数寄です。」と書いてある。

よりによって、茶道部の副部長。
この誤字、もはや運命の悪ふざけだ。

放課後、彼は駆け寄ってきた。
「君も茶道、興味あったんだね!」

そこから毎日、一緒にお茶をたてる日々が始まった。

初めて握る茶筅の手はぎこちなく、袱紗の扱いもおぼつかない。
でも、湯気の向こうで笑う彼の横顔は、何よりもやさしい。

畳の匂い、茶釜の湯気、座敷を踏む二人の足音。
小さな茶室の空気全部が、恋色に染まっていく。

手紙の誤字が結んだ縁は、茶釜の湯のように、静かに心をあたためていく。

――この恋も、きっと数寄だ。


あとがき

毎週ショートショートnoteのお題「誤字集合」、今回は2本目の参加です。

ねえねえ、「数寄」って知ってる? 知らないよね?
僕もつい最近まで知りませんでした。
もともと別の茶道にまつわる話を考えていて、その下調べの途中で見つけた言葉なんです。

ただ……「数寄」と「好き」を間違えるなんて、本当にあるのかなと。
自分で書いておきながら半信半疑でしたが、
もしそんなことが起きたらどうなるんだろう、と想像をふくらませた結果、この作品になりました。

もし少しでも「この誤字、数寄だろ?」と思ったなら、スキ・フォロー・コメントで温かく見守ってください。

連載中の『配達員ろること2号』も、誤字はないけど事件は多めですので、ぜひのぞいてみてください。

Xではフードデリバリーの話を中心に、小説やAIイラストもポストしています。お暇つぶしにどうぞ。


※本作はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。

いいなと思ったら応援しよう!

2号 無理のない範囲で応援いただけたら嬉しいです。 チップはnote更新や資料費にあててます。 読んでもらえるだけでもありがたいっす。

この記事が参加している募集