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ショートショート『彼岸花の恋』



彼岸花の恋

曼珠沙華は恋をした。
毎年、この季節に訪れる彼に。

墓へ続く小道を通る彼を、何十回も見送った。
墓に祈る彼を、何十回も見つめた。

──彼に触れたい。

それから何十回目の彼岸だったろうか。
奇跡は起きた。
気づけば地を離れ、赤い花弁がひらひらと舞い、衣へと重なっていく。
茎はしなやかな脚へ、蕊は黒髪の先へ──
曼珠沙華は、ひとりの少女の姿へと変わっていた。

彼女は震える指先で赤を摘み、そっと彼の背に近づく。
「……あの、ずっとあなたに会いたかったの」

振り返った青年に、一輪の赤を差し出した。
「これを……」

青年は微笑み、花を受け取り、墓前に置く。
「ありがとう、花を供えてくれて。」

その笑みのまま、風にさらわれるように姿は消えていった。

残された墓石には、彼の名と──百年以上前の命日が刻まれていた。

気づけば、そこに一輪の曼珠沙華が揺れていた。
彼の墓と、寄り添うように。


あとがき

毎週ショートショートnoteに参加させていただきました。
お題は「曼珠沙華は恋をする」。

そのままタイトルになりそうな美しいお題。
比喩的に「恋」を描くのが王道かなと思いつつ……今回は花そのものに恋をさせてみました。
幽霊だの擬人化だの、ファンタジー過剰になった気もしますが(笑)

少しでも楽しんでもらえたら、スキやフォロー、コメントで「曼珠沙華の花言葉」に新しい意味を刻んでやってください。

連載中の『配達員ろること2号』も、本作に負けず劣らずロマンチック(?)な展開になってきました。

Xではフードデリバリーの話や小説、AIイラストなんかも投稿しているので、そちらも気軽に覗いてみてください。

※本作はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。

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