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ショートショート『和解劇場 ―台本にない再会―』


和解劇場 ―台本にない再会―

「あ……」
劇場の席に座ろうとした瞬間、隣にいたのは元カノだった。
台本にない沈黙。互いに視線を逸らし、前を向く。

咳払い、ざわめき。暗転、拍手。舞台が始まる。
デート失敗の場面で、彼女が呟いた。
「これはないよな……」
俺もつい返す。
「そうそう、これはないよな……あ」
口を押さえる。横で、小さく笑った。

遅れてきた彼氏が言い訳を重ね、彼女の涙が増えていく。
俺は、あの夜の自分を見ている気がした。
「……怒るのも仕方ないよな」
彼女がぽつりとこぼす。
「でも、事情も聞かず責めるのは酷くない?」

顔を見合わせ、互いに小さく笑ってしまう。
――そうだ、別れたときもこんな口論だった。
あの頃はぶつけ合うだけで終わったけれど、今は相手の言葉にも頷ける。

幕が下り、照明が戻る。
出口へ向かう足音が揃い、気づけば肩が並んでいた。

夜風に肩をすくめた彼女が、照れくさそうに笑った。
「……この再会、台本にはなかったけど。
 ――アンコール、あるのかな」


あとがき

毎週ショートショートnoteのお題「和解劇場」に参加させていただきました。

今回はもう、いたってシンプルに「和解劇場」です。
別れた恋人が偶然、劇場で隣同士に座る。
幕が上がった舞台が、かつての自分たちの失敗や別れとシンクロしていき、気づけば互いの気持ちを理解し合う。
――そんな“絵に描いたような”お話を書いてみました。

シチュエーションとしてはベタかもしれませんが、ベタだからこそ真っすぐに響くものがあるかなと思っています。
舞台という場所は、登場人物に「観客でありながら、自分の物語を見せられている」という不思議な距離感を与えてくれる。
その空間をきっかけに、過去と今を重ね合わせていく物語にしてみました。

ちなみに僕自身は劇場に足を運ぶ習慣がまったくなく、舞台に縁があるわけでもありません。
当然ながら「劇場で偶然、別れた恋人と再会する」なんていうドラマチックな体験もゼロです(笑)。
だからこそ、想像の中で好きに描けたのかもしれません。

お読みいただきありがとうございました。
次回もどうぞよろしくお願いします。


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舞台のアンコールと同じで、反応があると作者もまた幕を開けたくなります。

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こちらは劇場ではなく、街中を舞台にした疾走系ストーリー。
配達員の視点から描く日常と非日常が入り混じった物語です。

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劇場ロビーでの雑談のように気軽に覗いてみてください。


※本作はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。
また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、
特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。

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