見出し画像

ダンジョン第108階層【実録】『暗黒の異端審問と悪魔の誘惑!反逆のエリートが放つ起死回生の猛毒』

前回の物語はこちら👇️👇️👇️

01:ドーン・オブ・リベレイション〈啓示の夜明け〉


窓の外が白み始めた頃。
篠田は、徹夜明けの清々しい気持ちの高鳴りを苦い漆黒の覚醒水(コーヒー)を飲みながら静かに整えていた。
最強ギルド(大企業)青木工業の誰もいないフロア。 一旦自宅に帰り、身支度を整え直すために魔導板(パソコン)を閉じようとした、その瞬間のことだった。 「ピコン」 一通の瞬刻の電子文通(メール)が届いた。 篠田は重い瞼をこすりながら、恐る恐るその内容を開いてみる。

画面に映し出された文字を追ううち、彼の目は大きく見開かれた。 思わず驚くようなその内容に、「これはいけるぞ」と確かな高揚感を全身で味わっていた。 それは、暴君たちを葬るためのさらなる強力な武器となるのか。

それとも、彼の冷徹な人生において予期せぬ恋の行方が進展した報せなのか。 真意は胸に秘めたまま、彼は静かに席を立った。

そして、運命の午後1時。

篠田は、暗く狭い拷問部屋のような密室に一人座っていた。 先日に引き続き、異端審問(事情聴取)が行われるのだ。 そこは圧倒的な重圧と欺瞞に満ちた空間であることは間違いない。 この孤独の環境下で、「やっていない」という完全な無実の証明をしなければならない。 もしくは、ギルドにとってこの難局を乗り切るための有益な情報を提供しなければならない。 いずれにしても、ここを乗り越えられなければ、篠田自身の権能拡大(出世)の道も完全に途切れることになる。

予定の時間を少し過ぎて、重厚な扉が開いた。 静かな空間の中に、ひんやりとした空気が漂い込む。 2人の審問官がゆっくりと入室し、重々しく席に着いた。


02:サイレント・インクイジション〈静寂の異端審問〉


目の前に座るのは、法の執行陣列(法務部)の金子統括導師と情報伝達陣列(広報部)の栗林統括導師だった。
今日は、栗林から重苦しい第一声が放たれた。

「篠田君。今日もわざわざ時間を取ってもらって悪いね」

「先日、君が言っていた有益な情報の巻物(資料)は、用意してくれたのかね」

篠田は無言のまま、作成した分厚い資料を2人の前にそっと置いた。 そして、冷徹な声で説明を始めた。

「今日、お二人の前にお出ししているのは過去5年間にわたる互助陣列(互助会)とのおける一閃価(単価)交渉の取引記録になります」

「ここで、極めて興味深い事実が見えてきます。お手数ですが、先日の情報の巻物(週刊誌)をお持ちでしょうか」

金子は訝しげな表情を浮かべながら、そっと篠田に雑誌を渡した。 篠田は魔導書(記事)のページを開き、一点を指さしながら説明を続ける。

「ここにある、盟約の対価記録(領収書)の日付をご覧ください」

「そして、私が提示した互助陣列メンバーのギルドが一閃価を維持されている月を確認すると、ピタリと一致することが明らかになります」

圧倒的…!

「最終的に一閃価を維持するかしないかは、伊藤統括導師(部長)が独断で判断されていました」

「あくまでも私は段取りと交渉の過程を担い、最終的な締結の事務作業を行っていたに過ぎません」

「価格の決定権は伊藤統括導師にあり、価格が維持された月にこの時計の領収書の記事は完全に一致するのです」

さらに篠田は、そっと1枚の紙を提示した。

「そして、この領収書を発行している時計店に関する有益な情報を入手しました」

金子は一瞬、これが何を示しているのかわからず眉をひそめた。

「篠田君。この数字の羅列は一体なんだね」

満を持して、篠田が鋭く答えていく。

「この時に買われた領収書の時計の『製造番号』が記載されています」


03:デビルズ・ウィスパー〈悪魔の囁き〉


金子はこれが単なる偶然にしてはおかしいと直感しつつも、慎重に質問を返す。

「それが一体、何の証拠になると言うんだね」

篠田は自信に満ちた表情で二人の目を真っ直ぐに見据えた。

「お二人も、薄々感じていたんじゃないですか」

「同じポジションでありながら、伊藤統括導師の腕につけられている不可逆の命脈測儀(高級時計)が何種類もあることを」

「ある程度の年齢の男性ならば、同僚の腕についているのが高級時計であれば、自然と目は行くはずです」

「そして、同じギルド内であれば、報酬金(給与)の水準もそこそこ把握できる」

「あの時計がそんなに何種類も買えるほど、我々は貰ってはいないことを理解しているはずです」

戦慄的…!

「前々から、その異常さには気づいていたんじゃないですか」

篠田は、2人の統括導師に向かって鋭い刃のような質問を突きつけた。 金子は苦々しい顔をしながら、絞り出すように答える。

「……確かに、君が提示してくれた資料と領収書の日付の相関性については理解した」

「だからと言って、伊藤統括導師に『時計の提出を求める』ということになるのかね」

そこで篠田は口角を微かに上げ、悪い顔をしながらあることを囁き始めた。

「お二人に、深く考えてほしいことがあります」

「今、青木工業は創業以来の最大のピンチに直面しているのかもしれません」

「そこで、薄々感づいていながらも放置してきた組織の腐敗について、今後、外部から厳しい追及がなされていく可能性があります」

「そうなれば……法の執行陣列(法務部)と情報伝達陣列(広報部)にも、かなりの責任が問われることになると思いませんか」

栗林は篠田の言葉に背筋が凍るような恐怖を感じながら、その先を聞くために問い返した。

「そ、それは一体どういうことかね」


04:パーフェクト・クーデター・プラン〈完全なる反逆計画〉


篠田の追及は止まらない。

「つまり、外郭盟約の補給陣列(購買部)が異常な成果を出す中で、ここまで一閃価(単価)を引き下げたりする行為が頻繁に起きている」

「正常な取引がなされていないことには、法の執行陣列(法務部)も以前から気づいていたのではないですか」

「そして、情報伝達陣列(広報部)においても、今回の対応は事前にある程度予想ができたにもかかわらず、満足な対応ができず事を大きくした」

「その責任は、極めて重いのではないですか」

二人は返す言葉もなく、下を向きながら黙ってその残酷な事実を聞いていた。

絶望的…!

「しかし、お二人にはまだチャンスがあります」

「今回のことをきっかけに、組織改革を先導する役割を担えば、次期組織の中枢としてさらなるポジションも見えてくるはずです」

金子はハッとして前のめりになりながら、篠田に質問をぶつける。

「具体的には……どんな話になるんだい」

その頃。

俺(異次元おじさん)は、王都の片隅の魔力充填所(純喫茶)で篠田からの吉報を待ちながら、脳内でこの決戦の盤面をシミュレーションしていた。

極度の緊張と興奮をごまかすため、無意識にハードボイルドな大人の男を気取ろうとする痛々しいルーティンに走った。

渋く葉巻をふかす真似をしようと、手元にあったスティックシュガーを口にくわえ、間違えてそれに火をつけようとマッチを近づけた瞬間。


「あっちぃッ!」

燃え上がった砂糖が指先にドロリと垂れ、俺は涙目で指を押さえながら床を転げ回った。

『おい、おっさん!』

『シリアスな待機中に砂糖を燃やして指をキャラメリゼするとか、ただの菓子職人だワン!』

『甘ったるい匂いを漂わせて、ハードボイルドな空気が完全にスイーツ空間に変異してるワン!』

魔犬ツンの容赦なき言語刃が、俺の心臓を抉る!

痛恨的…!

俺は火傷の痛みを丹田の底に抑え込み、全身の血管を沸騰させるほどの強大な魔力を練り上げた。 遠く離れた密室で戦う篠田へ力を送るため、心の中で激しく詠唱した!

「放て……!」

パーフェクト・クーデター・プラン〈完全なる反逆計画〉ッ!!

俺の魔力と同調するかのように、篠田は冷徹に言い放つ。

「膿を出すんですよ」

「鮫島長老と伊藤統括導師を、調査の結果として役員会に掛け、懲戒免職、もしくは法的に訴えるんですよ」

起死回生的…!

「その上で、今回の一閃価の取引に対しては、正常な取引の透明度を上げて、ある一定の水準まで戻すことを対外的に宣言するのです」

「そしてこれからは、互助陣列メンバーのギルドと公正な取引をするための『取引委員会』を設立するのです」

「それらの実務につきましては……私が担当させていただきます」

篠田はしばらく黙ったまま、全てを焼き尽くすような冷ややかな表情で2人に向かって言い放った。

「お二人には、覚悟を持って2つのことをお願いしたい」

最強ギルドの中枢で放たれた、反逆のエリートによる猛毒の刃。 組織が内部から崩壊する音が、静かに響き始めていた。

いざ、次なる階層へ。


【次回予告:ダンジョン第109階層】


ついに牙を剥いたエリート係長! 保身に揺れる法務部と広報部を「悪魔の囁き」で完全に取り込む! 提示された2つの強烈な要求とは!? そして、徹夜明けの篠田に届いたあの一通のメールの正体が、物語の歯車を狂わせる! 追いつめられた暴君・伊藤と鮫島長老に、破滅の足音が迫り来る! 全てをひっくり返す大逆転劇から目が離せない! 次なる死闘が今、幕を開ける! 次階層を見逃すな!

最後までお付き合いありがとうございます。


【お知らせ】

異次元おじさんの魔道具店リニュアル!!

日々のクソゲー攻略の新しい禁断の書や魔道具がお手頃価格で出品中!!

他では絶対に手に入らない異次元おじさんの視点の魔道具が出品中!!

理不尽なクソゲーからの解放される逸品揃い!!👇️👇️👇️👇️

【迷宮の深淵へようこそ】

この 「クソゲー(社会)」 から強制ログアウトさせられた、時給1,100円スタートの男の生存戦略。

覚悟がある奴だけ、次のページをめくれ。

まさにこのダンジョンへの現在の最下層までの探索が一気にしたい冒険者はこちら👇️👇️

異次元おじさんの自己紹介はこちら👇️👇️


いいなと思ったら応援しよう!

サイコードン 執筆継続のためのMPの回復ポーション受付中!皆様のチップで私のやる気が爆上がりし、供物(生活費)という名の守備力も強化されます。頂いた支援は私の「PPR(個人再構築)」プロジェクトの運転資金として最適に配分され、記事のクオリティを劇的に改善します。ポチッと回復魔法を!