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お母さんからの、何もない誕生日

小さい頃から、家で誕生日を祝ってもらったことはなかった。

自分の誕生日は、当たり前のように過ぎ、
いつもと変わらない日常が繰り返されていた。

両親も忙しく、
誕生日を祝う習慣もなかったため、
私もそれが当たり前だった。

ある時、お母さんと一緒に、
いとこ家族と不二家のレストランへ行った。

美味しいご飯を食べていると、
ろうそくの刺さったケーキが運ばれてきた。

電気が暗くなり、ろうそくの火がパチパチ光っている。

「お誕生日おめでとう〜!」

その日は、いとこの誕生日だった。

うわぁ、いいなぁ。

私は、ただただ羨ましかった。

それからも毎年の誕生日は何も変わらず、
ただ普通に過ごす日が続いていた。

思えば母も、
私の誕生日を忘れていたわけではない。

誕生日の日には、夕飯のおかずに唐揚げを揚げてくれた。

それが母の精一杯の愛だった。

子どもが生まれ、子どもの誕生日を祝うようになった。

生まれてきてくれてありがとう。

言葉には出さないし、飾り付けもしない。
プレゼントもない。

そんな食卓には、
丸いホールケーキと、唐揚げが並んだ。

母の気持ちが少しだけ分かるようになっていた。


ある年、
家族のことや仕事のことで悩んでいた私は、
少し疲れていた。

実家へ行くと、母はいつも私の身体のことを心配していた。

すると母が、何気なく小さな箱を持ってきた。

「これ、婦人会で出かけた時、いいなと思って。たまたま見つけたんだよ。」

箱を開けると、なぎの葉のネックレスが入っていた。

「なぎの葉のネックレス。

へぇー。守ってくれる、お守りになるんだって。」

母は、

「そう。元気ないから、お守り。

普段もつけられそうでしょ?」

そう言って笑った。

母は、出かけた先でも、

自分の物は何ひとつ買わず、

私のことを思っていた。

ありがとう。

私はそう言って箱を持ち帰った。

誕生日が少し過ぎた頃だった。


何もない誕生日。

いつもと変わらない日常。

けれど、母にとっては、

いてくれるだけで、十分だった。


ひぐらしが鳴く、夏の夕方、

家にある引き出しを開け、

なぎの葉のネックレスの入った箱の、

ふたをあけてみる。

そこには、

いつも変わらない

なぎの葉のネックレスがあった。





#創作大賞2026                               #エッセイ部門

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