もし哺乳類として生まれ変わったら、僕はムササビにはなれない気がする
もし哺乳類として別の生を選べるなら、僕はムササビになりたい。
クジラもいい。
広い海を泳ぐ姿は格好いいし、余計なことを考えなくても済みそうだ。
でも、よく考えるとクジラにもクジラなりの悩みがある気がする。
「あのオスクジラ、また近づいてきた」
「今日はあっちの群れに行こうかな」
そんなことを考えているのかもしれない。
だったら、人間とあまり変わらない。
その点、ムササビはいい。
木から木へ滑るように移動して、昼は丸くなって眠る。
飛んでいるように見えるけれど、本当は落ちながら少しだけ前へ進んでいる。
なんだか親近感がある。
そして、できれば美人さんに飼われたい。
毎日「かわいいね」と言われながら、ごはんをもらって、夜になると部屋の中を少しだけ滑空する。
たまに肩に乗っても怒られない。
そんな生活なら悪くない。
……と思ったところで気づく。
それはムササビになりたいんじゃない。
安心したいだけだった。
自由になりたいと言いながら、誰かに守られる未来を想像している。
結局、僕が憧れていたのはムササビではなく、「安心して眠れる毎日」だったのかもしれない。
そう考えると、人は生き物に憧れているようで、自分の足りないものに名前をつけているだけなのだろう。
それでも、もし来世を選べるなら。
やっぱり一度くらいは、ムササビになってみたい。
できれば、美人さんの家で。
でも、たぶん僕はムササビにはなれない。
憧れていたのは空を飛ぶことじゃない。
安心して眠れる毎日だった。
だから僕は、ムササビにはなれない気がする。
