BigXthaPlugの「挨拶」哲学と6WA誕生の舞台裏
2026年3月20日にリリースされたBigXthaPlugと600 EntertainmentのコレクティブアルバムはBillboard 200で118位を記録し、The Tonight Show Starring Jimmy Fallonへの出演も果たした。Apple Musicが制作するThe Ebro ShowにBigXthaPlug、Ro$ama、Yung Hoodの3人が揃い踏みしたインタビューでは、N.W.A.にインスパイアされた命名の経緯、Snoop DoggとThe D.O.C.という伝説との連帯、そしてBigXthaPlugがカントリー音楽で開いた感情表現の扉まで、"6WA"誕生の全貌が語られた。
N.W.A.への「挨拶」:6WAという名前が生まれた瞬間
BigXthaPlugが前作"Meet the Sixers"を終えた後、600 EntertainmentにPBが加わり、グループとしての新たなプロジェクトを模索し始めた。きっかけとなる閃きが生まれたのは、ツアーで立ち寄ったCarolinaのBaby Festだった。BigXthaPlug、Ro$ama、Yung Hoodの3人はブレインストーミングを続け、「Sixer Land」など6を冠した名前をいくつか検討していた。そこでBigXthaPlugのDJが一言放った。「N.W.A.みたいな感じで何かやれよ。」その瞬間、「6WA」という名前が閃き、即座に決まった。
名前が決まると同時に、プロジェクトの意味も固まった。BigXthaPlugは当時、カントリーアルバムの制作を並行して進めていたが、地元では警察に絡まれる日常が続いていた。どれだけ音楽の世界で実績を積み上げても、自分が置かれた状況の理不尽さは変わらない。「N.W.A.がポップしたとき、彼らも法律や周囲の人間と色々あった。俺たちも同じだった。だから6WAという名前が手と手が合わさるように決まった」とBigXthaPlugは語った。
しかし名前が決まっただけでは、N.W.A.の系譜に名前を刻む権利は得られない。BigXthaPlugが強調したのが「挨拶」の哲学だった。「他人の地元に踏み込むのに挨拶しないのは失礼だ」という言葉で彼が示したのは、N.W.A.の精神的なホームであるウェストコーストに踏み込むには、まずレジェンドへの正式な礼儀が必要だということだった。彼らはIce Cube、Dr. Dre、Snoop Doggの順に連絡を試みた。Ice CubeとDr. Dreからの返答は得られなかったが、Snoop Doggへのアプローチが実を結んだ。
Snoop DoggがThe D.O.C.を引き合わせた日
Snoop Doggへのアプローチは、Ro$amaが先陣を切った。スタジオで作業中、マネージャーに一言告げた。「マネージャーとしての力を使ってSnoop Doggに繋いでくれ。」その一言で話が動き始め、コラボレーションが実現した。Snoop DoggはヒップホップのDNAに対して誠実な作り手なら惜しみなく支援する人物だとBigXthaPlugは言う。しかしSnoop Doggはそこで終わらなかった。「お前たちThe D.O.C.に話しかけたのか?」600 EntertainmentのメンバーはThe D.O.C.について知識はあったが、彼の代表作を通して最後まで聴いたことはなかった。
The D.O.C.はDr. Dreの"The Chronic"に歌詞を提供したことで知られるが、彼がDallas出身のMCであることを知らない人も多い。Snoop Doggはその点を強く指摘した。「彼こそが設計図だ。俺が今やっていることは、彼がやったことがあってこそ生まれた。」この言葉を受けてBigXthaPlugたちがThe D.O.C.への連絡を試みようとしたとき、Snoop Dogg自身がすでにThe D.O.C.へ声をかけていた。「俺たちが連絡を取ろうとしたら、Snoop DoggからThe D.O.C.に話が行っていた。それほどSnoop Doggがプロジェクトに彼を迎えたかったということだ」とBigXthaPlugは振り返った。
The Ebro Showの司会者Ebroが「The D.O.C.がDallasから来たことを知らなかった人もいる」と述べたとおり、この作品は一般に知られていない歴史的な点を繋いでいる。DallasとウェストコーストのMCとしての系譜、そしてN.W.A.の内側で機能した書き手としての仕事。The D.O.C.とSnoop Doggの両名を"6WA"に迎えることで、BigXthaPlugたちは「公認」を得た。単なる客演招致ではなく、Dallasを起点とした二つの歴史の線が、この作品を通じて初めて交わった瞬間だった。
カントリーで開いた感情の扉
"6WA"の制作中、BigXthaPlugは同時進行でカントリーアルバムを手がけていた。ヒップホップの世界から踏み出してカントリーに挑むことについて、BigXthaPlugは「今まで作った音楽の中で最も難しかった」と振り返る。ヒップホップは語るべきストーリーがあれば後は音に乗せるだけだ。しかしカントリーには、ストーリーがあるだけでは足りない。「感情に踏み込まないといけない。嘘がつけない」と彼は言い切った。
そのアルバムはBigXthaPlugにとって最も赤裸々な作品になった。恋に落ちる感情、恋を失う感情、その混ざり合いがそのまま楽曲になった。「これまでで一番脆弱な自分だったと思う」とBigXthaPlugは言い、Ebroの「感情を全部出せたことは一種の解放だったのではないか」という問いに首肯した。
カントリーの体験が彼に与えたのは、楽曲技術だけではない。人間関係に対する見方も変わった。「一番大物のカントリーアーティストに今すぐ電話しても出てくれる。ヒップホップではそうはいかない場合がある」と彼は語った。TankとTyreseが互いをいじり合う動画を引き合いに出しながら、BigXthaPlugはヒップホップ内に存在することのある不健全な競争心を率直に語った。「自分の才能に確信がある者同士ならば、相手の活躍を脅威に感じる必要がない。」しかしヒップホップには、仲間の成功が自分を脅かすという感覚がしばしば漂う。カントリーではそれがない。Ro$amaは「6WA以降、たくさんの人が声をかけてくれるようになった。でも同じ場にいたのに、あのときは俺を見ていなかった人たちだ」と静かに言い添えた。BigXthaPlugのカントリーでの体験と、Ro$amaのこの一言は、同じ問いの裏表を映している。「本当の友達をたくさん作れた」とBigXthaPlugが語るように、カントリーでの挑戦は楽曲技術だけでなく人間関係の質をも変えた。
合宿スタジオと怒りのベストテイク
"6WA"の制作は、人目のない場所での完全合宿によって進められた。LAでもマイアミでもアトランタでもなく、ArizonaやPalm Springsのような静かな土地を選ぶ。「遊べる街に行くと仕事をしなくなる。合宿では朝起きて夜寝るだけを繰り返す」とBigXthaPlugは説明した。服を適当に着て、ビートが流れ続ける中で過ごす日々。日常から切り離された空間が、作品の密度を高めた。
"6IXER Party"の誕生も深夜の即興から生まれた。BigXthaPlugが方向性に行き詰まり、参考として「Round and Round」や「Summer Time in the LBC」を流したとき、Ro$amaは当初全力で拒否した。しかし深夜3時から4時にかけて、HoodとPBが眠り他のメンバーが散っていく中で、Ro$amaはプロデューサーのTony Colesとふたりでフックとバースを書き上げた。「声が合わない。代わりに歌ってくれ」とRo$amaが頼んだが、Tony ColesはNate Doggの音楽を聴いたことがなかった。何曲か聴かせると「こういう感じで歌えばいいのか」と理解し、テイクを録った。BigXthaPlugはその完成バージョンを聴いた瞬間、自分のバースを10分から15分で書き上げた。
意外な展開となったのが"Safe to Say"だった。このトラックは制作チームが「穴埋め用の曲」として位置づけていたものだ。BigXthaPlugですら「ただ枠を埋めるために置いた曲だ」と振り返った。しかしリリース後、アルバムの中で5番目に多く再生される楽曲になった。「現代版の『It Was a Good Day』だ」というEbroの評価は、この曲の本質を言い当てていた。どこへ行くかわからない日常を持ちながら歩く人間のための音楽。アルバムの最初に録音された"600 Degrees"は、ツアー中のSeattleで起きたある出来事の直後にスタジオへ駆け込んで作られた。その出来事については現在係争中のため多くを語れないとBigXthaPlugは述べたが、感情がそのまま楽曲に流れ込んでいることは確かだ。
"6WA"がBillboard 200で118位を記録し、Jimmy Fallon出演を果たした今、BigXthaPlugは「これはゴールではなく発射台だ」と言う。次のレコーディングトリップでは各メンバーのソロプロジェクトのためにホワイトボードが一人一枚用意されるという。「家族の全員が一人一人で世界へ出ていく。それが600 Entertainmentの次の一手だ」とBigXthaPlugは締めくくった。
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