あの頃の”狂気”だった関西ラップを振り返ろう
巷では、Netflixシリーズの”ラヴ上等”が話題になっている。その予告を見ると、見たことある顔が飛び込んできた。仲道大輔にそっくりな彼ではなく、136youngbossであった。
正直目を疑ったのが本心である。薬物の前歴あり、かつ元ヤクザであったからだ。
そんな彼を見て、ふと思い浮かべたのである。あの時の関西ラップは良かったなあ、と。
結論:REAL-Tで始まりREAL-Tで終わった
身も蓋もない結論から言うと、上記の通り、Real-Tがシーンにいる間が、最盛期・全盛期であった。クロちゃんゲンちゃん、有名なDexfilmzとFezbeatzと”みどり”で繋がっているような関西ラップ界隈。とても良かったのである。そしてあの事件、収監。シーンは終わった。
そもそもの”関西”とは
関西を大阪という括りで見てみると、全くの盛り上がりを見せない土地であった。辛うじて韻踏合組合とSHINGO☆西成がいるだけで、その他は全くいないような世界。名古屋はAK-69にTOKONA-X、横浜にはMACCHO、東京には…と東に行けばたくさんいるのに。
その韻踏合組合のHIDADDYがサイゾーでの関西ラップ特集で語ったのがこれである。
興行として大阪のアーティストだけで成り立つようになったのは、本当に最近になってからじゃないですかね。
(中略)
「興行として先に成功したのは、レゲエ勢とバンド系だった」
大阪のレゲエ勢を挙げろというと、TERRY THE AKI-06やCHEHON、RYO the SKYWALKERにPUSHIMと、何人でも名前が出てくるが、ラッパーが不毛な土地でもあった。
それもそのはず、大阪のこの時代の若者は誰もラップなど聴いていなく、COCOLOを着て、CHEHONの”みどり”を合唱するような土地だった。
ですが、2010年代後半になると、世はラップブームに突入し、表の世界では”一応”堺出身金岡高校のR-指定が、バトル界隈からプロップスを得るようになり、ラップが育つ土壌が耕されていった。
そんな中、”ホンモノ”の大阪では、”拳月”や”テポドン”などの半グレが闊歩している状態であった。実際に、場末のスナックでさえ半グレグループの千社札が貼ってあったり。
音楽でバズらない孫GONG
覚醒剤!!!
このひょうきんなキャラクターでバズってしまった孫GONGさん。音楽でバズってよ。
ちなみに一番好きなジャパマゲの回は、”ボーイミーツガールの回”。
未だに人間ドックの回を楽しみにしていますが、”みどり”界隈は何故か反ワクチン派のような反知性主義者が多いので、叶わないでしょう。
音楽でバズった孫GONG
2019年には、舐達麻の人気が急上昇し、同時にヘッズの間での”みどり”の話題が多くなりました。「カナダでは解禁されている!」「安倍昭恵も喜んでいる!」だとか、しょうもない話題でストーナーたちは盛り上がっていた(この人たちどこ行った?)。
そんな抜群の雰囲気でのタイミングでリリースしたのが、上記の”REAL STONER”。舐達麻の”FLOATIN'”はアムスでの撮影であったのに、これはもう日本丸出しの撮影で、びっくり仰天。少年のような顔で映る孫GONGの口から出る”三度の飯より草を選択”。やばいでしょ。
シーンはBADHOPみたいなモノから、一気に潮目が変わったような瞬間であり、この瞬間に大阪で、関西でラップシーンが一気に開花した。
そもそもレゲエが根付いていたこの土地での”みどり”の親和性はとても高く、爆発性もかなりのものであった。
突然出てきた”ホンモノ”
その土壌から突然生えてきたのが、”REAL-T”であった。
先述のサイゾーでもこう書かれているように、最初のリスニング体験は本当にひどいものと思ってしまうレベルである。息継ぎが気になってリリックが入ってこないレベルで。
聴いて数秒は素人のラップに聴こえるかもしれない・・・
でも、線が繋がるんですよね。聞いたことがあるリアルグループをレペゼンして、吐き出すスラングも”ホンモノ”っぽいと…。
I'm a REAL-T レペゼンリアル D.Oは革手で 僕らはゴム手 弁護士言うたら私選か国選
ちなみに、”今里新地”は大阪における赤線地帯であり、なおかつ今里地域には猪飼野が含まれる地域である(え、猪飼野ってなに?との問は答えません。この記事はハイコンテクストなものなので…)。そして、歴史的に在日コリアンが多く在住している土地と認識されている。
よく聞けあいつはキンマの犬
隙を見せれば持って行かれる
偽物のパイナップル
教えてくれる 使い道
内定捜査ガッチガチ
さぁ、隣のマンションに引っ越し
*#06# 盗聴されてるこのプリケ
関係者でありたがる君
抜け出せ関係ないうちに
ミナミで顔効かすぽっと出
忘れられて消えるほっとけ
ガッツの移入を間違える
やりすぎる この世から消える
早なる度に増える半目
品物食ってもええことないって
”キンマ”から始まるおどろおどろしいスラングの羅列。”*#06#”という半ば都市伝説のようなテクニックを用いたり、”ミナミ”で羽振りがいい人はいつの間にか消えていく諸行無常な光景を描き出したと思えば、”ガッツ”の使い方まで指南してくれる。
これこそがREAL-Tのスタイルであり、”寒い”所以である。
花隈公園から逃げてきた”ホンモノ”っぽいやつ
その後リリースされた、”寒唄”の136 Remixである。真打ち登場。
”巽”で”型落ちLS”を”パチモンのブランドもん”でかためた洗車している半グレである。それが京都・城陽出身の136youngbossであった。
リリックで出てくる”花隈公園”、そしてハモるニッイッイー。実に”ホンモノ”っぽい出で立ちである。それが、5年後にこんなことになるなんて…。
と映像でみるとインパクト大なのだが、意外とリリックの骨組みはしっかりしている。
そもそもの”寒唄”自体がなかなか”寒い”曲であり、”パキパキ”なREAL-Tが想像できる曲である。
Verse 2に関しては、しっかりとケツで踏んで、AABBとライムスキームもいい感じである。そして、リリックで映像が思い浮かぶ”リアル”さがあった。本当に”寒い”。
意外と渋いぞ!TORNADO一家
孫GONGを触れたら、もう一人の相棒を紹介しないといけない。それが、高槻出身のJAGGLAである。そして、JAGGLAが率いるのが竜巻一家(TORNADO)である。メンバーはJAGGLA、Bic、HABU、Cz TIGER、TSURUなどであり、まあ聞いたことのある名前もあると思う。
しっかりと、SHINGO☆西成とGAZZILAという大阪の先輩を起用した”DIAMOND”は一聴の価値あり。そして、このあたりから大阪の根付いてきたレゲエサウンドとヒップホップ界のフュージョンが始まっていくのはまた別の機会に…
そんなリスペクト系もあれば、しっかりとフックアップする”圧倒的”みたいなのもあったり。JAGGLAさんは声が特徴的なのに、発音が明瞭なのでリリックが聞きやすい。どこかのマンブル川崎ラッパーとは大違いである。
”地元は大阪 負ける気なし”のパンチラインで締めると、次は太尊くん。住之江の雄。見た目だけ。中田翔と一緒やね。”昼間からコケイン まるでなにわ グッチ・メイン”とこの頃は良かったEric B.Jr。
EBJに関してはREAL-Tとのジョイントプロジェクトもあり、結構上出来。バイブスハルカスで聴こう。
そして竜巻一家のいいところは、一家まとめてのマイクリレー曲があるところである。
りんくう周辺と、地元高槻で撮影された”Tornado Soldier”。Cz以外のフックもヴァースも一級品。
今年は演ってくれなかった420の祭典、Smokeoutでおそらく撮影されたであろう、”TORNADO ANTHEM”。これも本当にいいのだが、Czだけいらない。
竜巻一家で、一番好きであり、リアルをリリックに落とし込めているのがこのLil Dragonだと思っている。前向きになれる等身大のリリック、ありがちなハッスルに逃げない姿勢。”おかんの肩叩いて 好きに使えこの100万円”という、このリリックから感じられる高すぎる解像度。
思い出そう、謎炎上のNAMIMONOGATARI
2019年から2022年の関西シーンを語る上で、避けて通れないのが2021年8月に愛知県常滑市で開催されたヒップホップフェス「NAMIMONOGATARI 2021」である。このイベントには、舐達麻、ジャパニーズマゲニーズ、MC TYSONなど、本稿で取り上げた主要アーティストの多くが出演していた。
コロナ禍の緊急事態宣言下(またはまん延防止等重点措置下)において、密状態で酒類が提供されたこのイベントは、SNSを通じて拡散され、全国的なニュースとなり大炎上した。
シャバイ大御所ラッパーは「県のルールに則っていると聞いていたが、開けてみたら危険な状況だった」と謝罪し、「ヒップホップシーンを牽引する立場として責任を感じる」と発言した一方で、出演した若手・中堅アーティストたちの対応は分かれた。
この事件は、ヒップホップシーンに対して「社会的な責任」を問う契機となった。舐達麻やジャパニーズマゲニーズのように「我が道を行く」スタンスのアーティストたちは、世間からの批判に対して沈黙、あるいは反発する態度をとることで、コアなファンとの結束を強めた側面がある。一方で、メジャー志向のあるアーティストや、企業スポンサーのついているイベントにとっては、コンプライアンス意識の欠如が致命的なリスクになることが露呈した。
このイベントは、2019年から続いてきた「イケイケドンドン」のストリート・ラップ・ブームに対し、冷や水を浴びせる出来事であり、その後のシーンが「アングラ」と「ポピュラー」に明確に分化していくきっかけの一つとなったと分析できる。
さあ、話を偉(136youngboss)くんに戻そう
時は大ストーナー時代。横の繋がりは強いようで、孫GONGさん界隈は舐達麻やRYKEYさん辺りとしっかり繋がっていて、その界隈で流行っていたのが、職務質問晒しである。
その時の、身の振り方を教えてくれるのが、”警職法2条第3項”である。
3 前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。
と、上記の警職法2条第3項を引用している。これを学び、ばんかけから逃れる。ヒップホップ文化を形容しているものは、公権力には反抗するのだ(高市政権など降ろしてしまいましょう。)。
しかし、このリリックを吐き出すラッパーをよく起用したものと感心してしまう。結果が結果であったので、いわんこっちゃないと感じるが。
そして、あきらさんから教えてもらった流儀、”刺青は背中から”。シリーズではすでにお腹に閻魔大王がはいっていましたが、この頃仕上がっているのは、背中の弁天小僧。お腹は可愛いまま。
そして、収監へ そして、終焉へ
業界のリリース後、収監されていったREAL-T。時を同じくして、反社会的なラップの流行りも潮目が変わったかのように萎んでいった。コロナが終焉したように。
舐達麻は、あまりにも遅いリリースペースに、唯一の盛り上がるポイントのビーフ後タイミングも無風。メンバー内の不仲説も流れる始末。RYKEYとも反目し合う結果に。
ジャパニーズマゲニーズも、なかなか跳ねない3枚目をリリース後、孫GONGさんが良くない方向に。JAGGLAさんのソロプロジェクトが聴きたいよう。
そして、また関西のラップシーンはニッチなものになったとさ。ちゃんちゃん。
※バカは死ななきゃ治らない
それでも、バカは転んでも死にきりません。この騒動を逆手に取り、新しいアルバムをリリース。ナイス。
壁に耳あり障子に目あり
千載一遇の俺に隙あり
チャンス目の前に胸が高鳴り
絡まる足で転びそうな未来
壁に耳あり障子に目あり
どこもかしこも油断はできない
24時間見張られる世界
人間万事塞翁が馬なり
と、シリーズを見ているとクスリとするフックを吐き出す曲も。
シリーズを見た人は聴きましょう。MEGUMIも宣伝して❤。
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