Penn Law Class Review (Fall)
前回に引き続き、Penn Law Class Reviewシリーズです。今回はFall Semester(秋学期)で受講した授業について書いていきます。
Summer Schoolとは異なり、Fall Semesterからは学生が各々受講したい授業を選択し、履修を組んでいきます。自分は知的財産分野(IP)に興味があり、IP Certificateを取得するために、知財・エンタメ関連の授業を多めに受講しました。また、途中までNew York Barの受験も考えていたので、科目要件を満たすために基礎科目も受講する必要がありました。もっとも、後者はそこまで要件が厳しくなく、Pennの場合はSummer Schoolで要求科目の半分程度が満たせるということもあり、履修を組む際の自由度は比較的高かったと思います。
① Property
いわゆる財産法です。動産・不動産の権利関係を規定する法制度について学びます。他の基礎科目と同様に、ケーススタディが中心です。野球のホームランボールの所有権は誰に帰属するかとか、猟師が追い詰めた野生動物(キツネ)に別の猟師がとどめを刺した場合にどちらのものになるかとか、なかなか興味深いケースも多いです。
担当教員はGideon Parchomovsky教授。Property Law及びIntellectual Property Lawの大家です。すさまじく頭の回転が速く、それでいて気さくな教授で、彼の授業が自分がPenn Lawで受講した授業の中でベストでした。Propertyは100人以上の学生が受講していましたが、教授は発言した学生一人一人の顔と名前をきちんと覚えており、自分のことも早々に「Taka」「Taka」と呼んでくれるようになりました。大人数クラスの中で発言するのは勇気が要りますが、教授の気さくな雰囲気のおかげで、クラスディスカッションにも物怖じせずに参加することができました。最終日の授業ではクラスに向かってチョコレートの入った袋を無差別にぶん投げるなど、楽しくて飽きない方です。LL.M.生の間でも人気があり、教授とLL.M.生との間でランチ会も開催されました。
https://www.law.upenn.edu/faculty/gparchom


アメリカの財産法(特に不動産法)は日本の物件法とはかなり異なっており、Life Estateだの、Future Interestだの、日本法には存在しない概念が次々と出てきて苦戦しました。Propertyは、Bar科目の中で最も重い科目と言われていますが、その理由がよく分かりました。また、教授が指定したCase Bookもかなり分厚くて、Caseをしっかり読み込もうとするとかなり負担がかかります。最初の頃は1回分の授業の予習をするために休日を丸一日使ってしまうということもざらでした。もっとも、秋学期の段階でPropertyの全体像を一通りさらえたことは有益でしたし、後のBar対策でもかなり役に立ちました。教授のオリジナルの期末試験問題もかなりクオリティが高くて、解いていて楽しかったです。
② Copyright
いわゆる著作権法です。著作権法を含む知的財産法は、条約等を通じて世界である程度統一化しようという流れが進んでいるので、Propertyと比較するととっつきやすい感覚はありました。それでも、日本法には存在しない概念(Fair Useなど)や、アメリカならではのCaseなども多く登場し、将来的に知的財産法を専門にしたい自分にとっては、アメリカの著作権法を学ぶことは非常に有意義でした。
担当教員はこちらもGideon Parchomovsky教授。教授が同じなので、授業のスタイルも基本的にはPropertyと同じです。ただ、CopyrightはUpper Level Classという扱いなので、Propertyと比較するとJD生は少なく、既に知的財産法を専門にしているLL.M.生の数が圧倒的に多かったです。
Copyrightは最新のテクノロジーに関する議論が絡むことも多いです。今一番ホットなのはやはり生成AIですね。AIの成果物にどこまで著作権保護が及ぶのか、AIの機械学習に著作物を使用することは著作権侵害になるか等、最先端の議論が多いです。当然、多くの学生がこれらのトピックに関心を持っており、授業でこれらのテーマが取り上げられた時には、かなり白熱したディスカッションになりました。今後も重要なCaseが次々と出てくると思いますが、アメリカの著作権法を一通り学んでおくと、議論の理解に非常に役立ちます。AIと著作権の議論は、今後の実務でも必ず役に立つと思います。
③ Corporations
いわゆる会社法です。日本の会社法はアメリカの議論を取り入れている部分も多いですし、会社法は通常業務でも使うことが多いので、こちらも比較的とっつきやすかったです。会社法は州法なので、州ごとに法令が異なるのですが、最も参照されるのはデラウェア州の会社法です。デラウェア州は最も会社法が発達しており、裁判所の専門性や手続の柔軟性も高いので、実際に多くのアメリカ企業がデラウェア州の会社法を設立準拠法に選択しています。
担当教員はDavid Skeel教授。Bankruptcy(倒産法)の分野で非常に著名な教授ですが、会社法も担当しています。とてもダンディな方で、英語も非常にゆっくり話してくれるので聞き取りやすい。会社法は人気科目なので、学生からの質問も頻繁に飛び交うのですが、一つ一つの質問に丁寧に答えていて、人柄の良さを感じました。難点としては、授業の時間が15時~17時という最も疲れが出る時間だったので、教授のゆっくりボイスを聞いていると、たまに夢の中に引きずり込まれそうになることです。
https://www.law.upenn.edu/faculty/dskeel

デラウェア州会社法では、近年、利益相反取引の制度に大きな改正があったので、教授もその点にはかなり力を入れて説明されていました。また、日本製鉄によるUS Steel買収等、最新のトピックも授業にふんだんに盛り込まれていて、面白かったです。期末試験はMCQ(択一問題)が60問、試験時間5時間という長丁場であり、一種の精神修行みたいでした。
④ Professional Responsibility
いわゆる法曹倫理です。法曹三者(弁護士・裁判官・検察官)には独自の職務規程が存在しており、重大な違反をすると懲戒(戒告、業務停止、資格剥奪等)の対象になります。日本にも「弁護士職務基本規程」という倫理規程はありますが、アメリカのものは、よりルールが複雑です。偽証や証拠隠滅をしてはならないといった一般的な感覚でも理解できるものもありますが、利益相反のルールだったり、依頼者と接触する際のルールだったり、企業内弁護士特有のルールだったりと、覚えなければならないことは多いです。
担当教員はShaun Ossei-Owusu教授。専門は刑事法ですが、Civil RightsやPR等の授業も担当されています。授業はかなりディスカッションに重きを置いていて、意欲的なJD生も数多く参加するので、自分を含む英語非ネイティブの学生にとってはやや負担の大きい授業でした。また、授業中にPC等の電子機器の使用が禁止されていたり、スライドの文字が見たこともないような米粒みたいなフォントで読めなかったり(社内プレゼンでやったら絶対怒られるやつ)、他にも謎のルールがいろいろあったりと、若干クセのある教授でした。
https://www.law.upenn.edu/faculty/oss

Professional ResponsibilityはNY Bar Admission要件で指定されている必修科目の一つなので、ほとんどのLaw School生が在学中に受講します。また、多くの州では弁護士登録要件として、Barの本試験とは別に、MPRE(Multistate Professional Responsibility Examination)という職業倫理試験で一定以上のスコアを取得することも要求されています。自分は秋学期中の11月にMPREを受験しましたが、PRの授業で勉強したことが結構役に立った(あるいは、MPREの勉強がPRの授業の理解や期末試験に役に立った)ので、そういった意味では効率は良かったです。
まとめ
以上、Fall Semesterで受講した授業について書きました。受講していたのはこれらの4科目だけですが、他にもPro Bonoがあったり、MPREを受験したり、ボクシング部の練習があったり、Barの対策を早めに始めたりしていたので、秋学期は結構忙しくてあっという間でした。どの授業も簡単ではなかったですが、興味深くて、非常に知的好奇心をくすぐられるものでした。
次回はSpring Semester(春学期)で受講した授業について書きます。
