天の道~真実の行方 2話
深夜の訪問者②
注射を打ちに行った後、そのまま順子は小早川に捕まり戻って来ない。
暫く様子を見て効力が無い場合、又、追加で打ってもらうという
いつものパターンでその間、話の相手までさせられるという始末。
瞳は残ったベビーの授乳を一人でやる羽目になった。
でも……小早川の傍にいるよりはまし……
さっきから
「お~い!一段落したら瞳も来いや~」と
ガラス越しに見たくもない顔を何度も覗かせる。
「は~い!これ終わったらすぐ行きま~す」
腹の中で全く別の事を考えながら、とびっきりの作り笑顔を見せ
上手に対応する瞳。
そのくせ、仕事をわざとゆっくり引っ張っていた。
一人でも泣いてくれたら断る理由が付くのに、と願っても
こんな日に限ってと言いたくなる程、授乳を終えたばかりの
赤ちゃん達は全員満足げにスヤスヤと眠りについている。
「今日はいつまでも帰ろうとしないなぁ……長く此処に居ると
バレバレかしらン?」
と、仕方なく観念し瞳も新生児室を出た。
嫌な顔ひとつ見せないで根気強く小早川の自慢話に付き合っている順子を
いつもながらに偉いなぁと感心する。
口と心が裏腹な自分には到底、真似出来ない事だと改めて思う。
途中から加わっても、ものの数分で飽きてしまうのは案の定
以前、何度か聞いた事のある内容を、又、繰り返している小早川のせい……
こんな時間にそんな話……眠くなる……眠いよ~
目を開けたまま眠れる特技があったらいいのに、と考えてしまう瞳だった。
二人の涙ぐましい努力の甲斐あり
「今夜は眠れそうだ」
のセリフと共に小早川からようやく解放された時は
幻と化した休憩時間など遥かに過ぎ、大急ぎで片付けなければならない程
仕事が残った状態となっていた。
「もう~!あのジジィ、、結局、自分の不眠に私達を巻き込みやがって~
余計に(仕事)忙しくなったじゃんかよ~」
驚いた事に順子の口から、こんな言葉が飛び出した。
「へっ?貴方、まさか無理して付き合ってた?へぇ~そうは見えなかったよ
貴方の笑顔は嘘、偽りのない正真正銘のものだと、そう思ってたよ
へぇ~立派!」
しきりと関心する瞳に
「何言ってんのよ!あんなの誰も本気で相手にする人なんかいないの
知ってるくせに!適当にしてればいいのよ。瞳は下手なのよ!」
「さぁ!仕事仕事!」
包交車を押しながら走り出す順子の姿に
「さすが!この病棟、だてに長くやってる訳じゃないって事か、、」
と、頼もしさを感じる瞳だった。
