📣 文徳高校文芸部大喜利研究会、始動!
皆さん、こんにちは。
そして、お久しぶりです。
桐野心春です。
あれから二ヶ月。
私たちは「相方」になりました。
……と言っても、
昼休みに同じ机を囲んでいるだけです。
場所は、文徳高校の文芸部部室。
昼休みなのに、相変わらず静かで、
埃っぽくて、
世界から少しだけ切り離された場所。
つむちゃん、白井つむぎは
古い机に突っ伏したままです。

つむぎ
「……暇やなあ……」
心春
「……さっきから、それ三回目です」
つむぎ
「相方なって二ヶ月やで?
もっとこう、
漫才! 舞台! スポットライト!
みたいなん想像しててんけど」
心春
「想像は、自由ですから」
つむぎ
「現実が地味すぎるんよ。
文芸部やし。
昼休みやし。
誰も見てへんし」
少し間。
つむぎ
「今、世界で一番静かなコンビちゃう?」
私は机の上のノートに目を落としました。
あの日、二人で名前を書いたノート。

『文字と笑いの地平線』
中身は、まだほとんど白い。

心春
「……大喜利、しませんか?」
つむぎ
「は?」
心春
「私も、お笑いを勉強したいので……」
(間)
つむぎは一瞬黙ってから、
にやっと笑いました。
つむぎ
「ええやん。
どうせ暇やし」
⸻
最初のお題
心春
「――浦島太郎です」
つむぎ
「王道きたな」
心春
「なぜ、亀はいじめられていたと思いますか?」
(間)
⸻
🐢 大喜利①(心春)
心春
「……ことあるごとに、
玉手箱を開けるからです」

亀が玉手箱を開ける。
もわーん。
もわーん。
また開ける。
もわーん。
もわーん。
村中が、白い煙に包まれていく。
つむぎ
「もう
超高齢化社会やないか!
現代ニッポンか!!」
心春
「……亀をいじめる手も、
自然と緩みます」
⸻
🐢 大喜利②(つむぎ)
つむぎ
「村人がこぞって、
うさぎに全BETしてたから」

浜辺。
ゴール直前で立ち止まる亀。
一方、
対岸の木陰で爆睡するうさぎ。
村人たちは、
握りしめた紙切れを見つめたまま、
誰も声を出さない。
つむぎ
「……もう、
みんな八つ当たり」
心春
「……悪いのは、
うさぎなのに」
(間)
つむぎ
「ちゃうで。
悪いのは、賭け事や」
⸻
🐢 大喜利③(心春)
心春
「亀が
『……ゆったりモードでぇ』」
(間)
心春
「『はい、深呼吸。
腕を伸ばしてぇ。
ただいま、
僕の甲羅を眺める時間です』
って言ってきた」

砂浜。
ヨガマットの上に座る亀。
村人たちは円になって、
無言で亀のポーズ。
つむぎ
「深呼吸で
亀の匂いにむせてまうわ!!」
⸻
🐢 大喜利④(つむぎ)
つむぎ
「お父さんと同じ匂いがして、
なんだか切なくなってもうた」

亀の背中から、
もわっと湿った匂い。
なぜか村人の一人が、
目頭を押さえる。
つむぎ
「ノスタルジーやな」
心春(鼻をつまみながら)
「……さっき、
むせてましたよね?」

文芸部部室。
昼休みの終わりが、少しずつ近づいてくる。
窓から差し込む光が、机の端をゆっくりと移動する。
埃が舞い、古い本棚の影が長く伸びた。
少しの沈黙。
つむぎ
「なんかさ、
亀のイメージ……
真珠の高梁さんに
似てへん?」

心春
「……ぷっ」
(間)
心春
「……やめてください。
怒られますよ?」
つむぎ
「そやな。
部室、壊される」

心春
「ふふ。
……そんな人じゃありません」
チャイムが鳴った。
二人は、
言葉を足さないまま、
ノートを閉じた。
文徳高校文芸部大喜利研究会は、
その日も特に何も始まらないまま、
昼休みを終えた。
心春
「……また明日ですね」
つむぎは返事をせず、
ドアに手をかける。
心春は、
閉じたノートを一度だけ見下ろしてから、
小さくつぶやいた。

「……また、明日」
おわり
👇
高梁、
急に——

「……へっくしょん!!」
(間)
高梁
「……誰か、
僕のウワサしてる?」
三谷
「それは、
断じてない」
(即答)
(0.5秒)
高梁
「……え? 強否定!?」
(暗転)
