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真の公平性とは?〜生活保護費減額は「違法」:最高裁判決と社会のひずみ

本日、最高裁が生活保護費の当時の調整方法を違法と統一判断する速報が入ってきました。この判決を受け、私はある疑問を抱きました。それは、生活保護費の見直しに関する「物価や給与が変動する中で生活保護費を据え置くと、一般の低所得世帯と生活保護受給世帯の間に不均衡が生じる。このため、厚労省は5年に1度、生活保護費を見直している。」という厚生労働省の説明です。この一文に感じた違和感について、皆さんと考えていきたいと思います。


生活保護のイメージと実態

生活保護と聞くと、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?メディアで「不正受給」や「楽して生活している」といった負の側面が強調されがちです。そのため、「甘えだ」「自分たちは苦労しているのに、税金で働かずに暮らすなんて」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、生活保護を受給するには、いくつかの厳しい条件があります。

資産の処分

まず、手持ちの財産(保険の解約返戻金なども含む)を処分し、生活費に充てることが前提です。交通の便が良い都心部では、車も処分を求められます。換金できるものがあれば、それを使い切ってから申請するよう求められるのです。

扶養照会

周囲に経済的援助をしてもらえる人がいないか、厳しく確認されます。もし過去に虐待を受けた親や、何らかの事情で頼みたくない親族にまで援助を求めるよう言われたら、その精神的負担は計り知れません。

【参考】

  • 2025(令和7)年4月1日施行生活保護実施要領等https://www.mhlw.go.jp/content/001440015.pdf

  • また各自治体の「生活保護のしおり」を参照してみてください。

そして、ようやく生活保護を受給できたとしても、その後の生活には多くの苦しい側面が伴います。

貯蓄の制限

正当な理由なく貯金することはできません。「貯蓄する余裕があるなら、その分生活保護費は必要ない」という考え方が背景にあります。

生活必需品の定義

テレビ、冷蔵庫、エアコン、電子レンジ、オーブントースターなど、私たちが考える「一般的な生活に欠かせない家電製品」の多くが、生活必需品とはみなされません。つまり、故障や買い替えがあっても、それらをカバーする支給はないため、自分で工面する必要があります。高額なこれらの製品の購入に、ローンやクレジットカードの利用を制限される場合もあります。

想像してみてください、これらの家電がない生活を。特に夏場に冷蔵庫がなければ、その日のうちに食べきれる量しか買えず、特売品を買い貯めすることもできません。保存の効くものばかりでは、健康的な食事も難しいでしょう。体調を崩せば社会復帰が遠のき、政府が目指す社会保障費の削減とは逆の結果にも繋がりかねません。

情報アクセスの困難さ

生活保護受給者にも選挙権はありますが、被選挙者の判断材料をどうやって手に入れるのか、という問題があります。障害や持病で行動範囲が狭い人にとっては、情報収集はさらに困難です。

医療扶助の制約

医療扶助では、病気になって症状が現れて初めて通院が可能になります。一見当たり前のように聞こえますが、これは予防的な通院ができないことを意味します。歯の歯石除去や病気の早期発見を目的とした検査ができない場合もあります。結果として症状が進行してから受診することになり、医療費が膨らむ可能性も考えられます。健康を維持し、働くためにも、どこまで予防医療を受けられるかというバランスは、社会保障費の削減を目指す上で常にアップデートしていくべき課題です。

※興味ある方は、厚生労働省社会・援護局保護課による「生活保護問答集」をご覧になってみてください。

感じた違和感とは?

ここまで生活保護の実態について説明してきましたが、冒頭で述べた「一般の低所得世帯と生活保護受給世帯の間に不均衡が生じる」という点に戻りましょう。これは「低所得者層が割を食うから、生活保護費を下げます」という趣旨だと解釈できます。一見すると当たり前のように感じるかもしれませんが、本来、政府・政治が目指すべき方向は「賃金の上昇」ではないでしょうか。
不均衡だからと、下へ下へとしわ寄せがいくこの社会構造は、やはりおかしいと感じざるを得ません。

働いている皆さんの給与明細を見ると、所得税をはじめ、さまざまな項目で天引きされていますよね。所得税は、ざっくり言えば、給与から生活に必要な額を控除し、そこに税率をかけて計算されます。医療費がかかりすぎた場合は医療費控除、扶養家族がいれば扶養控除が適用され、税金が低くなる仕組みです。これは「生活に必要だろうと思われる金額には税金をかけませんよ」というスタンスです。

その中で、誰でも無条件で受けられるのが「基礎控除」で、年収から最大48万円が控除されます。極端に言えば、扶養家族がなく、医療費もかからない健康な一人暮らしの社会人の場合、基礎控除と社会保険料控除が主な控除項目となります。つまり、その控除される金額分しか「生活上必要な費用」とみなされていないと考えることもできます。

※国税庁「No.1199 基礎控除」(最新情報をご確認ください)

基礎控除が最大48万円ということは、それが主な生活費として考えられているわけですが、これは月額ではなく年間の額です。これは特に、若い一人暮らし、非正規雇用、単身フリーランス、派遣、そして体調の波はあるものの「健常者とみなされる」グレーゾーンの人々の家計に大きく影響します。言い換えれば、その人達は「制度上、救われにくい孤独層」であり、社会保障の狭間に落ち込みやすく、生活保護にも行けない、あるいは申請しづらい人々の温床になっているとも考えられます。

制度としては「公平に見える」構造でも、実際には控除の少ない層にとっては地獄のような平等になっていることがあるのです。所得税は少額かもしれませんが、そこからさらに収入を元に計算される住民税、国民健康保険料、年金、消費税などが一気にのしかかります。下手をすれば「稼げば稼ぐほど貧しくなる」人もいるかもしれません。

他にも様々な控除項目がありますが、制度が複雑であったり、申請しないと適用できなかったりと、利便性は高いとは言えません。こうして考えると、今どき年額48万円(月額にして4万円)でやり繰りできる人が本当にいるのかと疑問に感じてしまいます。

各国の「基礎控除に相当する制度」ざっくり比較

そこで、OECD加盟国など諸外国では、基礎控除にあたる部分(つまり税金がかからずそのままもらえる額)がどうなっているのか調べてみました。主要国における日本の基礎控除に近い制度の名称と特徴は以下のとおりです。

  • 🇺🇸 アメリカ Standard Deduction(標準控除)

    • 日本より圧倒的に高額。2024年基準で、独身者は$14,600(約230万円)。

    •  米国内国歳入庁(IRS)公式ウェブサイト「Tax Brackets」など(最新のStandard Deduction額をご確認ください)

  • 🇬🇧 イギリス Personal Allowance

    • 年間£12,570(約240万円)までは非課税。段階的に減るが高額所得者でなければ満額適用。

    • 英国歳入関税庁(HMRC)公式ウェブサイト「Income Tax rates and Personal Allowances」など(最新のPersonal Allowance額をご確認ください)

  • 🇫🇷 フランス 家族単位課税(Quotient familial)

    • 金額での基礎控除というより「世帯の人数」で税額が決まる仕組み。控除というより税率そのものを変える方式。

    • フランス経済・財政・産業・デジタル主権省(Ministère de l'Économie, des Finances et de la Souveraineté industrielle et numérique)ウェブサイトなど

  • 🇩🇪 ドイツ Grundfreibetrag(基本免税額)

    • 2024年は€11,604(約200万円)。誰でも使える非課税枠。

    • ドイツ連邦財務省(Bundesministerium der Finanzen)ウェブサイトなど(最新のGrundfreibetrag額をご確認ください)

  • 🇨🇦 カナダ Basic Personal Amount

    • 2024年で$15,705カナダドル(約180万円)程度。年々増額している。

    • カナダ歳入庁(CRA)公式ウェブサイト「Federal tax amounts」など(最新のBasic Personal Amount額をご確認ください)

  • 🇰🇷 韓国 基礎控除(기본공제)

    • 年間150万ウォン(約17万円)と日本よりかなり低いが、扶養控除や配偶者控除が手厚い。

    • 韓国国税庁(NTS)公式ウェブサイトなど

  • 🇸🇪 スウェーデン 基礎控除制度あり(所得控除・税率逓減)

    • 個人の年齢や年金受給の有無により変動。控除額というより税率の構造で対応している。

    • スウェーデン税務庁(Skatteverket)公式ウェブサイトなど

ここから読み取れること

  • アメリカ・イギリス・ドイツ:非課税枠が大きい
    独身者であっても200万円前後の所得までは完全に非課税です。これは「低所得者を税で締め上げない」という前提が制度に組み込まれていると考えられます。年で200万円ということは、月額平均で約16万円で暮らしていけるということです。

  • フランス・スウェーデン:控除よりも税率や世帯単位での公平性重視
    子どもがいれば税率が大幅に下がるなど、個人ベースより「世帯ベースの公平」を大事にする文化があります。

  • 韓国・日本:控除額は比較的小さく、個人単位での課税が基本
    控除額が小さいにもかかわらず、年金や健康保険は「一人前」として課されます。単身低所得者にとっては、まさに「逃げ場がない」制度と言えるでしょう。

  • 結論:日本の基礎控除は、世界的に見て「かなり小さい」部類

日本の基礎控除48万円は、OECD先進国の中では最低クラスです。物価、各国の税制、控除の考え方など、さまざまな条件が異なるため一概に比較はできませんが、単身者の生存ラインに対する配慮が乏しいのは事実と捉えられます。

※OECD(経済協力開発機構)が発表する「Taxing Wages」や「Revenue Statistics」といった報告書等をご確認ください(最新版をご確認ください)

では、なぜ外国は高い控除を用意できるのでしょうか?

  • 所得再分配の思想が強い: 高所得者からより多く税を徴収し、低所得者を支えるという考え方が根付いています。

  • 税の捉え方: 「税は苦しめるもの」ではなく「社会を維持するための仕組み」として位置づけられています。

  • 政治的優先順位: 「貧困層をいかに守るか」が、政治的な議論の重要な議題となっています。

所得再分配については、高所得者がそのスキルや職能に見合った年収を得るのは当然という考え方もありますが、低所得者層という労働者の存在があってこそ、高所得者という存在が成立する側面も忘れてはなりません。高所得者だけで世界が回っているわけではないため、相応の負担をすることも必要だという考え方もできます。(会社も労働者がいなければ、社長や役員の報酬を確保することはできませんよね?)

ちなみに所得税の計算区分は以下の通りです。

所得税の速算表(課税所得ごとの税率)

所得税速算表: 国税庁のウェブサイト「No.2260 所得税の税率」

税率は「課税される所得金額」(ざっくり言えば年収から控除項目を差し引いた金額)に対して段階的に適用されます。例えば、課税所得が6,000,000円の場合、全体に20%がかかるわけではありません。少し複雑な計算をするためこの速算表が作られています。

🔍 計算例
課税所得:6,000,000円 の場合
6,000,000 × 20% - 427,500 = 772,500円

これが概算の所得税額になります(復興特別所得税を除く)。
こうして見ると、課税所得が4千万円以上の高所得者では、所得税は1300万円ほどになり、その他税も含めると欧米と比べても遜色ない水準と言えそうですが、1億稼いでも10億稼いでも支払う所得税は変わらないのです。個人的にはもう少し高い区分を細分化してもアリなのかなと思ってしまいます。みなさんはどう思われますか?

気になるもう一つの指標:議員報酬

さて、所得の向上や社会保障制度の設計に取り組まれているのが政治家の皆さんですが、日本の国会議員の報酬はいくらかご存じでしょうか?

🇯🇵 日本:現状と推移

  • 基本報酬に手当込みで年収約2,500万円前後です。

  • 2023年には平均で約2,530万円に到達し、前年(約2,156万円)より約374万円増加しました。

  • 月額約104万円(定額給付を含まず)に加え、「調査研究広報滞在費」という月100万円超の支給もあります。

  • この額は、一般職員の平均年収(約500万円)を大きく上回っており、おおむね5倍前後の水準です。

【参考】

  • 衆議院・参議院の公式ウェブサイトより、衆議院「国会議員の歳費、旅費及び手当等」、参議院「参議院議員の歳費、旅費及び手当等に関する情報」

  • 一般職員の平均年収:国税庁「民間給与実態統計調査」や人事院「国家公務員給与等実態調査」

さらに、政党に支給される政党交付金という制度もあります。これは政党を通じて所属議員にお金が流れ、しかも使途自由で返還不要なため、実質的にさらなる報酬を得ていると捉えることもできます。政治活動にそこまでお金が必要なのかという判断がしにくく、原資が税金なのに自分が支持していない政党にまで支給されることに疑問を感じる方も少なくないでしょう。

※政党交付金については、総務省のウェブサイト「政党交付金の概要」に詳細が掲載されています。

🌍 OECD諸国との比較

OECD加盟国では、国会議員の報酬は「自国平均年収の2~3倍」が一般的とされます。

  • アメリカ: 約17.4万ドル(約1,914万円)=平均賃金の約2.2倍

  • イギリス: 約12.7万ドル(約1,400万円相当)=約2.2倍

  • ドイツ: 約13万ドル(約1,500万円相当)=約2.0倍

  • フランス: 約9.5万ドル(約1,100万円相当)=約1.6倍

  • 日本: 約15.9万ドル(約1,800万円相当)=約3.4倍

【参考】

  • OECDのParliamentarian Remuneration Reportなどから

こうして見ると、日本は国会議員の収入自体も高く、自国平均比でも高水準の「約3.4倍」というモデルです。

要するに…
日本の国会議員の報酬は2500万円台に上昇中で、さらに特権的な手当も多数あります(その手当の必要性を検証する方法も乏しいのが現状です)。OECDでは平均の2〜3倍が一般的ですが、日本は自国平均の約3.4倍と、かなり突出しています。

議員報酬の問題点

  • 国民平均との乖離: 国民が満足な暮らしができるかどうかという“感覚格差”が大きくなります。

  • 手当の透明性不足: 一部が高額で“ブラックボックス化”しやすい状況です。

  • 賃金停滞との乖離: 日本の一般所得はOECD比で低迷しており、議員報酬との乖離は貧富の差を象徴しているとも受け取られます。

まとめ

参議院選挙も近づく中、消費税の減税などを公約する政党もいますが、減税した分をどの財源で埋めるのかなど、活発な議論が求められています。これからは、歳出の中から無駄を徹底的に洗い出し、「本当に必要な費用なのか?」と問い直す必要があると思います。
しかし、その無駄を省く矛先が真っ先に生活保護や、低所得者層など暮らしが厳しい人々に向かうべきではないはずです。
収入は正当な労働の対価として支払われるべきものです。果たして今の政治家は、その対価に相応しい仕事をしているのでしょうか?国会中継中に目を閉じて俯いている人々の姿を見ると、どうしてもそう思えません。
それならばいっそのこと、国会議員の報酬に評価制度などを導入するという新たな手法を検討してみてはいかがでしょうか。(例えば、景気や賃金などの国民生活に直結する指標が改善した分に応じた報酬にするなど。)あるいは、国民の平均年収の○倍以内とするなど、国民生活の実態と連動した制度にしてみることも、国会議員の報酬をいかに妥当な額にしていくかを考える上で、持続可能な社会保障制度を考える上で必要なことかもしれません。


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