風がふいている
風が君とぼくとを分かつとき
そこには抗うすべもなく、むべもなく
君は陽でぼくは月で
境目にはただ清楚で単純な色がある
机の上に並べられた順番通りに
ぼくたちは終わっていく
そこには美しい規則があり
感情の入り込む隙などない
目を背けない、背けたくない
思うところはそれだけで、それなのに
不可解な言葉をぼくにささやく
それもその日の気まぐれに
何番目かの月の日に彼は空を渡ってきた
ぼくに耳打ちするために
君の番はもうすぐだよ
紙魚を秤に載せて計れと言う
目盛を読むことなど誰にもできはしないのに
ぼくの行き先はどこなのだろう
風の行先と同じですか?
部屋の中にいても何もわからない
外には答えがあるわけでもないけれど
風はゆっくりテーブルの表を撫でてゆく
何も知らない顔をして
命のことなど、ほっときなって
したいことをする方がいいだろ
春の日はおだやかにすぎてゆく
海は声しか発しない
いや、嘘をついたわけじゃない
匂いは間もなく感覚から外されて
何者でもなくなっている
テトラポットの下には何万というフナムシがいて
何十万という足をバタつかせ
焦って順番を取りに行く
君たちは何の列かわかっているのか
ベタついた風がベタついた肌に上塗りをする
いいんじゃないかと女教授が言う
そんな魅力的な教授があったものか
フナムシのことはフナムシに任せておこう
ビールのツマミは何がいい
そんな話をしようよ
ばくたちは思うより短いのだ
たぶん思うよりも愛おしいのだ
真っ黒な海にはすべてがあるようだ
松林を抜けて、砂浜を踏みしめて
泳いでみるのもいいんじゃないか?
夏の夜のたわむれとして
秋はあからさまに血の色をして
どうだ? 美しいだろと言ってくる
抗えないのはヒトの性
そんなので片付けてしまっていいか
踏みしめる落ち葉が死んでいるなんて
思ってもみるな
彼らは自然の意思の塊で、意識の一部だ
穏やかで激しい風が連れてきた
