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「レクリエーション恐怖症」を越えて。患者さんの「居場所」と「笑顔」をつくる、試行錯誤の記録

・わたしの体験談と個人的見解です。
・決して「こうしたらいいよ」ということを勧める話ではありません。
・患者さんによって、個別に関わった事例もありますが、今回は省きましたのでご了承ください。


介護施設などでは、利用者さんにレクリエーションを行うことがありますよね。
以前に勤めていた病院(介護療養型医療施設)でも、週に数回、レクリエーションを行なっていました。
現在の職場でも、地域包括ケア病棟に勤めていたときに、「院内デイケア」を企画して行なっていました。
今回は、そんなレクリエーションのお話です。



​1. 「居場所」というレクリエーションの意義

病院や介護施設におけるレクリエーションは、「時間つぶし」や「お楽しみ会」ではないと思っています。

​介護におけるレクリエーションは、語源である Re-creation(余暇・再創造・元気になること) の通り、心身の機能を呼び覚まし、その人らしい、生き生きとした生活を再構築することを指します。

利用者の生命力や活動性を引き出し、生活の質(QOL)を高めるための重要な「ケアの一環(生活リハビリテーション)」として定義されています。


その中で、わたしがレクリエーションに最も期待することは「孤立」を防ぐこと。

体操やゲームを通して、他の人との時間を共有すること。

「ここにいていいんだ」と安心してもらえる時間ができることを期待しています。


2.「院内デイケア」を定型化

とはいえ、人の好みは人それぞれ。

通所サービスでも、レクリエーションに参加したがらない利用者さんも多いと聞きますし、内容によってはストレスを感じる人もいます。

レクリエーションをする時の難しさでもありますよね。

私が行っていた「院内デイケア」は、時間もせいぜい1時間くらい、場所は病棟のデイルーム、人員も病棟のスタッフに手伝ってもらうため、人数も少ない状況(わたしを含めて2人)でした。

目が行き届かないため、患者さんが思い思いの活動ができる場は提供できません。
本当は、みんなで麻雀とかしたかったけど、病院という環境上、許可されませんでしたしね。(今は、そんな院内デイケアもあるんでしょうか?)

限られた環境で、それでも「楽しい」「また来たい」と思ってもらえるために、どうしようか。と考えていました。

◆あえて、大枠を設定(プログラム)する

わたしがいない時に院内デイケアを行うと

「何をしたらいいかわからない」
「どう進めたらいいかわからない」
「あなたみたいに盛り上げられない」

と、スタッフから言われてしまいました。

スタッフは、レクリエーションを経験したことも、進行したこともなかったので、レクリエーションを敬遠してしまう「レクリエーション恐怖症」になっていました。
わたしも、「しばらくやっていれば、わかってくるかな」とか短絡的に考えていました。

しかし、院内デイケアがうまく機能しないのは、患者さんの「居場所」が減ってしまうことになる。
「孤立」を近づけてしまう。

せっかく患者さんの「また来たい」を作ろうと思っても、一人ではできないし、うまくいかないと感じました。

なので、1時間の中で大枠のプログラムを話し合って作りました。
いろんなタイプの患者さんができるだけ楽しめるように、複数の内容を盛り込んで。

こんな感じです。

この通りにする必要はなく、あくまで「大枠」のプログラムです。
実際に、患者さんと制作物を作るときなどは、レクリエーションの時間をいっぱい使って、お話ししながら折り紙ちぎったりしていました。

◆レクリエーション内容のアイデアを募る

院内デイケアで何をするかがわかると、スタッフからのアイデアもゴロゴロとでてきました。

「ラジオ体操の曲を準備しておこう」
「ネットで健康体操とかの動画や音声を録ってみよう」
「昭和歌謡のCDと歌詞カードを持ってこよう」
「ゲームの内容をYOUTUBEとかで探してみよう」

などなど。
ネット社会に感謝です。
必要な材料は、なんでもすぐに拾ってこれます。

それに、スタッフが「レクリエーション恐怖症」を克服した感じがして、それが良かったと思いました。

工作大好きな介護士さんは、画用紙やビニールテープで釣りのゲームを自作してきてくれました。
「釣り大会」は人気の種目でした。

模造紙に大きな的を描いて、お手玉を放り投げる「的あて」も準備してくれました。

ペットボトルにビー玉やおはじきを入れてボウリングのピンを作り、ボウリング大会もしました。

道具が揃えば、あとは担当するスタッフが選んで実行できます。

そこに、わたしはもう一つのルールを付け加えました。

◆スタッフも参加して「楽しむ」

周りの空気が盛り上がらないと、楽しい雰囲気は感じられないと思います。
スタッフは進行役と同時にレクリエーションの参加者です。わたしは患者さんと一緒に参加して、ゲームを競って、笑って、悔しがって、喜んで。
たぶん、わたしが一番汗かいていたと思います。

スタッフが一緒になって「楽しむ」ことで、「職員」と「患者」の垣根がなくなり、「ひとつの時間の共有者」になると思います。
これが「ここにいていいんだ」と感じるきっかけになると思っています。

実際、スタッフが盛り上がると、患者さんも盛り上がります。
認知症の人は空気(周りの雰囲気)を敏感に感じますし、空気感って大事ですね。


3.私のレクリエーション「体験記」

プログラムと道具のおかげもあって、スタッフが「レクリエーション恐怖症」を克服できたので、わたしが進行するときは、道具を使わない、下準備されていない内容を企画するようにしていました。

思いつきでやっていたのもあり、いまいち盛り上がらなかったなぁと反省するものも多々ありますが、そのなかでも、良かったと思えることがあったので、体験記として。

◆「リアリティ・オリエンテーション」からの「回想法」

「リアリティ・オリエンテーション」は、時間の感覚が薄れてきている認知症の人に「今の季節や日時、時間」を伝えて、現実の感覚(見当識)を補う手法です。
院内デイケアでは、始まりのあいさつで、今日の日付や時間を伝えるようにしていました。

わたしは「この日にあった出来事」や「今日の記念日」を調べて、話題になりそうな事柄を出して

鉄道に関する日なら「汽車に乗って旅行した思い出は?」

とか

農作物に関する日なら「どんな作物作ってましたか?」

などの話題から、思い出話を広げていく「回想法」もしていました。
昔の話は覚えている人も多いですし、「自分の生活史」を話す患者さんは、表情が生き生きしていました。

◆「ことわざ穴埋めクイズ」からの「ねぎらいのことば」

頭の体操で使われる「馬の耳に〇〇」のような、ことわざの穴埋めクイズ。
比較的簡単なものから、少し聞き慣れないようなものを問題にしていましたが、そこで、わたしは最期に難解な問題をだしてみました。

みなさんわかりますか?

「禍福は糾える◯の如し」

スタッフも患者さんもみんな頭を捻ります。誰も答えないと思っていましたが、参加していた患者さん(おばあちゃん)が正解をポツリ。

「かふくはあざなえるなわのごとし」

みんなで「おー」と拍手。わたしもびっくりして拍手していたので、周りも盛り上がりました。

この言葉の意味は「良いことも悪いことも、より合わせた縄のように、代わる代わる起こる」ということです。

「病気や怪我で入院して、悪いことが起こったと思っている方もいるかもしれません。ですが、こうやって、みんなで集まって笑って過ごせるくらい元気になっています。元気になって退院して、と良いことも巡ってくるんですよ。まさに『禍福は糾える縄の如し』ですね」と締めくくりました。

今思えば、ただの自己満足だったのかもしれません。ですが

「元気が出たよ。ありがとう」
「頑張ろうって思えた」

と言ってくれた患者さん。

「素敵な言葉で、涙が出そうになりました」

と言ってくれたスタッフ。

その言葉を聞いて「やって良かったな」と私も嬉しくなりました。


「禍福は糾える縄の如し」



決して正解のないレクリエーションですが、その一つひとつから生まれる小さな喜びの連鎖が「福」に巡り合わせてくれる大きな「縄」になれば、素敵ですね。

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