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空元気のエナジードリンク

今日もまた、笑ってやりすごした。

上司の嫌味も、後輩の無神経な一言も。
顔が引きつってるのは、自分でも分かっていた。

でも、ここで泣いたら全部が崩れそうで、とにかく「大丈夫です」って言い続けるしかなかった。

帰り道。
駅ビルのエスカレーターを降りて、何も考えずに歩いていた。
ふと視界の端に、小さな看板が見えた。

『架空のドリンクバー屋さん』

私は吸い寄せられるように、静かにドアを開けた。


店内は静かで、ひんやりしていて、ほんのりグレープフルーツのような香りがした。

カウンターの向こうの店員は、私の顔を見るなり、にっこりと笑って言った。

「今日も笑ってるの、偉いですね。」

その言葉に、ちくりと胸が痛んだ。
そして店員は迷いなく、缶をひとつ取り出す。

青くメタリックに光る缶に、白い手書き文字でこう書かれていた。

空元気のエナジードリンク

私は缶を受け取ると、俯いたまま店を出た。


近くの公園のベンチに腰を下ろして、缶を開ける。
プシュッと鳴った炭酸の音に、なんだか泣きそうになる。

ひとくち飲んでみる。
炭酸が強くはじけて、少し甘くて、少し苦かった。
まるで「頑張ってるふり」をしてきた日々そのものみたいだった。

──ああ、私、もうずっと無理してたんだ。

胸の奥がぎゅっとなって、目の前が滲んだ。
缶を握りしめたまま、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
どうしようもなくて、止め方もわからなかった。

缶と一緒に渡されたカードには、こう書かれていた。

『頑張ったふりも、ちゃんと頑張り』

飲み干せなかったドリンクの甘さが、まだ口の中に残っていた。

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