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小説 アイドルタイム365日


田中は、スマートフォンの通知を見つめた。
「次回アイドルタイム:365日間。おめでとうございます」
おめでとうございます、か。田中は苦笑した。
シンギュラリティから十年。AIが最適化した生産ラインは、人間の労働をほぼ不要にした。世界中の倉庫には商品が溢れ、食料は腐るほどあった。ベーシックインカムは月50万円。誰もが豊かだった。
だから、人類には休暇が必要だった。過剰生産を調整するための、強制的な休暇。それがアイドルタイムだ。
最初は三日間だった。みんな喜んだ。次は一週間。それでも楽しかった。一ヶ月になった頃、SNSには暇を持て余す投稿が増え始めた。そして今回、一年間。
田中の妻は、もう三ヶ月も前から次のアイドルタイムの予定を立てようとしていた。旅行、趣味、自己啓発。リストは完璧だった。しかし、前回の六ヶ月間のアイドルタイムで、彼女はそのリストの10%も実行しなかった。
「ねえ、今度こそヨガを始めるわ」と妻は言った。前回も、前々回も同じことを言っていた。
田中の同僚の佐藤は、前回のアイドルタイムで小説を書こうとした。六ヶ月あれば十分だと思った。結局、タイトルすら決まらなかった。
「時間がありすぎて、逆に何もできない」佐藤は言った。「明日でいいや、が永遠に続くんだ」
会社の若手社員たちは、アイドルタイムに入ると決まって、最初の一週間は深夜まで遊び、次の一週間は疲れて寝て過ごし、残りの期間はスマホでSNSを眺め続ける。
皮肉なことに、アイドルタイムが近づくと、精神科の予約が殺到する。
「自由な時間が怖いんです」と患者たちは言う。「何をすればいいか分からない」
かつて人類が夢見た未来。労働からの解放。無限の自由時間。それは今、現実になった。
そして人々は、やっと気づいた。
人は、暇には耐えられない。特に、終わりの見えない暇には。
田中はカレンダーを見た。365日後、また二ヶ月間だけ働いて、次のアイドルタイムが始まる。
もしかしたら、次は二年間かもしれない。
彼は、ため息をついた。そして、何をするでもなく、ソファに座った。
明日から考えよう、と思った。明日は、あと364回もあるのだから。​​​​​​​​​​​​​​​​

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岩鷹サケスキーAI共作小説家 よろしければ応援お願いします!いただきましたチップは有意義に使わせていただきます。