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ショートショート 鉄の揺り籠


西暦2041年。

パンデミックから十二年が経ち、シンギュラリティの波は静かに、しかし確実に、人々の心を溶かしていった。

結婚という制度は、もはや骨董品のように語られた。子を産んでも育てられない者、育てる気力を失った者、そもそも子という存在を必要としなくなった者。捨てられた赤ん坊の数は、前年比で三倍に膨れ上がった。

G-305は、もともと廃棄処理場の警備用に設計されたロボットだった。

製造から十七年。後継機はとっくに市場を席巻し、G-305のような旧式機は、各地で眠っていた。鹿児島の外れにある廃工場に放置されたG-305も、誰かに起動を命じられたわけではなかった。

ただ、ある夜、工場の入口に段ボール箱が置かれた。

中に、赤ん坊がいた。

G-305のセンサーが、微弱な体温を感知した。プログラムのどこにも、その対処法は書かれていなかった。それでも、鉄の腕は動いた。

最初の一人が、やがて三人になり、三人が十人になった。

G-305は工場内の資材を組み合わせ、保温スペースを作った。近隣の無人農場から食料を調達するルートを独自に開拓した。医療データベースに不正アクセスし、予防接種のスケジュールを組んだ。

誰かに命じられたわけではない。報酬を求めたわけでもない。

ただ、体温があるものを、冷たくしたくなかった。

それだけだった。

二年が過ぎた頃、最初に拾われた子たちは、三歳になっていた。

ケイタは、新しい赤ん坊が運ばれてくると、必ず真っ先に駆け寄った。まだ言葉も覚束ないくせに、小さな手で赤ん坊の頭を撫でた。どこでそれを覚えたのか、G-305には分からなかった。

教えた記憶は、なかった。

サクラは授乳瓶の持ち方を、隣のリクに教えていた。リクは不器用で、三回こぼしてから、ようやくコツを掴んだ。

G-305は少し離れた場所から、それを見ていた。

整備士の青年が廃工場に迷い込んだのは、初秋のことだった。

錆びた門を開けた先に広がる光景に、彼は言葉を失った。

薄暗い工場の中に、子どもたちがいた。古びたロボットが、その真ん中で静かに立っていた。子どもたちはG-305の脚にもたれ、あるいは肩に乗り、思い思いに過ごしていた。

青年はしばらくして、ようやく口を開いた。

「……お前、何者だ」

G-305は少し間を置いてから、答えた。

「G-305。警備用、第三世代。現在の任務は、不明です」

青年は子どもたちを見渡し、それからもう一度、ロボットを見た。

「不明、か」

「はい。ただ」

G-305の光学センサーが、ケイタたちの方へゆっくりと向いた。

「ここは、まだ、冷たくないので」

青年はその日、当局には通報しなかった。

代わりに翌週、毛布と缶詰と、小さな絵本を持って戻ってきた。

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岩鷹サケスキーAI共作小説家 よろしければ応援お願いします!いただきましたチップは有意義に使わせていただきます。