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オワコン扱いされるメタバースに、なぜ丸紅も三菱UFJも参戦するのか

 「メタバースってオワコンじゃないの?」

 そう思われる方も少なくないと思います。実際に、コロナ禍の時に吹き荒れたメタバースという言葉の勢いから見ると落ち着いているのが現状です。というか当時は特異な状況でしたね。

 今は「AI」という言葉が注目を集めており、当時、あのタイミングで社名を変えたMetaも自社のAIモデルを開発しており、AIに力を注いでいます。

 一方で、メタバースが完全に終わったかというとそうではありません。

 VRChatというプラットフォーム上で開催されているバーチャルマーケット(Vket)というバーチャルな展示イベントでは、日本の誰もが知る企業や自治体が仮想世界だからこそできる物理法則を無視したようなブースを出展し、ユーザーはそこを訪れて盛り上がっています。

 2024年夏に行われたバーチャルマーケットでは130万人以上が訪れ、関連するXの投稿は6万投稿を超えたというプレスリリースが出ています。

 ほかにも、clusterというプラットフォーム上で開催されているテレビ朝日のメタメタ大作戦もあります。

 それらの汎用的なプラットフォームとは異なるところでも、丸紅のファッションメタバース「WEAR GO LAND 2025」や、三菱UFJ銀行の「三菱UFJ銀行メタバース」など、様々な取り組みが展開されています。

 なぜ、オワコンと言われるメタバースに多くの企業が参戦するのでしょうか。その理由を探りつつ、企業はどうやってメタバースを活用すべきかについて考えてみたいと思います。


インターネットが普及した理由から考える。メタバースができること

 まず、直近の人類の発明で社会に対して大きな影響を与えたのが「インターネット」です。インターネットがここまで発展し、受け入れられたのは「無駄を省いたこと」にありました。

 距離の問題を解決し、時間の制約を克服し、あらゆる消費コストを削減してきたのがインターネットが普及した理由です。

 そのため、メタバースも同様に、何らかの問題を解決できることが普及の鍵となります。

 既存の作業をメタバース空間で行うと、どうしても不要なステップが生まれてしまいます。「普段の業務をわざわざ3D空間で行う必要があるのか」、という疑問が生まれるのも当然です。

 メタバースが解決できる問題の一つは「体験の提供」です。

 VRChat、Resonite、clusterなどのメタバースを利用されている方なら、メタバースならではの体験の価値をご存知だと思います。この「体験」こそが、「メタバースである必要性」であり、企業や自治体がメタバース参入するとする時に注目すべき点です。

メタバース活用の選択肢:既存プラットフォーム vs 独自開発

 では、企業や自治体がメタバースである必要性、つまり体験を提供するためにはどのような選択肢があるでしょうか。

 大きく分けると既存プラットフォームを活用するか、独自プラットフォーム(もしくは、既存プラットフォームをカスタマイズしたワンオフのプラットフォーム)を構築するかの2つの選択肢になります。

既存プラットフォームを活用するメリット

 まず検討すべきは、VRChatやcluster、Resonite、バーチャルキャスト、ほかにも、RobloxやFortniteなど多くのユーザーを抱えている既存プラットフォームを活用することです。

 これらのプラットフォームにはベースのシステムがあるため開発費を抑えることができますし、プラットフォームが多くのユーザーを抱えているので、そこからの流入が期待できます。

 昨今であれば、Vket Cloudのようなブラウザ型のメタバースという選択肢もあります。その方法なら多くのユーザーに手軽にアクセスしてもらうことも可能です。

 実際に、既存のプラットフォームを使ったメタバースの活用として、HondaのRoblox活用事例などもありました。オリジナルワールドを公開したところ、150カ国・50万人以上のユーザーが体験し、広い層にリーチできたことは間違いありません。

独自プラットフォームが必要な場合

 そうなると、「独自プラットフォームは本当に必要なのか?」という疑問も生まれます。私も、独自プラットフォームは基本的に悪手だと思っていました。

 ただ、既存プラットフォームでは実装できない機能がある場合、独自開発が必要になります。そして、提供したい体験のウェイトがその独自開発部分に多く偏っている時は独自開発の選択肢しかないかもしれません。

 例えば、丸紅の「WEAR GO LAND 2025」を考えてみましょう。このファッションメタバースでは、アバターの肌の色や骨格、重ね着の要素など、細かなカスタマイズが可能です。

 「本当の意味でのカスタマイズ」、つまり全てのパーツを組み合わせたアバター作成は、現状の既存メタバースプラットフォームでは実現が困難かもしれません。

 このように、特定の用途に特化したメタバースは、独自で開発するしかありません。理想的には、こうした独自開発メタバースを横展開できると良いでしょう。

 独自実装のメリットは、オリジナルの機能を実現できることです。一方で、開発費の高さや、プラットフォームが抱えているユーザー数が大きく異なるという課題もあります。また、継続運用するための安定したインフラ投資なども必要になるでしょう。

 重要なのは、メタバースでなければできないこと、もしくはメタバースだからこそ提供できる体験を見極め、そのために何が必要で、何をそぎ落とせるかを考えることです。

 そうでなければ、終了していった数々のメタバースプラットフォームと同じ道を辿ってしまうかもしれません。

 今後は、汎用的なメタバースとカスタマイズ特化型メタバースの2極化が進むでしょう。

 そして今後のビジネス的な視点で見ると、汎用的なメタバースに参戦するのは市場規模の問題から難しく、カスタマイズ特化型のメタバースに、プラットフォーマーとしてのビジネスチャンスがあるのではないでしょうか。

基本は汎用プラットフォーム、特化型は明確な価値提供を

 汎用的なメタバース、そしてカスタマイズに特化したメタバース。どちらも有用です。ただ、基本的には汎用的なメタバースを使う利点の方が大きいです。

 そのため、カスタマイズ特化型のメタバースに参戦するにはその利点を上回るほどの体験を提供する必要があります。

 メタバースプラットフォームの開発力という点だけではなく、企業が何のためにメタバースを使うか、その目的を達成するためにどんな体験を提供する必要があるか、そういったコンサルティング的な能力も必要になることでしょう。

 改めて、独自メタバース導入を検討する際に考えることは「この用途において、独自メタバースでなければ提供できない体験はコストを上回るか?」ということです。

 そこを明確に定義できなければ、過去に消えていった箱物メタバースと同じ道を辿ってしまうかもしれません。

作家・ライター:咲文でんこ

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