宇宙から来たアンガー星人一家 #アンガー祭り
アンガーママの第一印象は悪くなかった。背を高くしてショートカットにした天童よしみさんみたいで、にこにこ優しい笑顔。登校班の顔合わせでお会いした奥さまは小学一年生の男の子Yくんのお母さまだった。春から数名の登校班が新たにできることになり、うちの長男が班長、隣家のお姉ちゃんが副班長、妹は同じ一年生。他に数名。「よろしくお願いします。」みんなで声を合わせた。ちなみにYくんはひとりっ子。
山を切り崩し造成した新興団地にはまだポツポツとしか家が立っておらず、10個ほど住宅メーカーがそれぞれに建てたまとまった区画にその一家はお住まいだった。我が家と隣家は少し離れた区画にあり、普段はアンガーママと顔を合わすことはなかった。
隣家の奥さまは姉妹のお母さまということもあり、ロングヘアのスレンダーな優しそうな方。ある日立ち話の中で不思議なことを話し始めた。
「Yくんママから電子オルガンの修理代を請求されたんですよ。何でも半年前にうちの子が遊びに行った時に弾いて壊れたらしくて。」
「今頃?」
「証拠もないし、そもそも時間も経っているし、驚いて。もう1人遊びに来ていた子と2人で弁償して欲しいと言われてます。」
「いや時間経ちすぎているし、そんなの払わなくていいと思うよ。」
「そうですよね…」
同じ1年生に上がる同士、きっと仲良く遊んだのだろうな。その場で壊れたのなら分かるけど、半年も経ってなんてね。ふーん、Yくんママ不思議な人。要注意。
それから1週間ほどした夜のこと。隣家の玄関先で大きな声がしている。怖くてそうッと覗いてみると、
「うちの子に確認したらおたくの子が壊したと言うてる。Mちゃん(隣家の妹)が乱暴に弾いてたと。」(はっきりとは聞こえないけどそんな感じ。)
Yくんママやん。声大きいし、メチャ怒ってるし。
「そんな前のこと今頃言われましても困ります。」
隣の奥さん応戦。
「新品にしてくれたらいいんや。お金あるやろ。」
えっ?何これ??ゆすりたかり???
「ちょっと主人と相談してお返事しますが、子供同士の言うことはあまり信用ももできませんし、することも大目に見た方がいいこともありますし。」(そんなニュアンス。)
隣の奥さんきっぱり返答、よく聞こえないけど多分。
「○▼※△☆▲※◎★●! ○×※□◇#△!」
何言ってるか分かんないけど、アンガーママ怒鳴っている。
「・・・」
隣の奥さん無言(多分半泣き)。
「あんたのとこ〇〇会社やろ。仕事できんようにしてやろかー!」(これははっきり聞こえた。)
アンガーママ暴れると言うか、こんなセリフ言えるの普通じゃない!そちら勢の人??
ふと見ると少し離れた我が家の玄関に近いところにご主人らしき人と手を繋いだ男の子がくるくる回っている。
私は勇気を出してご主人らしき人に近づいてみた。ラーメン小池さんみたいな人。真面目そうな感じ。
「あのー、どうしたら納得されるのでしょうか?」
「・・・」
えっ?無視?あなたは何のためにここに???奥さまの暴走は止めないの????
黙って立ち尽くしている父とくるくる回る子。
「○▼※△☆▲※◎★●! ○×※□◇#△!」
アンガーママはお怒り爆発モード💢
「とにかくお返事はまたいたしますので。」
隣の奥さん玄関ドア閉める。私もそっと家に入る。
今見たものは何だったんだろう。怒り狂うアンガーママと死んだ魚ような目で立ち尽くすパパとくるくる回る子供。宇宙から来たアンガー一家に違いない。未知との遭遇。
帰宅した夫に話そうとするが私も動揺のあまり、
「○▼※△☆▲※◎★●! ○×※□◇#△!」
隣の奥さん寝込んでないだろうか?心配。
数日後、夫が宅地造成と販売をする会社の知り合いに色々聞いてきたみたいで、
「あの人トラブルメーカーで要注意人物。事務所や同じ区画の人にも怒鳴り込んだりするらしくてみんな困っているらしい。」
「ご近所も大変だ。だけど手に入れたマイホーム。みんなうまくやる方法を探しているんだろうね。ああいう人困るね。」
ところがある日我が家のピンポンが鳴り、玄関先にアンガーママが仁王立ちで立っている。いやーん。
「何でしょうか?」(恐る恐る。)
「おたくの〇〇くんが班長としては失格。うちの子が優しくないと言っています。班長下りてもらいます。」
「(下ります、喜んで。)」
なんかA4の訴状みたいなの置いて帰った。息子に聞いてみると「Yくんがくるくるしたりチョロチョロするから注意したよ!」
そんなところでしょ。この件は校長先生が一喝してくださり、私たちは無事。
アンガー一家(主にママ)はそれからも小さな火種をあちこちに撒き散らしているとの噂。隣近所、区画の人の困惑に心が痛む。学校も大変な様子。
3年生になる頃、ご主人の赴任先の隣県へ一家で行ったのに、4年生になる頃帰ってきて、元いた小学校が気に入らないのでYくんを隣学区へ転入させたらしい。
当時すごく気掛かりだったのはアンガーママと日々過ごし暮らすYくんがどんな大人になるのか、日常が怒りに溢れている生活が通常モードの子供ってどんなふうに育っていくのか…
Yくんは26、7歳になっているはず。どんな大人になったのだろう。
私の住んでいた戸建ては借上社宅だったので、数年後引っ越しました。
あの当時は不思議で珍しいアンガー一家との出会いでした。今では時々ニュースやネットで見かけるようになりましたけどね。
ソラさんのこちらの企画に参加しました。
本編の #アンガー マガジンは素晴らしい執筆メンバーが深く静かに怒りを燃やしています。ぜひご購読を。
