徳島で見たVOGUE FEMMEの入口 ― はなはるフェスタ2026 ・ studio NEEDOのショーケース
1. はじめに
2026年4月18日、徳島県徳島市で開催された「はなはるフェスタ2026」。
県内の多くのダンススタジオが日頃の練習成果をショーケースとして披露してくれたが、その中でも鳴門市のstudio NEEDOによるVOGUE FEMMEのショーケースは、とても印象に残った。
私自身、VOGUEについてレポートを書くのは2年半ぶりになる。そのため、この間の知識のアップデートが十分にできていない部分もあるが、今回はなるべく最近のVOGUEのシーンにも触れながら書いてみたい。
2. 最近のVOGUEと、徳島のstudio NEEDO
2020年以降、DリーグでのBenefit one Monolizの活躍や、Beyoncéのアルバム『Renaissance』のヒットなどの影響もあり、VOGUEは以前よりずっと見えやすい場所に出てきた。
VOGUEは、もともとはニューヨークのBallroom文化の中で育ってきたカテゴリーの一つだが、最近ではダンスシーンに限らず、テレビ、ファッション、音楽の中でもその影響を感じることが増えている。
例えば映像作品では、1980年代後半から1990年代前半のBallroomカルチャーを描いたドラマ『POSE』や、House単位で競うBallroomバトル番組『Legendary』が挙げられる。
前者は歴史や背景を知る入口として、後者は近年のトレンドを知る入口として、とても分かりやすい。
さらに音楽面でも、2020年以降はBeyoncéやTodrick Hallのように、ballroomやhouseの影響を感じさせる楽曲がメインストリームでも大きな存在感を持つようになった。
そうした流れの中で、今回見た徳島のダンススタジオ「studio NEEDO」のVOGUE FEMMEのショーケースは、非常に印象に残った。
studio NEEDOには、HIP HOP、Girl’s hip hop、free style、VOGUE/HEELSのクラスがあり、インストラクターはICCHINさんとRINAさんの2人。
VOGUE/HEELSはICCHINさんが担当している。
日本ではVOGUEのクラスそのものがまだ多くないことを考えると、徳島でこうしたジャンルを日常的に学べる場があること自体に、大きな意味があると思う。
3. studio NEEDOのショーケースを分解してみる
今回のショーケースでまず良かったのは、VOGUE FEMMEを3人の群舞として無理なく作品にしていたことだ。
VOGUEというと、日本ではAyaBambiや東京ゲゲゲイのインパクトが強かったこともあり、HandsやArmsの印象が強いかもしれない。
実際、そうした入口でこのジャンルを知った人も多いと思う。
とはいえ、本来のVOGUE FEMMEは手だけのダンスではなく、5 Elementsと呼ばれる大きく5つの要素から成り立つ、もっと全身的なスタイルだ。
① Hands & Arms Performance:手や指、手首の動きで感情や物語を表現するパート。
② Catwalk:腰を左右に使いながら、モデルのように強く美しく歩く動き。
③ Duckwalk:深くしゃがんだ姿勢のまま、リズムに合わせて前へ進む動き。
④ Floor Performance:床を使って、しなやかさやセクシーさを見せる動き。
⑤ Spins & Dips:回転から、最後に勢いよく床へ落ちて決める見せ場。
そして、こうした要素を組み合わせたVOGUE FEMMEが、Ballroomのカテゴリーの一つとして、1対1、あるいは2対2で競われる。
個の存在感が強いジャンルだからこそ、複数人で見せるときには、単に同じ振りをそろえるだけでは魅せる作品にはなりにくい。
しかし今回は、手の見せ方や立ち姿、視線、間の取り方、決めのタイミングに「VOGUEらしさ」をそろえようとする意識が見えて、ショーケースとしての空気感がしっかり立ち上がっていた。
それに加えて、全体的な身体の使い方にはHEELS的な質感も感じられた。
実際にはヒールを履いていなかったものの、腰の置き方や重心移動、ポーズの取り方にはヒールダンスのニュアンスが多分に入っていて、VOGUE FEMMEとHEELSの基礎が自然に混ざっていたように思う。
出演していたのはおそらく中高生くらいなので、安全面を考えてヒールを履かないのは自然な判断だし、むしろこの段階で大事なのは、靴そのものよりも身体操作の基礎を身につけることだろう。
その意味でも、今回の見せ方はとても健全だった。
コレオグラフ全体としても、クラス発表として良いバランスだったと思う。
発表会では、ときに講師の創作性が前に出すぎて、生徒の学習成果の発表というよりも、「作品としてどれだけ派手か」が中心になることがある。
とくにLEGENDのようなコレオバトルに出展している講師の作品は、そうなりやすい印象がある。
しかし今回のショーケースは、VOGUE FEMMEやHEELSの基礎をしっかり取り入れながらも、それを生徒が表現できる形に整えていた。
発表会の振付として、良い形に仕上がっていたと思う。
最後に選曲についてだが、今回は2曲が使われており、いずれもVOGUE FEMMEの定番を押さえた選曲だったと思う。
1曲目はMikeQ「Werk’d It」、2曲目はHanabi The K「Welcome To The Ball」。
前者はVogue Beatの定番として知られ、後者はタイトルからしてもBallroomの世界観を前面に出した曲だ。
どちらもVOGUE/Ballroomの空気感を大きく伝えられる曲で、このジャンルを伝えるうえでとても良い選曲だった。
選曲が良ければ振付の意図も見えやすくなる。今回はまさにそういうケースだったと思う。
4. DリーグやMonolizへつながる、基礎としての一歩
いま日本でVOGUE/HEELSの群舞を思い浮かべるとき、多くの人にとってアイコンになっているのが、DリーグのBenefit one Monolizだと思う。
VOGUE/HEELSを軸に、チームとして高い完成度で見せたことによって、このジャンルがソロの立ち踊りだけでなく、群舞としても成立するのだと感じた人は多かったはずだ。
だから今回のstudio NEEDOのショーケースを見ていても、Monolizのような完成形に至るためには、まず基礎の動きや身体操作をしっかり身につけ、そのうえで群舞として見せるための感覚を少しずつ育てていくことが大事なのだと感じた。
VOGUEは、背景に深い文化を持つジャンルではあるが、最初からその背景のすべてを理解していなければならないわけではない。
まずはレッスンを受けて、動きを知り、身体で感覚をつかむことが入口になる。
その先で興味が出てきたら、『POSE』や『Legendary』のような作品を見るのもいいし、東京や大阪のBallroomシーンのように、実際のコミュニティに触れられる場を知っていくのもいい。
最近の日本のBallroomシーンは、多くのレジェンダリーたちの尽力もあって、以前よりずっと入口が見えやすくなっている。
例えばballroom_japanのような情報発信を参考にしながら、一度イベントを体感してみると、VOGUEが単なる振付ではなく、文化として続いていることがよりよく分かるはずだ。
そして、もし何かのきっかけでMonolizのようなVOGUE/HEELSの群舞に惹かれ、このジャンルをやってみたいと思ったとき、その門戸はstudio NEEDOに開かれている。
そう考えると、今回のstudio NEEDOのショーケースは、単なる発表会の一作品ではなく、徳島にVOGUEの最初の入口が開かれていることを知ることができた、という意味でも大きな収穫だった。
