プロになって2・3年目のデザイナーが注意すべきポイント
今回のお題にある『プロになって2・3年目のデザイナー』とは、新入社員枠を超えて、デザインをイチから任せられるようになったくらいの、いわば半人前の真っ只中、伸び代沢山ある方達のことをイメージしてもらえれば当たっています。このポジションにいらっしゃる方、このnoteを読んでくれてる中に結構多いと思いこの記事を書かせてもらいました。 文字数4,000字オーバーと、少し長めですが、是非最後までお読みください。
ただ、今回書かせてもらう2つのポイントは、デザイナー全般、よく陥りそうな注意すべきポイントでもあるので、経験値高い方にも読んで貰えたら幸いです。
※全て僕の失敗談であり、また失敗しないための自戒を込めての内容です。
取り上げる2つのポイントはこちらです。
1. 見た目の完成度にフォーカスしすぎて、そもそも「そのデザインで一番伝えたいことがなにか?」を忘れてしまう
2. 知らぬ間に自分の得意のフォーマットに全ての案件を当てはめようとしてしまっている
ではまず1つ目から。
1. 見た目の完成度にフォーカスしすぎて「一番伝えたいこと」を忘れてしまう
入社2〜3年目のデザイナーの方は良くも悪くも「素人っぽいデザイン」にならないよう一生懸命で、画面クオリティをあげるためのテクニックなど、常に新しいことを学んでいくものだと思います。この姿勢自体は凄く良いことで、こういうモチベーションがなければ上手くもならないのも事実です。
問題なのは「画面の完成度をあげるテクニック」ばかりにフォーカスするあまり、そもそも「このデザインで一番伝えるべきことは何か?」といういちばん大切な部分を忘れてしまうことです。
例えば最近、入社2年目の「Hさん」のデザインを見させてもらう機会がありました。彼は面白いくらい、このパターンに当てはまっていたのです。Hさんが作っていたのは化粧品サイトのトップページデザインで、新入社員の頃から比べると完成度もかなりあがり、「ひとりの先輩デザイナー」の僕としては「上手くなったな〜!」というのが正直な感想でした。

しかし、あらためてそのデザインをよく見てみますと、いまひとつ「どこを目立たせたいか?」が見えてこない。クライアントが求めていた「化粧品の効用を目立たせたい」という要望も叶えられているとは言えず、なんだか女性モデルの方ががっつりと目立っている、どちらかと言うと「イメージ重視のデザイン」に仕上がっています。
Hさんの頭の中にはもしかしたら、海外の化粧品によくある雰囲気重視で見ているだけでうっとりするような広告ビジュアルや、「CHANEL」等のブランディングを含めたビジュアルが漠然と浮かんでいたのかもしれません。しかし少なくとも、クライアントの「化粧品の効果・効用を打ち出したい」というオーダーからは随分と離れてしまっています。
何故そうなるのでしょうか?一言で言えば、Hさんが「デザイン」ではなく「自分の作品」作りに夢中になっているからでしょう。「作品」という言葉のニュアンスが伝わりづらいかもしれませんが、本来の言葉の意味とは違う(どちらかと言えば悪い意味での)「芸術作品」寄りの「自分の作品」として作ってしまっている、ということです。
つまり、クライアントより…作り手である自分の作りたいことが優先されている状態で、厳しい言い方をすれば「お客様より、クリエイターとしての自分のエゴを優先させている」と言えます。
2・3年目でグラフィックソフトの使い方も習熟して、思ったイメージを画面に作り上げることができるようになった時期に、Hさんだけでなくどんなデザイナーでも多かれ少なかれこういう状態になると思いますし、無理もないなあという思いもあります。ただ、クライアントからすれば、苦労して稼いだお金を出している自分とは全く関係ない話で、悪気なくとも許されるものでもないです(笑)。
僕などはデザイナーになって4・5年目でそういう状態になりました。
※デザイナーの友人のポートフォリオサイトデザインを作っている時に「自分の好みばかり優先させている」と指摘され我に返りました。
「デザイン」に「アート的な側面」「作品的な価値」があるのは否定しませんし、それがあるから楽しい・面白い・ワクワクすることも、自分の経験上よくわかっています。そしてこの「クリエイター的なエゴ」があってこそスキルがぐんと上がるのも事実です。
しかし「デザイン」にはそのデザインで成し遂げたい目的があり、それは大抵「これを伝えたい」というクライアントの(潜在的あるいは健在的に関わらず)要望で、その要望を自分たちのデザイン技術で叶えてあげるのがデザイナーの役割です。
クライアントの要望に応えているか?あるいはそれを超えたものを提示できているか?デザイナー自身がニュートラルな目でチェックできるようになってほしいですし、自分自身もそんな心構えでデザインを作りたいと思っています。デザインって「始まりは自分」では務まりはしないのです。

2. 知らぬ間に自分の得意フォーマットに全ての案件を当てはめようとしてしまっている
これはどういうことかと言えば、例えばグリッドデザインを使ったデザインで上手くいった時に、他のデザインでもそのフォーマットに当てはめて無理矢理「グリッドデザイン」で作ろうとする、というような事です。自分の成功体験、「上手くデザインできた!」あるいは「褒められた!」というデザインを無意識に再利用してしまうということで、2・3年目に限らずデザイナー全般によくあることで、自分も気をつけたいと心から思います。
2・3年目のデザイナーは引き出しが比較的まだ少ないため、同じようなデザインを繰り返しているように見えることは多いかもしれません。またこの時期に威勢のよい新人が入社してきたりして、失敗できないと「守り」に入ってしまい、「自分の得意な型」に合わせたい気持ちが出てきたりもします。
では、このループから離れるためにどうすれば良いでしょうか?まず当たり前のことですが「前と同じようなデザインになっていないか?」を自分自身でチェックすることです。もっと言えば「ほっておくとデザイナーという人間は、作りやすいデザインに走ってしまう生き物だ!」くらいのことを自分に言い聞かせておくと良いかもしれません。
解決策はシンプルで「毎回毎回の案件に一番適したデザインを考え抜いて、自分の得意・不得意など一切考えず、とにかく最適解を求める」ということです。たまたまあなたの得意な方法がクライアントの要望を叶えるために最適であれば、繰り返しになろうとその形で作って全然構いません。しかし自分にバイアスをかけて安易にそっちの方向に進んでいないか、厳しくチェックしてから進めたいところです。
何かのデザイン本で「自分のデザインの必殺技を作る」みたいなことを書かれている本がありました。(その本ではその必殺技をたくさん用意する…という事を書きたかったようですが)プロレスの必殺技(キメ技?)を10個も持っているレスラーなんていないので、ミスリードを導いてしまうと思いました。どんな状況でも対応できるのが最強のデザイナーと心得ましょう。
きちんとした理由があってグリッドデザインを選択するのであれば構いませんが、デザインは結構自由度があるので、どんな方法論でもやり方でもクライアントの要望をデザイナーが常に意識すればきちんとした答えは出せるものです。
少なくとも僕自身に限って言えば、「自分の幅を広げよう」と強く意識して「あえて」自分らしくないデザインに挑戦していた時期がありました(もちろんクライアントの要望からは外れないよう注意しながらです)。当時の先輩で「グラデーションの〇〇」とか「描写の〇〇」とか(〇〇には名前が入ります)と呼ばれて満更でもなさそうな方がいましたが、正直ろくなものではありません(笑)もしあなたがデザイナー仲間にそんなあだ名をつけられていたら「マズい!」と思って自身を振り返った方が良いでしょう。それだけ似たようなデザインを連発している危険性が大きいです。
デザインは、変に偏らず意識して自分のバリエーション・作風を広げようと取り組んでいるくらいの方がいいですし、絶対その方が早く上手になると思います。毎回最適解だけを追って、結果的に今までやったことのない所に手を出していくのは思うよりきついですが、きつくない腕立てが筋肉を作らないように、デザインも意識して負荷をかけた方がデザイン力はつくものです。
まとめ
2・3年目のデザイナーが陥りやすいポイントと解決策を書かせていただきました。
1つ目の「見た目の完成度にフォーカスしすぎる」問題の解決策は、まずクライアントが(そのデザインで)一番伝えたいことを第一に考える癖をつけ、自分が作りたいものを優先させないこと。「ビジュアル・作品」としての完成度ではなく「デザイン」全体としての完成度を高めるために心を砕くことです。
変な言い方ですが、最適解の答えはクライアントが持っている(あるいは中にあるのを引き出す)と考えるくらいが良いかもしれません。
※クライアントはわざわざお金を出してまで、僕らデザイナーにデザインを依頼している訳で、そこに明快な理由がないはずはありません。
「見た目の完成度」にこだわる人は「上手くなりたい」という想いも強いので、その「思い(エゴ)」を上手く「活かす」ように自分自身をコントロールできるようになりましょう。
2つ目の「得意フォーマットに当てはめてしまう」問題の解決策は2つです。「前と同じようなデザインになっていないか?」を常に自分自身でチェックすること。シンプルですがこれを心がけることで問題は改善されます。そして毎回のデザインで、褒められた得意なデザインの形を忘れ、とにかくクライアントにとって一番成果が上がりそうなデザインを作ることです。
考えれば考えるほど、この2つの注意ポイントはデザイナー全般に当てはまることで、自分自身「デザイナーをやめるまで注意しないといけないポイントだな」と強く思います。はっきり言って僕も今でもこの2つは気をつけています。デザインって結局「意識の持ちよう」や「心構え」にモロに影響されるもので、経験があるだけ回避策も多くはなりますが、それに甘えずきちんと自分自身を律することができる人がプロなのかな、ということを感じました。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
