「プラーナ:その栄光と救済力/その19」/シャンカラ註解『ブリハッド・アーラニャカ・ウパニシャッド』(Br.1.3.26)
はじめに
プラーナはサーマンでありその真の音、つまり、神の生命の息吹たる音色を知る者は黄金を得る、とする格言となっているのだが、シャンカラ師はどのように私たちに説くのだろうか?
『ブリハッド・アーラニャカ・ウパニシャッド』第一篇第三章二十六節
第一篇 蜜篇 第三章 プラーナ:その栄光と救済力
二十六節 このサーマン(生命力)の正しい音を知る者は黄金を得る。音調(音色)こそがまさにその正しい音である。サーマンの正しい音がそのようなものであると知る者は黄金を得る。
□シャンカラ註解
第二十六節の註解
さて、ここにおいて、別の属性、すなわち、「正しい音を持つこと」についての瞑想が説かれる。これもまた、良い音調(音色)に関わることなのだが、次のような違いがあります。
先ほどの前のものは、「声の甘美さ」であったのに対して、ここでは「スヴァルナ(suvarṇa)」という言葉で示されているのは、音声学の法則に従った「正しい発音」のことである。
このサーマンの正しい音を知る者は黄金を得るのだ。なぜならば、「スヴァルナ(suvarṇa)」という言葉には、「良い音調(音色)」と「黄金」という二つのこ意味があるからである。
つまり、この属性を瞑想することによって得られる結果は黄金の獲得であり、それこそが「スヴァルナ(suvarṇa)」という言葉の共通の意味するところなのである。
実のところ、その「正しい音」とは「音調(音色)」のことである。サーマンの正しい音をそのように知る者は、黄金を得るのである。以上のことはすべて説明された通りである。
□デーラダナンダ註解
この『ブリハッド・アーラニャカ・ウパニシャッド』とは、その肝とも言えるヤージナヴァルキァ師との対話による論説が繰り広げられるのだが
ヤージナヴァルキァ師は、ブラーフマンの「智識」の獲得と共に、たくさんの黄金をも得ることからすると、今節の格言はそのことを予言するかのような言説となっている。
シャンカラ師の論理として、サーマン(旋律/讃歌)にとっての「富・美」とは、物質的な黄金ではなく、正しく美しい音調で歌われることであるので、「サーマンの黄金」とは「正しい音調(svara)」そのものを指しているのでしょう。
そこで、サーマンの本質であるプラーナ(生命力)の「美しい音調(スヴァルナ)」を理解し、それを己のものとして瞑想する者は、結果として現実の物質的な「黄金(富)」をも手に入れることができると説いているのかもしれません。したがって、このことによって、ウパーサナと呼ばれる瞑想が持つ現世的な果報をも肯定するアプローチと言えるかもしれません。
私のこの格言においての解釈だと、神の想念を「音色」として象徴し、その「音色」を神の生命力を証かすプラーナ、つまり、サーマンにて象徴し、もしくは、意味づけて、そのことを自らの神よりの遺産として瞑想することをシャンカラ師は命じていると思われます。
最後に
ダルシャナ(質疑応答)
【問い】:端的にお尋ね致します。この世界の私たちにとっての「意味」とは何でしょうか?死と再生を輪廻として繰り返すことが今の私にとっての世界の「意味」となっているのですが、その「意味」を変えることで「解釈」が変わり、正しくこの世界を「知覚」することでこの世界という教育課題を修了して卒業ができるのでしょうか?
【答え】:まずはじめに、この世界が貴方ひいては個人個人にとって何を「意味」するのかは、「目的」によって異なります。
例えば、この『ブリハッド・アーラニャカ・ウパニシャッド』で示されている「死」から始まった飢えと執着による再生をそのまま引き継ぐことを「目的」とするのならば、その「目的」通りに違う肉体に再生してしばらく飢えと執着を味わい、果たせなかった欲望に飢え執着し次の肉体へと再生を繰り返すことでしょう。
したがって、この世界への意味付けを変えるためには、貴方が何を「目的」としているのかを「認識」しなければなりません。
そして、この「認識」とは、「再び知ること」であって、何を「目的」としていることから世界に対するもしくは今目の前の状況にたいしての「意味」となっていることを知る必要があります。
そのことが理解できると、何のための「知覚」なのかがわかってくるでしょう。つまり、今の現状に対する貴方の自動的な「解釈」による「知覚」が何であるのか?そして、そのことが貴方の人生に何をもたらしどのような影響を与えているのか?について、瞑想つまり熟考することができます。
すると、何度も無意識的に繰り返す「認識」のプロセスを瞑想にていったん中断させて垣間見ることで、貴方の「目的」とは何か?「意味」とは何か?そして、何を「認識」しているのかを文字通りに知ることができます。
このプロセスには、自助努力そして忍耐と共に多くの私たちにとって時間を要することとなるでしょう。
ですので、いきなりブラーフマンの「智識」を獲得して視界からこの世界が消えてなくなることはあり得ないのでご安心ください。
貴方がこの世界に対する誤った「目的」に信奉している限りは、この世界はその「目的」に合致した「意味」を持つものとして解釈され知覚され続けるだけです。
このプロセスをお伝えすることはとても容易ではありますが、実践することはなかなかに意志の力が必要です。お互いに精進しましょう。
【答え】:ありがとうございます。わかったようなわからないような感じですが、まずは、自分にとってこの世界にどのような「目的」を与えているのか?そして、そのことによって、どのような「意味」として解釈し知覚しているのかを調べてみます。ありがとうございます。
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