【透析②】HDでは、ダイアライザと透析液の間で何が起きているのか
前回は、HDとPDの違いを、
電解質と水の抜け方
という視点で整理しました。
HDもPDも、老廃物や電解質、水分を整える治療です。
ただし、使う膜が違います。
HDは、ダイアライザーを使います。
PDは、腹膜を使います。
今回はHD側に寄せて、
HDでは、ダイアライザーと透析液の間で何が起きているのか
を整理します。
HDは、血液をダイアライザーに通す治療
HDでは、血液を体の外に出します。
血液ポンプで血液を送り、ダイアライザーに通します。
ダイアライザーの中では、血液と透析液が膜を挟んで流れています。
ざっくり言うと、
- 血液
- 透析膜
- 透析液
この3つの関係で、老廃物や電解質、水分を調整しています。
ダイアライザーは、ただ血液を通す筒ではありません。
血液と透析液を膜越しに接触させて、体の中にたまった物質や水分を調整する場所です。
## ダイアライザーの中では、血液と透析液が向かい合っている ダイアライザーの中には、細い中空糸がたくさん入っています。
血液は、その中空糸の内側を流れます。
透析液は、中空糸の外側を流れます。
血液と透析液は直接混ざりません。
間には透析膜があります。
この膜を介して、物質や水分が移動します。
ここで大事なのは、透析液はただの水ではないということです。
透析液には、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、重炭酸などが、一定の濃度で含まれています。
つまりHDでは、
血液をきれいな水で洗っている
のではなく、
透析液の組成を利用して、血液中の物質を調整している
と考える方が近いです。
## 電解質や老廃物は、主に拡散で動く HDで物質が動く基本は、拡散です。
拡散とは、
濃い方から薄い方へ物質が移動すること
です。
血液中に尿素窒素やクレアチニンが多ければ、透析液側へ移動します。
血液中のカリウムが高く、透析液側のカリウム濃度が低ければ、カリウムは血液側から透析液側へ動きやすくなります。
このように、HDでは血液と透析液の濃度差を使って物質を動かします。
だから、透析液の濃度はとても重要です。
透析液のカリウム濃度。
カルシウム濃度。
ナトリウム濃度。
重炭酸濃度。
これらは、血液側との濃度差を作り、物質の動き方に関係します。
## 「抜く」だけではなく「補う」ものもある 透析というと、どうしても「悪いものを抜く治療」というイメージになります。
もちろん、尿毒素や余分なカリウム、水分を取り除くことは大事です。
でも、HDでは「抜く」だけではありません。
透析液側から血液側へ入ってくるものもあります。
代表的なのが、重炭酸です。
腎不全では、酸を処理する力が落ち、代謝性アシドーシスになりやすくなります。
そのため、HDでは透析液に含まれる重炭酸が血液側へ移動し、酸塩基の補正に関わります。
つまりHDでは、
不要なものを抜く
だけではなく、
足りない方向へ補正する
ということも同時に行われています。
ここを押さえると、透析液の意味が少し見えやすくなります。
## カリウムは、HDで動きやすい電解質の代表 HDで分かりやすいのが、カリウムです。
腎不全ではカリウムが体内にたまりやすくなります。
血液中のカリウムが高く、透析液側のカリウム濃度が低ければ、濃度差によってカリウムは血液側から透析液側へ移動します。
そのため、HDでは比較的短時間でカリウムが下がります。
ここがPDとの違いでもあります。
PDでもカリウムは拡散で動きます。
ただし、PDは腹膜を介して長時間かけて行う治療です。
HDのように、数時間で集中的に補正する治療とは時間の使い方が違います。
だから、
HDは短時間で電解質が動きやすい
PDは長時間でゆっくり整える
という見方ができます。
## リンは、単純に抜ければ終わりではない リンも透析で重要な物質です。
血液中のリンは、透析膜を介して透析液側へ移動します。
ただし、リンはカリウムのように単純に短時間で全部きれいに抜ける、という見方だけでは不十分です。
リンは細胞内や骨など体内の分布も関係します。
血液中だけでなく、体の中から血液中へ戻ってくる動きもあります。
そのため、透析中に下がっても、透析後に再び上がることがあります。
ここは、HDでの物質移動を考えるときに大事です。
血液中の数値だけを見て、
「透析で抜けた」
と単純に考えすぎない方がよい場面があります。
物質によって、動きやすさも、体内での分布も違います。
## 水分は、主に圧を使って抜く 次に水分です。 HDでは、余分な水分を取り除きます。いわゆる除水です。
水分は、老廃物や電解質のように濃度差だけで考えるものではありません。
HDでは、透析装置で圧を管理し、ダイアライザーの膜を介して水分を抜きます。
ここで関係するのが、
限外濾過です。
限外濾過とは、膜を介して水分が移動することです。
HDでは、透析装置が除水量を設定し、透析中にどれだけ水分を抜くかを管理します。
つまりHDの除水は、
何mL抜くかを機械的に設定して管理しやすい
という特徴があります。
## 除水は「抜ければよい」ではない ただし、除水は抜ければよいわけではありません。
HDでは、数時間で体の水分を動かします。
そのため、血管内の水分が減るスピードと、組織から血管内へ水分が戻ってくるスピードのバランスが重要になります。
体の中の水分は、血管内だけにあるわけではありません。
血管内。
間質。
細胞内。
こうした場所に分かれています。
透析で血管内から水分を抜く。
すると、間質から血管内へ水分が戻ってくる。
この戻りが追いつかなければ、血圧が下がりやすくなります。
つまりHDの除水では、
除水量
だけでなく、
除水速度
血圧
循環動態
患者さんの体液分布
も関係します。
「予定通り除水できたか」だけではなく、
「その除水に体が耐えられているか」
を見る必要があります。
ダイアライザーでは、拡散と限外濾過が同時に起きている
HD中のダイアライザーでは、いくつかのことが同時に起きています。
尿素やクレアチニンが透析液側へ移動する。
カリウムが血液側から透析液側へ移動する。
重炭酸が透析液側から血液側へ移動する。
水分が膜を介して抜ける。
つまり、
拡散による物質移動
限外濾過による水分移動
が同時に行われています。
だからHDは、老廃物だけでなく、電解質、酸塩基、水分を一度に調整している治療です。
この視点があると、透析条件の意味も見えやすくなります。
血流量。
透析液流量。
透析時間。
ダイアライザーの膜面積。
膜の性能。
除水量。
透析液組成。
これらは、それぞれ物質や水分の動き方に関係します。
## 血流量と透析液流量は、物質の動きに関係する HDでは、血液がダイアライザーを流れます。
この血液の流れが血流量です。
一方、ダイアライザーの反対側には透析液が流れています。
この透析液の流れが透析液流量です。
血液側に老廃物が多く、透析液側の濃度が低い状態が保たれると、拡散は進みやすくなります。
そのため、血流量や透析液流量は、物質除去に関係します。
もちろん、実際の透析効率はこれだけで決まりません。
ダイアライザーの性能。
膜面積。
透析時間。
患者さんの体格。
シャントの状態。
再循環。
血液側の条件。
いろいろな要素が関係します。
ただ、基本としては、
血液と透析液が、膜を挟んで十分に接することで物質が移動する
と考えると分かりやすいです。
## HDは変化が速いから、観察も重要になる HDは、数時間で電解質や水分を調整します。
これはHDの強みです。
高カリウムを比較的速く補正できる。
余分な水分を計画的に抜ける。
酸塩基の補正も行える。
一方で、変化が速いということは、患者さんの体にかかる変化も大きいということです。
血圧低下。
気分不快。
筋けいれん。
頭痛。
倦怠感。
透析後のふらつき。
こうした症状は、除水や浸透圧変化、循環動態などと関係することがあります。
だからHDでは、機械設定だけではなく、患者さんの反応を見る必要があります。
透析条件として正しいか。
予定通り除水できているか。
血圧は保てているか。
症状は出ていないか。
透析後に無理が出ていないか。
ここまで含めて見ると、HDの理解が現場に近づきます。
## HDをざっくり一言でいうなら HDを、今回のテーマに合わせて一言でいうなら、
ダイアライザーという人工膜を使って、透析液との濃度差と圧管理で、短時間に電解質と水分を調整する治療
です。
もう少し短くすると、
HDは、ダイアライザーと透析液で短時間に整える透析
です。
ここで大事なのは、
「血液をきれいにする」
で終わらせないことです。
血液と透析液の間で何が動いているのか。
どの物質が抜けるのか。
何が補われるのか。
水分はどう抜いているのか。
その変化に体が耐えられているのか。
ここまで見ると、HDの仕組みが少し立体的になります。
# まとめ HDでは、血液を体の外に出してダイアライザーに通します。
ダイアライザーの中では、
血液
透析膜
透析液
が関係しています。
血液と透析液は直接混ざりません。
透析膜を介して、物質や水分が移動します。
尿素窒素、クレアチニン、カリウムなどは、主に濃度差による拡散で透析液側へ移動します。
一方、重炭酸のように、透析液側から血液側へ補われるものもあります。
水分は、主に限外濾過で抜きます。
HDでは透析装置が圧を管理し、設定した除水量に合わせて水分を取り除きます。
つまりHDは、
拡散で物質を動かす
限外濾過で水を抜く
透析液の組成で電解質や酸塩基を調整する
治療です。
そしてHDは、短時間で集中的に体の中を整える治療です。
だからこそ、電解質や水分の変化は速い。
その分、血圧や症状、循環動態への影響も見ていく必要があります。
次回はPD側に寄せて、
腹膜とスリーポアモデルで何が起きているのか
を整理していきます。
