平日に食物繊維が足りない人の、1日を通して確保しきる設計
平日の夜、その日に食べたものを一度紙に書き出したことがある。朝はトーストとコーヒー、昼は牛丼、夕方にチョコ、夜はパスタ。炭水化物と脂質でぎっしり埋まっていて、野菜らしい野菜は牛丼の上に少し乗った紅しょうがくらいしか思い出せなかった。
私は体重を15kg落とした。その過程で、たんぱく質を確保する設計が効いたという話は別に書いた。今回はそれと対になる、もう一本の柱の話だ。食物繊維を、足りなくなる前に1日かけて積み増す配分を持つこと。これが、痩せたあとに体重が戻りにくくなった一番の理由だった。
食物繊維と聞くと「お通じのためのもの」という印象を持つ人が多い。私もそうだった。だから優先順位が低かった。痩せたいなら、まずカロリーとたんぱく質だろう、と。食物繊維は「健康にいいらしいけど、後回しでいいもの」の引き出しに入っていた。
食物繊維を後回しにしていた私には、食事全体を見直す余地があった。ただし、食後の眠気、空腹感、お腹の不調には、睡眠、食事量、食べる速さ、服薬、病気など複数の要因がある。食物繊維だけを原因や解決策にしないことが、この設計の前提になる。
厚生労働省の食事摂取基準2025年版では、食物繊維の目標量が年齢・性別ごとに示されている。一律に「男性20g、女性18g」と覚えるのではなく、自分に該当する最新の表を確認する必要がある。
集団の平均摂取量から、自分の不足を「あと2g」などと逆算することはできない。この記事では、まず1〜3日分の食事と食品表示を見て、食物繊維を含む食品がほとんどない枠を探す。必要量を厳密に管理したい人は、管理栄養士などの専門家に相談してほしい。
この記事では、平日のどこで食物繊維を含む食品が抜けやすいかを点検する。外食・コンビニ・間食という現実の選択肢の中で、食品表示を見て1枠ずつ調整する。必要量を自己診断せず、目標量と記録の差を確認する設計だ。
体調に不安がある場合や、お腹の調子が大きく崩れているとき、腸の持病があるときは、自己判断で食事を急に変えず、医療機関や専門家に相談してほしい。食物繊維は急に大量に増やすとお腹が張ることがあるので、増やし方そのものにも設計が要る。これも後半で扱う。
なぜ平日は食物繊維が足りなくなるのか
最初にはっきりさせておきたいのは、食物繊維が足りないのは意識が低いからではない、ということだ。平日の食事は、放っておくと構造的に食物繊維が抜け落ちる。たんぱく質が抜け落ちるのと同じ理屈だが、抜け方の経路が少し違う。
食物繊維が多いのは、野菜・きのこ・海藻・豆類、それから玄米やもち麦、全粒粉パンのような精製度の低い主食だ。逆に言えば、白いごはん、白いパン、白い麺、つまり平日の主食として一番選ばれているものには、食物繊維がほとんど残っていない。精製の過程で、繊維を含む部分が削り落とされているからだ。
朝を思い出してほしい。時間がない朝に選ぶのは、トースト、菓子パン、おにぎり、シリアル。どれも主食が中心で、繊維は薄い。野菜を切る時間も、サラダを用意する余裕もない。だから朝の食物繊維はほぼゼロで1日が始まる。
昼は外で食べる。ラーメン、立ち食いそば、牛丼、カレー、パスタ。主食が主役で、野菜は申し訳程度に乗っているか、入っていない。早くて安くて満足する選択肢ほど、繊維が削られた白い炭水化物でできている。
夕方は疲れて判断力が落ちている。手が伸びるのはチョコやクッキーやスナック。糖質と脂質のかたまりで、繊維は入っていない。
夜は「今日は頑張ったから」で好きなものを食べる。麺類、丼もの、揚げ物。ここでも野菜は脇に追いやられる。
こうして1日を振り返ると、炭水化物と脂質は十分すぎるほど取れているのに、食物繊維だけが、どの食事の場面でも構造的に後回しにされている。これは性格の問題ではない。平日の選択肢が、繊維を削った食材でできているという、構造の問題だ。
私が3年前に食事記録を見直したとき、食物繊維を含む食品が少ない日が続いていた。お腹の重さや眠気もあったが、原因は特定できない。そこで症状への効果を期待するのではなく、食事の偏りを一つずつ減らす対象として扱った。
食物繊維だけで症状を説明しない
食物繊維には複数の働きがある一方、日中の不調を食物繊維不足だけで説明するのは危険だ。ここでは、公的資料で確認できる一般的な働きと、個人の体感を分けて扱う。
厚労省のe-ヘルスネットでは、食物繊維について糖の吸収速度との関係が説明されている。ただし、個々の食後血糖は食事全体や体調などにも左右される。
昼食後の強い眠気や空腹が続く場合、自己判断で「血糖値の急降下」と決めつけない。睡眠不足、食事量、糖代謝の問題などもあり得るため、生活に支障があるなら医療機関へ相談する。
2つ目は、満腹感が続かないことだ。食物繊維、特に野菜やきのこに多い不溶性のものは、よく噛む必要があり、胃の中でかさを持つ。噛む回数が増えると満腹感が出やすく、かさがあると物理的に満たされる。
逆に、繊維の抜けた柔らかい炭水化物は、ほとんど噛まずに飲み込めて、量のわりに腹に溜まらない。だから食べた直後は満たされても、すぐにまた食べたくなる。「足りない気がする」の正体は、カロリーではなく繊維の不足のことがある。
便通との関係も知られているが、便秘や腹部症状の原因は一つではない。食物繊維を増やせば必ず改善する、とは言えない。
ここを軽く見ない方がいい、というのが私の実感だ。お腹が重いと、動くのが億劫になる。動くのが億劫だと、階段を使わなくなり、休日も家から出なくなり、運動量がじわじわ減る。
食物繊維が直接カロリーを燃やすわけではない。だが「体が軽いから動ける」という状態は、痩せたい人にとって地味に大きい。私が外食続きで繊維が抜けていた時期は、お腹が重く、何をするにも体が重だるくて、運動の習慣が自然に消えていった。繊維を取り戻したら、まずこの「体の重さ」が抜けて、結果として動く量が戻った。
私自身は食事の選択肢を増やすきっかけになったが、これは個人の体感であり、食物繊維を増やした結果だと断定はできない。この記事で提供するのは、症状を治す方法ではなく、食事の偏りを点検するための手順だ。
Part 1 自分の目標量と現状を混同しない
ここからは、自分の不足が具体的に何gで、それをどこで埋めるべきかを掴むための話に入る。Part 1では「足りない量を可視化する」までをやる。具体的な割り振りの設計はPart 2以降だ。
目標と現状の差は「数g」でしかない
目標量は年齢・性別で異なり、平均値から個人の不足量は決められない。最初に厚労省の表で自分の目標量を確認し、食品表示や食事記録から現状の目安をつかむ。
この「数g」という数字の小ささを、最初に腹に入れてほしい。ダイエットの設計でいちばん失敗するのは、ゼロから完璧を作ろうとして続かなくなることだ。毎食サラダを山盛り食べて、玄米に切り替えて、間食を全部野菜スティックにして、という設計は、3日で破綻する。私は何度もこれで失敗した。
そうではなく、今ある食事を4枠に分け、食物繊維を含む食品が少ない枠を探す。追加量は食品表示と自分の目標量を見て決める。最初から全枠を変えないことが、この記事全体の設計思想だ。
自分が今どれくらい足りていないかの当たりをつける
正確にg数を計算する必要はない。むしろ計算しようとすると面倒で続かない。ここで欲しいのは「自分はどの場面で繊維がゼロに近いか」という、穴の位置の把握だ。
昨日1日を思い出して、こう自問してみてほしい。朝、繊維のあるものを何か食べたか。昼の主食以外に、野菜・きのこ・海藻・豆を口にしたか。間食に手を伸ばしたとき、それは繊維ゼロのお菓子だったか。夜、主役の料理の横に、野菜の小鉢はあったか。
多くの人は、ここで「朝はゼロ」「昼は主食だけ」「間食はゼロ」と答えになる。穴は1つではなく、複数空いている。だからこそ、1食で一気に埋めようとせず、複数の穴に少しずつ詰めていく設計が効く。
私の場合、いちばん大きな穴は朝と間食だった。昼と夜はまだ外食の選び方でなんとかなるが、朝はパンとコーヒーで繊維ゼロ、間食はチョコで繊維ゼロ。この2つの穴を先に塞ぐと決めたら、それだけで合計の景色がだいぶ変わった。
「食べた量」ではなく「繊維が乗ったか」で見る
平日の食事を繊維の視点で見るときのコツは、量で見ないことだ。サラダを食べた、では情報が足りない。レタスだけのサラダは、見た目のわりに繊維がとても薄い。一方、同じかさでも、海藻やきのこや豆が入っていれば繊維は厚い。
だから記録するときも、頭で見るときも、「繊維が乗る食材が、その食事に1つでも入ったか」をイエス・ノーで見るのがいい。入っていれば、その枠の穴は塞がっている。入っていなければ、空いている。この粗い見方のほうが、g数の暗算より続くし、外食やコンビニの現場でも判断が速い。
Part 1はここまでだ。自分の1日のどこに穴が空いているか、その当たりはついただろうか。ここから先のPart 2では、その穴を朝・昼・夜・間食の4つの枠に分けて、それぞれどう塞ぐかを具体的に設計していく。穴の位置は人によって違うから、自分の空いている枠から読んでもらってもいい。
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