目標体重に到達した後、リバウンドさせない平日の維持設計

体重計が目標の数字を表示したのは、3年前の11月だった。15kg落とした朝、私は脱衣所でしばらく数字を眺めて、ひとつ大きく息を吐いた。これでもう厳しい食べ方をしなくていい、と思った。

その「もう厳しくしなくていい」という気の緩みが、最初のつまずきだった。

目標に着いてから2ヶ月で、私は3kg戻した。さらに半年後には、落とした15kgのうち6kgが戻っていた。完全に元に戻ったわけではないが、せっかく着いた数字から、じわじわと離れていった。

この記事は、痩せる方法の話ではない。目標に着いた後、その体重から離れないための平日の食事の組み方の話だ。痩せる過程と維持の過程は、必要なルールがまるで違う。私はそれを理解するのに、6kg戻すという授業料を払った。

痩せた経験がある人ほど、維持を甘く見やすい。「あれだけ落とせたんだから、維持くらい余裕だ」と思う。私もそう思っていた。でも実際には、落とすのと保つのは別の競技だ。落とすのは短距離走で、保つのは終わりのない散歩に近い。短距離走のフォームのまま散歩を続けると、足を痛める。維持には維持のフォームがいる。

そして維持のフォームは、減量のフォームより地味で、覚えるのも簡単だ。やることが少ないからこそ、知らないと無防備に戻っていく。この記事では、その維持専用のフォームを、平日の食事という一番崩れやすい場所に絞って組み立てていく。

「維持」は減量の延長ではないと最初に決める

多くの人が、目標に着いた後も減量期と同じ食べ方を続けようとする。あるいは逆に、ゴールしたご褒美として一気に緩める。どちらも戻る。

減量期は「平常より減らす」モードだ。だから常に少しの我慢があり、その我慢にはいつか終わりが来る前提で耐えられる。終わりが来ない我慢は続かない。目標に着いた瞬間、その「終わり」が来たと脳が判断する。だから着地後に緩むのは、意志の弱さではなく、減量期の設計に最初から組み込まれていた反動だ。

ここを理解しておくと、やることが見えてくる。維持期は「我慢を続ける」のではなく、我慢しなくても元の数字から離れない食べ方に、平日の標準を作り替える期間だ。

私が6kg戻した時期を振り返ると、平日の昼に何を食べるか、毎日その場で決めていた。減量期は選択肢を絞っていたから迷わなかったのに、ゴール後は「もう何でもいい」と判断を解禁した。判断を解禁すると、人はカロリーの高いほうへ静かに流れる。空腹のピークでメニューを選べば、だいたい脂質多めの答えになる。

崩れていたのは意志ではなく、判断の回数が増えたことだった。

減量期と維持期で何が違うのかを、もう少し具体的に分けておく。減量期は「目標に向かう坂道」で、毎日の少しの我慢に意味があった。数字が落ちていくのが見えるから、我慢にも手応えがある。我慢と結果がセットになっている期間だ。

維持期は「平らな道」になる。数字は落ちない。当たり前だが、目標に着いたのだから、そこからさらに落とす必要はない。すると我慢に手応えがなくなる。手応えのない我慢は、人間は続けられない。だから減量期と同じ我慢を維持期に持ち込むと、必ずどこかで切れる。

切れたときに「自分は意志が弱い」と責めると、次はもっと反動が大きくなる。維持期に責めは要らない。要るのは、我慢の総量を減らしても数字が動かない食べ方に、平日を作り替えることだ。

なぜ着地後にじわじわ戻るのか

痩せた後に体重が戻ってくるのには、体の側の事情もある。

体にはある一定の体重を保とうとする働きがあり、急に減らした体重はストレスとして認識されて、元へ戻そうとする生理的な反応が起きやすいと言われている。レプチンなどのホルモンの分泌が調整され、食欲やエネルギーの使い方が「戻す方向」に傾く。これは意志でねじ伏せる対象ではなく、前提として織り込んでおくものだ。

つまり、着地後の体は最初から「戻りたがっている」。この事実を知らないまま「もう着いたから大丈夫」と気を抜くのが、一番危ない。

そこに「もう何でもいい」という判断の解禁が重なると、体の戻したい力と、自分の緩んだ選択が同じ方向を向く。これがじわじわ戻る正体だ。片方だけなら持ちこたえても、両方が揃うと静かに2kg、3kgと離れていく。

だから維持期にやることは、体の側を変えることではなく、自分の側の「判断の解禁」を取り消すことになる。体が戻したがるぶん、選択の側でブレーキを残しておく。減量期ほどきつくはしないが、ゼロにもしない。この「ゼロにしない設計」が維持の核心だ。

急に体重が大きく動いたり、体調の変化が気になるときは、医療機関や専門家に相談したほうがいい。維持の話は、あくまで体調が安定している前提での食べ方の設計だ。

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