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数字を追うのをやめた日、僕の本当の 「成長」 が始まった

月初の売上レポート、SNS のフォロワー数、記事の PV。僕たちはいつから、自分の価値を「数字」で測るようになったのだろう。

それはまるで、栄養のないエナジードリンクのように、一瞬の高揚と、深い疲弊だけを心に残していく。

これは、僕がそんな数字の呪縛から解き放たれ、「成功」ではなく「成長」という、自分だけのコンパスを手に入れるまでの物語です。


あなたの隣にもある 「見えないレース」

誰かと比べて、焦りを感じたことはありませんか?

SNS を開けば目に入る、華々しい成功譚。自分より若く、才能にあふれた誰か。フリーランスという孤独な戦場では、数字だけが唯一の客観的な味方であり、そして最も手強い敵でもありました。

「今月も、先月の売上を超えなければ」
「あの人より、もっと多くのフォロワーを獲得しなければ」

誰に強制されたわけでもないのに、僕はいつの間にか、そんな「見えないレース」に参加していました。ゴールテープのないトラックを、ただひたすらに走り続けているような感覚。それが、かつての僕の日常でした。

「成功」 という名の蜃気楼

フリーランスとして独立して数年が経った頃、誰もが羨むような高単価の長期案件を獲得することができました。

毎月、決まった日に振り込まれる報酬額は、会社員時代の給料をはるかに超えていました。銀行口座の数字が増えていくのを見るたびに、僕は一瞬の安堵と、フリーランスとしての「成功」を実感していたのです。

しかし、その安堵はすぐに、「来月もこれを維持しなければ」という重いプレッシャーに変わりました。

クライアントの期待に応え、数字という分かりやすい結果を出し続けること。それが僕の価値証明でした。僕はいつしか「優秀なフリーランス」という、分厚い鎧を身にまとっていたのです。

その鎧の内側で、何かが少しずつ、しかし確実にすり減っていくのを感じていました。

コードを書く純粋な喜び。
新しい技術に触れるときの、あのワクワクするような好奇心。

クライアントの要望という名の設計図通りに、寸分の狂いもなく歯車を動かす。僕はいつしか、ただの高性能な部品になってしまったのではないか——。

そんな心の軋むような違和感から、僕は必死に目を背けていました。通帳に刻まれる数字だけが、その違和感を麻痺させてくれる、唯一の麻酔だったのかもしれません。

価値の値段が、分からなくなった日

人生の転機とは、案外静かに、そして唐突に訪れるものです。

あれほど頼りにしていた高単価の長期案件が、クライアントの事業方針の転換によって、突然の終了を告げました。僕の収入の柱は、あっけなく消えました。

呆然としながらも、僕は次の仕事を探さなければなりませんでした。そんなとき、知人から紹介されたのが、町の片隅でひっそりと営業している、小さな個人店のウェブサイト制作の仕事でした。

提示された予算は、以前の案件の 10 分の 1 にも満たない金額。正直、ためらいました。この仕事を受けてしまえば、自分が築き上げてきた「価値」という名の砂の城が、崩れてしまうような気がしたのです。

けれど、他にすぐ見つかる当てもなく、僕はその仕事を引き受けることにしました。

最初の打ち合わせで、僕を待っていたのは、KPI やコンバージョンといったビジネス用語ではありませんでした。

店主が熱っぽく語るのは、店を始めるまでの苦労話や、常連さんとの心温まるエピソード、そして「このお店を通じて、お客さんに届けたい想い」でした。

彼の話を聞いているうちに、僕は忘れていた感覚を取り戻していました。

——そうだ、僕はもともと、こういう誰かの「想い」を形にするのが好きだったんだ。

それからの僕は、夢中でした。予算のことも、工数のことも忘れ、ただひたすらに、彼の想いをどうすればウェブサイトで表現できるかということだけを考えていました。

納品の日。

店主は、完成したウェブサイトを見て、まるで自分の子供の誕生を喜ぶかのように、目を輝かせてくれました。

そして、報酬と共に僕に差し出してくれたのは、一枚の封筒でした。中に入っていたのは、手書きの手紙。

「おおとろさんのおかげで、僕たちの長年の夢が、最高の形で叶いました。本当に、本当にありがとう」

その手紙を読んだ瞬間、僕の中で何かが弾けました。
涙が、止まりませんでした。

気づいてしまったのです。

昨年一年間で稼いだあの高額な報酬よりも、このたった一枚の手紙のほうが、僕の心をずっと、深く、温かく満たしてくれていることに。

価値とは、決して数字だけで測れるものではない。

その当たり前の事実に、僕は雷に打たれたように立ち尽くしていました。

「成長」 を測る、 3 つの問い

あの日以来、僕は自分の価値を測るための「ものさし」を変えました。

売上やフォロワー数といった、他人と比較できる「成功」の指標ではなく、昨日の自分とだけ比べる「成長」という名の、自分だけのコンパスを手にしたのです。

今、僕が日々の仕事の中で、自分に問いかけている 3 つの質問があります。それは、僕が道に迷わないための、大切な道しるべです。

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