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吃音症でもフリーランスでやっていくための 7 つの工夫

話すことが怖かった自分が、今は好きな仕事で生きている。

そんなふうに言える日が来るなんて、昔の僕には想像もできませんでした。

学生時代、クラスで当てられるのが怖かった。

社会人になっても、電話対応や打ち合わせで吃音がバレるのが恥ずかしくて、常に緊張していた。

「このままずっと誰かに理解されないまま働き続けるのか…」

そう思い詰めたことも一度や二度じゃありません(汗)

そんな僕が今、フリーランスとして自由に働き、自分のリズムで仕事をし、同じ悩みを持つ人とつながりながら前を向けているのは、いくつかの工夫を取り入れてきたからです。

この記事では、吃音症を抱えながらもフリーランスとしてやっていくための 7 つの工夫を、僕自身のリアルな体験とともにお届けします。

「自分には無理かもしれない」

そう思っている誰かの小さな希望になれば嬉しいです。


話すことが怖かったあの頃から、 いまの僕まで

「電話が鳴ると、心臓がドクンと跳ねる」

これは、昔の僕が毎日のように感じていたことだ。
受話器を取るだけで、緊張で手が震える。
最初の「あっ、あの……お世話になっております……」の一言が、どうしても出てこない。
沈黙が続くたびに相手の表情が曇っていく気がして、ますます言葉が詰まる。

僕は、吃音症を抱えて生きてきたエンジニアだ。

学生時代、授業中に先生に当てられて、声が出なくなったことがある。
「し、し、し…」と何度も同じ音を繰り返してしまい、クラスメイトの笑い声が響いたあの日の記憶は、今でも胸の奥に残っている。

社会人になっても、状況は劇的には変わらなかった。
とくに電話応対やプレゼン、打ち合わせのたびに、心と身体がすくんでしまう。
周囲からは「緊張してるの?」「もっとはっきり話して」と言われることが多くて、それがさらにプレッシャーになった。

だけど、僕は今、吃音症を抱えながらもフリーランスとして自由な働き方を実現している。

クライアントとのやりとりも、ほとんどチャットやメールで完結できるようになり、音声でのやりとりも事前に「吃音があるのでゆっくり話しますね」と伝えることで、安心して会話できるようになった。

この記事では、吃音症でもフリーランスとしてやっていけるというリアルな体験と、僕なりに編み出した 7 つの工夫を紹介したい。

もし、あなたが話すことに悩んでいたり、将来が不安で一歩を踏み出せずにいたりするなら、この文章があなたの背中を少しでも押せることを願って。

チャットやメール中心の仕事環境を選ぶ

フリーランスになって最初に意識したのは、話さなくても完結できる環境を選ぶことだった。

会社員時代は、電話や会議、朝礼など、話すことが前提の場面が多かった。
言葉が詰まれば詰まるほど、申し訳なさが募り、自信がなくなっていく。
どんなに努力しても、滑らかに話せる人と比べてしまい、「向いてないのかも」と何度も落ち込んだ。

フリーランスは違う。

自分で働く環境をデザインできる。

僕はまず、チャットでのやりとりがメインの案件を選ぶようにした。
Slack や Chatwork、Discord、Notion、メールなど、これらのツールは、僕にとって声を出さなくても意思疎通ができる自由を与えてくれた。

最初は少し不安もあった。

話せない人と思われないか。
返信が遅いと感じさせてしまわないか。
けれど実際には、クライアントも「文章が丁寧でわかりやすいですね」と言ってくれた。
むしろ、相手の話をきちんと理解して冷静に返せるのは強みだった。

音声よりもテキストのほうが、自分の気持ちや意図を正確に伝えられる。
時間をかけて考えられるし、誤解も生まれにくい。

もちろん、最初から全てをテキストにできたわけじゃない。
「なるべくチャット中心で進めたいです」と最初に伝えておくだけでも、環境はぐっと変わった。

Zoom などのオンライン打ち合わせで事前に伝えておく

どうしても話す場面を避けられないこともある。

とくに、Zoom や Google Meet などでの打ち合わせ。

最初のころは、予定が入るたびに胃がキュッとなっていた。

「この案件、やりたい。
 でも Zoom がある…どうしよう(汗)」

そんなふうに悩んだ結果、僕が選んだのは正直に伝えるという選択だった。

たとえば、打ち合わせ前のチャットでこんなふうに伝える。

「少し話すのがゆっくりになるかもしれませんが、よろしくお願いします。」

あるいは、

「吃音症があるため、言葉が詰まることがあります。
 内容はしっかり準備しておきますので、
 気にせず聞いていただけたら嬉しいです。」

最初はすごく勇気がいった。

実際に伝えてみると、ほとんどのクライアントは
「大丈夫ですよ」
「教えてくれてありがとうございます」
と言ってくれる。
拍子抜けするくらい、自然に受け入れてくれる人が多かった。

むしろ、
「そういう背景があるからこそ、文章がしっかりしてるんですね」
と言われたこともある。

伝えておくことで、こちらも変に焦らずに済む。

「詰まったらどうしよう」
「変に思われないかな」
と怯えながら話すより、心を落ち着けて自分のペースで話せるようになる。

もちろん、毎回うまく話せるわけじゃない。

事前に伝えてあるというだけで、安心感がまるで違う。

話すことが苦手でも、信頼を築く方法はたくさんある。

そのひとつが伝える勇気だった。

1 人でも進められる案件や業務スタイルを選ぶ

吃音症を抱える自分にとって、話さなくていい環境はとても大切だった。

だからフリーランスになってからは、極力 1 人で完結できる案件を選ぶようにしている。

たとえば、Web アプリやサービスの個人開発案件、スタートアップの初期フェーズの技術支援。

こういった案件は、要件がある程度固まっていて、あとは作って納品するだけというパターンも多い。

もちろん、全く人と関わらないわけじゃない。

やり取りの大部分はチャットやドキュメントで完結するし、会話ベースで細かく調整みたいな場面は少ない

また、毎日のように Zoom での朝会があるような案件は基本的に避けている。

そのぶん、自分の裁量で進められる業務スタイルにこだわってきた。

最初は
「贅沢なんじゃないか」
「そんな都合のいい案件あるのか」
と思ったけど、探してみるとちゃんと自分に合う仕事はある

むしろ、自分の得意な分野を活かしてしっかり納品すれば、安心して任せられる人としてリピートしてもらえることも多い。

話すことが苦手なら、それを補える環境やスタイルを選ぶこと。

それだけで、ずいぶんと働きやすさは変わってくる。

話すより書く力を磨く

吃音症を持つ自分にとって、話すことよりも書くことの方が、圧倒的に自由で自分らしく表現できる手段だった。

だからフリーランスになってからは、文章力を徹底的に鍛えてきた

たとえば、クライアントとのやり取りでは、Slack やメールでのコミュニケーションが基本。

口頭で言いにくいことも、丁寧な文章にして伝えればちゃんと伝わる

最初のうちは、
「長すぎたかな?」
「冷たく見えないかな?」
と不安もあった。

相手の立場に立った丁寧な文章を心がけることで、むしろ
「返信が丁寧で分かりやすい」
「信頼できる」
と言ってもらえることが増えていった。

また、提案書や仕様書、ドキュメント作成のスキルも重視するようになった。

これも話せないぶん、書く力でカバーするという意識からだった。

最近では、note などで自分の考えや経験を発信することで、新しいご縁が生まれたり、「共感しました」と言ってもらえることも。
これが一番嬉しい。

話すのが苦手だからこそ、書く力を磨くことには大きな価値がある

「うまく話せなくても、自分の言葉を持てば、ちゃんと伝えられる」

それは吃音症の自分にとって、とても大きな気づきだった。

ポートフォリオや実績で信頼を得る

話すのが苦手でも、成果物は黙って信頼を築いてくれる

フリーランスとして活動していると、クライアントとの信頼関係がとても大切になる。

吃音症の自分は、第一印象で「この人、大丈夫かな?」と不安に思われることもある。

でも、ポートフォリオや過去の実績をしっかり提示することで、その不安を払拭することができる

僕はフリーランスになってから、ポートフォリオをもうひとりの自分のように育ててきた

デザインやコード、UI/UX の設計思想、課題解決のアプローチ…など。

言葉でうまく説明できない部分も、見えるカタチにして伝える努力をしてきた。

たとえば、過去の案件をただ並べるのではなく、

「どんな課題があり、どう解決したのか」
「自分が工夫したポイント」

などを簡潔にまとめている。

クライアントからは、

「サイトを見て安心した」
「この人なら任せられそう」

と言ってもらえることも増えてきた。

また、note での発信や、メンバーシップ活動もポートフォリオの一部と考えている。

「この人はどんな価値観で仕事をしているのか」
「どんな視点を持っているのか」

そういった情報があることで単なるスキルだけではない、人となりを知ってもらえる

吃音症があると、自分の魅力を口頭でうまく伝えるのが難しい。

だからこそ、見える実績、伝わる文章、積み上げた信用こそが最大の武器になる。

同じような悩みを持つ人とつながる

吃音症は、とても孤独な悩みだ。

どれだけ身近な人でも、実際に経験していないとわからないことがたくさんある。

だからこそ、同じような悩みを持つ人と出会えたときの安心感は、言葉では言い表せないほど大きい

僕も以前は、自分の吃音について誰にも話せなかった。

「恥ずかしい」
「情けない」
「甘えだと思われるんじゃないか」

そんな思いがあったからだ。

でも、フリーランスとして活動する中で、note や SNS で自分のことを少しずつ発信するようになってから、状況が変わっていった

「自分も吃音です」
「共感しました」
「話すのが怖い気持ち、わかります」

そんな言葉が届くようになった。

不思議なもので、話すことは苦手でも、書くことなら本音を出せる

文章を通じてつながった仲間とは、声の調子や流暢さよりも価値観や生き方、ものづくりへの情熱で通じ合える。

ときには、同じような悩みを持つフリーランスと情報交換をしたり、励まし合ったりもする。

吃音症を弱さだと感じていた頃の僕には想像もできなかったが、弱さをさらけ出したことで、強くて優しい繋がりが生まれた

今では僕自身が、
「吃音でもフリーランスとして働けますよ」
と伝える立場になった。

それは、過去の自分に向けてのメッセージでもあるし、今まさに壁にぶつかっている誰かへのエールでもある。

吃音症を強みとして再定義する

フリーランスとして働く中で、ある日突然気づいたことがある。

「吃音症って、単なる短所じゃなくて、実は強みにもなり得るんじゃないか?」と。

これまでは、吃音症が自分の足かせのように感じていた。

電話対応が苦手、Zoom 会議でうまく言葉が出ない、商談で焦る自分を何度も目の当たりにした。

でも、フリーランスとしての働き方が変わったことで、その見方が 180 度変わった

まず気づいたのは、仕事のスタイルが自分に合っていることだ。

たとえば、チャットやメールでのやり取りが主流の今の環境では、吃音が全く問題にならない

電話や対面でなくても、十分に自分の意見を伝えられる。

そして、クライアントに対しても、事前に吃音症について伝えることで、理解と配慮を得られることが多くなった

「(吃音症なので)もしかしたら、少しゆっくり話すかもしれません」

と一言伝えるだけで、会話がスムーズになり緊張も減った

さらに自分の経験を活かして、他の吃音症のフリーランスをサポートできるようになった

吃音症だからこそわかる気持ちを共有することで、より強い絆を作ることができたし、また、自分自身の立場や悩みを理解してくれる仲間とのネットワークも広がった。

そして最後に、吃音症という違いこそが、他のフリーランスとの差別化要因にもなり得るということに気づいた。

世の中には、たくさんのフリーランスがいるけれど、吃音症のある人は圧倒的に少ない。

この違いをうまく活かすことで、自分のサービスや思いがより深く伝わる瞬間がある

たとえば、吃音症のある自分が提供するサービスに対して、クライアントが感じる信頼や共感は、他のフリーランスでは得られない特別な価値になる

吃音症を一つの強みとして活かし、自分だけのブランドを作ることができる。

これまで、吃音症を欠点だと思っていた自分にとって、この発見は大きな転機だった。

今では、この吃音症こそが自分らしさを形作る一部だと誇りに思えるようになった。

おわりに

吃音症というハンデは、フリーランスの世界でもときに壁となります。

だからといって、自由に働くという夢を諦める必要はありません。

僕は、話すことが得意ではない分、書くこと・伝える工夫・仕組み化に力を入れてきました。

うまく話せなくても丁寧なコミュニケーションはできるし、信頼を得ることもできる。

むしろ、その話せないという経験が相手の立場に立つ力先回りして準備する癖を育ててくれました。

この記事で紹介した 7 つの工夫は、僕自身が試行錯誤しながら身につけてきたものです。

すべての人に当てはまるとは限らないけれど、もしあなたが吃音症で悩んでいて、それでも自分らしく働きたいと思っているなら、少しでもヒントになることがあれば嬉しいです。

吃音症があっても、フリーランスという働き方は選べます。

そして、自分に合ったやり方さえ見つけられれば、強みにだってできるんです。

これからも、僕は好きにまっすぐでいたい。

話すのが遅くても、伝えるのが苦手でも、自分のペースで歩いていけばいい。

そんなふうに感じてもらえたら、この記事を書いた意味があります。

2025© おおとろ

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