申し訳なさが先に出る僕が、 値上げ交渉を文章で乗り越えた話
吃音でも送れる一通のテンプレ (Q&A 募集)
「値上げしてほしい」と思っていました。
3 年間、同じ単価で仕事を続けているクライアントがいた。
仕事の質は上がっているのに、単価は独立当初のままです。
スキルも経験も、エンジニアとしての市場価値も、あの頃とは違う。
それでも、「値上げをお願いしたい」という言葉が、どうしても口から出てこなかった。
出てくるのは「申し訳ない」という感覚でした。
いつもお世話になっているのに。
信頼してくれているのに。
長く続いている関係を、お金の話で壊したくない——。
そういう申し訳なさが、いつも先に来てしまうのです。
吃音症がある僕には、それをさらに難しくする条件がもう一つありました。
電話や対面での交渉が、苦手でした(汗)
申し訳なさは弱さではなく設計の問題だった
みなさんは、値上げをお願いしたことがありますか?
フリーランスとして働いていると、一度決めた単価をなかなか変えられないまま、時間だけが過ぎていく——そんな経験はないでしょうか。
値上げしたいという気持ちと「でも相手に悪い」という申し訳なさが、心の中でぶつかり合う。
この感覚は、弱さではないと今は思っています。
相手との関係を大切にしている証拠だし、嫌われたくないという人間としての自然な感情です。
でも、ひとつだけ問題がありました。
その申し訳なさに、設計がなかったことです。
「申し訳ない」を処理できないまま、口を開こうとするから詰まる。
電話で吃音が出て、ますます伝わらなくなる。
結局「やっぱりいいや」と引き下がってしまう——そういうループを、何度繰り返したか分かりません。
この記事は、そのループを抜け出す方法を探した僕の記録です。
「相場だとこれくらいですかね…?」 の情けなさ
少し正直に書きます。
吃音症の僕が一番苦手とするコミュニケーションが、その場の交渉でした。
値段の話は、感情が乗りやすい。
自分の価値を守るための言葉を、リアルタイムで発さなければならない。
そのプレッシャーの前で、言葉が喉元でせき止められる。
電話の向こうで相手が「いくらですか?」と聞いてくる。
頭の中には伝えたい金額があるのに、声が上ずって出てこない。
沈黙が続く。
相手が「まあ、前と同じでどうですかね」と言う。
「あ、はい…」と答えてしまう(汗)
電話を切ったあと、天井を見上げながら「またやった」と思う。
あの感覚は今でも覚えています。
フリーランス 15 年を振り返っても、単価交渉で一番後悔したのは口頭でうまく言えなかった瞬間でした。
あるとき、複数のエージェントに登録して案件を探していた頃、担当者から「おおとろさんのご経験だと、この単価はちょっと厳しいですねぇ…」と当然そうな顔で言われたことがあります(汗)
反論できませんでした。
吃音で声が出なかったのではなく、反論するための情報がそもそもなかったから。
あとになって、そのエージェントが提示した単価が市場の実態よりかなり低かったことを仲間の話で知りました。
情報の非対称性が、フリーランスの単価を静かに削り取っていく——そのことをリアルに感じた経験でした。
お願いではなく、 ご案内として送る
転機は、断り文を書く練習をしていたときでした。
吃音がある僕は、依頼を断るのも口頭では難しかった。
だから長いあいだ、断る文章を書く練習をしてきました。
角を立てない。相手を責めない。
でも、自分の境界は守る。
そういう型を丁寧に作ってきた。
あるとき気づいたのです。
「値上げを伝えることも、断り文と同じ構造でできるんじゃないか」 と。
断り文も値上げも、根っこは同じです。
「相手の期待に添えないことを、関係を壊さずに伝える」
違いは、断りが「これはできません」であるのに対して、値上げは「これからはこの条件でお願いしたい」という前向きな提案だということ。
むしろ、断りより優しいかもしれない——そう思えてから、値上げの一通を文章で送ることへの抵抗が変わりました。
口頭だと感情が乗りすぎて「お願い」になってしまいます。
でも文章なら「ご案内」として送れる。
「申し訳ありません」から始めるのをやめ、「今後もご一緒したいからこそ、正直にお伝えします」に変えるだけで、自分の心の重さが大きく変わりました。
値上げ交渉文の 4 段構成
ここからは、僕が実際に使っている値上げ交渉文の構成と、コピペの下地になるテンプレを公開します。
断り文の型を磨いてきた経験から、値上げ交渉にも「相手を責めない・自分も守る・次の線引きをしやすくする」の 3 軸が機能することが分かりました。
その軸をベースに、値上げ交渉用に設計した 4 段構成がこちらです。
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