1.Consulting / Advisory ④WPPMedia(以前のGroupM)さん
C Space Studioに登壇したWPP MediaのUSチーフ・ビジネス・オフィサーを務めるリチャード・ハーテル(Richard Hartell)氏
AIファーストのマーケティングは「効率」の先へ
WPP Mediaさんが示す次世代マーケティング──Human-Led AI時代の5つの突破口
AIはツールではなく「ビジネスOS」になった
世界最大級の広告・マーケティンググループ WPPのメディア部門である
WPP Media のUSチーフ・ビジネス・オフィサーRichard Hartell さnは、現在の企業のAI導入状況を「スペクトラム(幅)」として説明します。
WPP Mediaさんは以前のGroupMの社名の方が認知度が高いかもしれません。
AIネイティブ企業、慎重に導入する企業、まだ懐疑的な企業。
この差は、技術理解というよりも、AIをどこまでビジネスの中心に据えるかという戦略の違いから生まれています。
AIを「効率化ツール」で終わらせない
現在、多くの企業がAIに期待しているのは
・制作コストの削減
・広告制作スピードの向上
といった効率化です。
もちろん重要ですが、それだけではAIの価値の半分しか活用していないと言えます。
Hartellさんは次のように指摘していました。
「私たちは効率性に焦点を当てすぎています。今こそ“成長(Growth)”と“有効性(Effectiveness)”に注目すべきです。」
AIの本当の価値は、広告制作の効率化ではなく、ビジネスそのものを設計できることにあります。
消費者データを分析し、潜在ニーズを予測し、それを基に新しい商品やサービスを設計する。
AIはマーケターを、単なるコミュニケーション担当からプロダクト戦略を担う存在へと変える可能性を持っています。
マーケティングファネルは終わった
AI時代に入り、もう一つ大きく変わった概念があります。
それがマーケティング・ファネルです。
従来は 認知 ⇒ 検討 ⇒ 購入 という段階的なプロセスが前提。
しかし、AIアシスタントやチャット型インターフェースが普及した世界では、発見から購入までが瞬時に完結することも珍しくありません。
この新しい消費行動を説明するモデルが、フライホイール(Flywheel)。
直線ではなく、顧客体験が回転し続ける循環型エコシステムです。
その中心にあるのが、WPPが開発したAIプラットフォームWPP Openです。
このような統合基盤によって、ブランドは顧客体験をリアルタイムで更新し続けることができます。
AI時代のクリエイティブは3つの段階
AIがクリエイティブを奪うのではないかという議論があります。
しかし、HartellさんはAI時代のクリエイティブを3つの段階で説明していました。
Spark(ひらめき)
最初のビジョンを描く段階。何を作るかという意思は、人間の役割です。
Work(作業)
AIとの対話による制作プロセス。
生成AIによる映像制作も、実際は人間との試行錯誤の連続です。
Taste(審美眼)
最終的な判断。ブランドや文化に合うかを判断するのは人間です。
つまりAI時代の基本は Human in the loop
人間が常に意思決定に関与することです。
「不気味な谷」を越えたAIクリエイティブ
AI生成コンテンツにはかつて
「不気味な谷(Uncanny Valley)」という問題がありました。
人間に似すぎているが微妙に違うことで、違和感が生まれる現象です。
しかし2026年の現在、この問題は新しい段階に入っています。
AIが人間の模倣ではなく、AIにしかできない表現を提示したとき、
それは違和感ではなく、新しいエンターテインメントとして受け入れられ始めています。
AIは人間の代替ではなく、想像力を拡張するパートナーになりつつあります。
注目技術:Gaussian Splatting
CES 2026で注目された技術の一つが
Gaussian Splatting(ガウス・スプラッティング)です。ちょっとわかりにくい表現と言い回しでしたが、AIとCG技術を組み合わせ、2D画像から瞬時に3D空間を生成できる技術と意味するようです。
この技術により、ブランドは
・3Dコンテンツ制作
・仮想空間のビジュアル生成
・リアルタイム映像制作
を高速に行えるようになります。
つまり、社会やトレンドに対して、リアルタイムにクリエイティブを生成するマーケティングが可能になります。
AI-FirstはHuman-Lastではない
WPPのAI戦略の背景には
・Googleとの大型パートナーシップ
・数十年のマーケティングデータ
・膨大なデータポイント
という巨大な基盤があります。
しかし、どれほど技術が進化しても最後に残る問いはシンプルです。
AIを使って、私たちはどんな世界を作りたいのか。
AI-FirstとはHuman-Lastではありません。
それはむしろ
Human-Led at Scale
人間の意思をAIで拡張するという考え方です。
AIという翼を手に入れた今、その方向を決めるのは、やはり人間の知性と意志なのだと思います。
Havasさんのインタビューでも同様ですが、皆さん、クリエイティブへのリスペクトと生成AIとのバランスを踏まえた方向性が見えてきているようです。Havasさん、WPPさんともに、欧州の広告会社さんならではの発想なのかもしれませんが、アメリカの広告会社、クライアントとの歩調の合わせ方も心得てビジネスをされているように感じます。
日本市場に置き換えてみると、今回のインタービューには、有益なアイディア、ものの見方が多数含まれており、とても参考になりました。
WPPさんは、CES2026終了後、1月21日に、グループで「振り返り」として以下のウエビナーを実施していました。
当コラムも「振り返り」と「復習」が大事だと思い、連載で展開しています。
約50分弱の尺ですが、広告会社の振り返り、日本でも広告会社さん主導で、帰国後に、自社のクライアントさんのご紹介でも良いと思いますが、オープンのウエビナーで、実施した方が良いかもしれません。
CESは、異業種コラボの祭典なので、自動車業界やデジタル業界の担当者が、縦割りの業界目線だけで、ラスベガス視察に行く時代はすでに終わっているといっても過言ではありません。
WPPの皆さんも複数部署の方々が視察してきた内容を多角的に解説する設定になっています。ここからも学ぶ点はたくさんあるようです。

