【なぜ実写合成はノードベース?】Vol.1:After Effectsが合成に向かない理由
映像の演出をメインにやりつつ、ときどきフリーランスのコンポジターとしてビッグバジェット案件にも入ることがあります。
After Effects(以下AE)はモーショングラフィックスやちょっとした素材づくりには便利なのでよく使いますが、「実写合成の最終コンポジット」として使うことはほぼありません。
AEが使えるからコンポジットもいけるよね?と思われがちですが、実写合成のゴール設定とワークフローを考えると、そこには大きな差があります。なぜノードベースのソフト(主にNuke)を選ぶのか、AEとの違いを含めて具体的に書いていきます。
ノードベースの最大の利点:再現性と論理性
Nukeに代表されるノードベースの合成ソフトでは、合成のプロセスをツリー構造で視覚化できます。誰が開いても処理の流れが追いやすく、途中で別の担当に引き継いでも問題が起きにくいのが大きなメリット。ワークフローがオープンで、ブラックボックス化しにくいのです。
一方、AEはレイヤー構造に加え、プリコンポーズ・トラックマット・マスク・エフェクト・エクスプレッション……と複雑な階層がどんどん増えていきます。ちょっとした修正でも手間がかかりやすく、時間が経つほど「これ何してたんだっけ?」と混乱しがちです。
余談ですが、以前クライアントから「プロジェクトファイルもください」と言われ、しぶしぶ追加料金をいただいて渡したことがありました。その中身はエクスプレッションでガチガチに構築されていて、正直なところ再利用は難しかったと思います。
さらに、CGのマルチパス(AOV)合成のようなチャンネル単位での処理が容易で、調整も柔軟です。ノードベースなら、Diffuse・Specular・MotionVector・Z Depth などの各チャンネルを個別に調整しながら合成できます。AEでも一応可能ではありますが、レイヤー構造との相性が悪く、チャンネル管理が煩雑。トライ&エラーを繰り返すには向いていません。
次回以降の予定トピック(仮タイトル)
Vol.2:「グレイン/デグレイン」がなぜ必須か 〜AEだとほぼ無視される〜
Vol.3:スマホ画面の差し替えがバレる理由 〜AEだと気付きにくい罠〜
Vol.4:レンズの歪みとボケの話 〜撮影の知識〜
Vol.5:AEとNukeの「3Dスペース」の決定的な違い 〜AEの3Dは3Dじゃない?〜
「AEではできるけど、リアルな合成では通用しにくいポイント」を、今後も掘り下げて紹介していく予定です。
おわりに
AEは大好きなツールですが、「どこまで求めるか」「何をゴールにするか」で選ぶべきソフトは変わってきます。
最近はDaVinci ResolveにFusionが標準で付いてくるので、「ノード操作を試してみたい」という方にはちょうどいいかもしれません。ただし、業界標準はやはりNuke一択。Fusionはあくまでノードベースの考え方を身につけるための入門編として活用するといいと思います。
少しでも「なるほど」と思っていただけたら、次回もぜひ読みに来てください。
質問や「ここってどういうこと?」みたいなことも、コメント欄でお気軽にどうぞ!
