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妻は声の印象が激変する人だった。

今、無性に聞きたい声があります。
あのころの僕に、今の後悔を伝えたい……。


妻は8歳年上の放送作家で、会社の最古参の1人でした。出会いは僕が入社の挨拶に行ったとき。

妻の第一印象は「こわそう」でした。

履歴書を見るなり「男なのに字が綺麗だな」と一言。ディスられたのか、褒められたのか。リアクションに困ると思いません?

後々聞くと、妻は自分の字が好きではなかったそうです。曰く「男みたいな字」だと。

……そうそう、彼女は妙に負けず嫌いでした。

その妻は、自分の声もあまり好きではありませんでした。

確かに、普段の声はまあまあ低め。

でも、僕は密かに妻の声が好きでした。彼女はある限られたシチュエーションで、声が半オクターブくらい上がるんです。

妻はよく会社に泊まり込み、原稿を書いていました。真夜中になると、当時ペーペーだった僕にコンビニへの買い出しを頼むんです。

クローン病という消化器系の難病だった彼女は、食べられないものだらけ。なので「なんか適当に」なんて言われると、難しかった笑

しかし、うまく選べたとき――。

僕だけに向ける「ありがとー!」の声が、最高にうれしかったんです。マジ天使。今思うと、最初に妻を「かわいい」と思ったのは、この瞬間だったかも。

あとは、ガラケーに録音されていた留守電の声。

半オクターブ上、よそ行きの声です。これは留守電にならないと聴けません。画面に僕の名前が表示されたら、普段の声で電話に出るので。

(コール音が途切れて)
「はい、〇〇(旧姓)です。ただいま電話に出ることができません。ご用の方は……」

これが聴けた日はラッキー。

極めつきはカラオケです。

買い出しへのお礼も、留守電も聴けるのは一瞬だけど、カラオケは何分も堪能できるわけですよ。

よく歌っていたのは Lindberg の『今すぐKiss Me』です。原調をファルセット混じりで。まさに、マジ天使の確変タイム!

ただ、妻は「歌える曲があまりない」とカラオケには行きたがらなかったので、歌声を聴ける機会はレアでしたが……。

妻が亡くなって8年。

残念なことに、映像に残っているのは普段の声だけです。僕が好きだったマジ天使な声は、記憶の中でしか再生できません。

どうして録音なり、録画なりしなかったかなあ、過去の僕よ。

今、無性に君の声が聞きたい。
まっすぐに I love you so ♫

なんか、アラフィフのおっさんがキモいこと書いてしまったでしょうか。さーせん。

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