僕の理屈ミサイルが、まさかの場面で役立った。
昔から、よく「とっつきにくい」と言われます。
娘からは「正しさは、時に凶器になるんだよ」、
息子からは「何考えてるかわかんなくて恐い」と。
おいおい、お父さんに向かってなんてこと(泣)
しかし、思い当たる節はあるのです。
おそらく、僕には〝理屈ミサイル〟なる兵器が実装されています。
違和感や矛盾を察知すると、自動で迎撃。裏表のない性格ゆえに、素直な意見が飛んでいくのです。また、感情よりも理屈が先に立つから、リアクションは小さめ。だから、表情が読みにくい。
悪気はないけど、発射されてしまうミサイル。
ドシュウゥゥゥッ!キィィィン!
好んで装備したわけではありませぬ。
いつからか、そうなっていたのです。
平和に、普通に、穏やかに生きたい。
そう願ってはいるけれど、飛んでいく……。
僕はこんな悲しい兵器を持つ自分を、ずっと「変えたい」と思ってきました。
ところが、先日、理屈ミサイルが2度も役に立ったんです。
あれは実家近くの公園を歩いていた時のこと。向こうから、上品そうなおばあさんが僕の方へと近づいてきたんです。
(道を尋ねたいのかな?)
そう思ってその場で止まる僕。すると……、
「あのう、ハレルヤって言ってみてください」
「は?」
「ハレルヤ」
予想外。ヘンデルのメサイアが脳内再生されます。
「えーと、宗教関係ですか?」
「いえ、違います。唱えると幸せになるんですよ」
ハイ、ミサイル発射。
「そもそもハレルヤって、ヘブライ語で主を讃えよ的な意味でしょ。宗教と違いますか」
「……!」
おばあさんは何とも言えない半笑いを浮かべ、後ずさっていったのでした。すごすごと。
悪気はなかったんですよ。今、この場で言います。
ハレルヤ。
もう1件。
ハレルヤ事件の数日前、僕のスマホに見知らぬ番号から電話がかかってきました。終活ムービーの依頼と思って出てみたら……、
なんと警察だと言うわけですよ。
「捜査二課の〇〇と申しますが、せきさんの携帯でよろしいでしょうか」
「……はあ」
「今、資金洗浄の事件を扱っているのですが、捜査線上にせきさんの名前が出ておりまして」
「……はあ」
「それで、きょう秋田県警までお越しいただくことは可能でしょうか」
「……はあ」
お気づきだろうか。
初手から僕のミサイルが発射されていたことに。
何を言われても「……はあ」だけ。
だって、覚えがなさすぎる。
捜査二課なのに、どうして秋田県警なのか。
というか、どうして電話で知らせてくるのか。
逃げてしまうと考えないのか?
「……はあ」(ため息)
次の瞬間、電話は切られたのでした。
相手に名前を知られていたので、警察に通報しておきました。聞くと、よくある詐欺の手口だそうです。わざと遠方の警察を指定し、行けないと答えさせて個人情報を引き出そうとしてくるのだとか。
「せきさんの態度を見て、バレてると感じたんでしょうね」
うーむ、見抜くより先に迎撃してしまっただけなのだが。
最近、同僚から「丸くなりましたね」と言われました。
クリエイターとしての尖りがなくなったという意味ではなく、人として優しくなったと。
「変わりたい」と思っている僕には、嬉しい言葉でした。でも、予期せぬ展開に出くわしたら、まだ反射的に理屈ミサイルが発射されてしまうようです。
修行が足らんな……。
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