【技術士 建設部門】防災・国土強靱化 必須科目I 論文の論点と書き方
こんな人におすすめ
必須科目Iの防災テーマで、何から書けばいいか骨格をつかみたい
「課題を多面的に」と言われても、観点がうまく分解できない
流域治水や事前防災といった施策名を、論文でどう使うか迷っている
受注者一辺倒の答案から一歩抜け出したい
この記事でわかること
なぜ防災・国土強靱化が必須科目Iで最頻出なのか
課題構造を3つの軸で分解して多面性を担保する型
押さえるべき背景施策(国土強靱化基本計画・流域治水・事前防災)と4部構成への流し込み
技術士第二次試験 建設部門の必須科目I(記述式・答案用紙3枚=1,800字)で、もっとも繰り返し問われてきたのが「防災・国土強靱化」の系統です。
出題源は国土交通省の重点施策と白書にあり、近年は気候変動による災害の激甚化・頻発化と、能登半島地震に代表される大規模地震が交互に取り上げられています。
この記事は、防災・国土強靱化を必須科目Iで書ききるための「課題構造の捉え方」と「論述フレーム」を整理する入口です。
年度別の細かい出題分析や論文全体の書き方手順には踏み込まず、ここでは検索で着地した受験者が最初に押さえるべき骨格に絞ります。
なお筆者は、地方自治体の土木職(発注者)として工事の発注・監督・積算審査に携わり、道路・河川・都市計画の3科目で建設部門に合格しています。
技術一辺倒になりがちな防災の論文に、発注者視点の制約条件をどう織り込むかも、後半で具体的に触れます。
建設部門は「必須科目I+選択科目」の組み合わせで合否が決まります。全受験者共通の必須科目I 模範解答集(R03-R07+R8予想)がまず1冊目。あなたの選択科目の模範解答集は建設部門もくじから選べます(単品を1本ずつ買うより約8割お得)。
なぜ防災・国土強靱化が最頻出なのか
必須科目Iは「課題遂行能力」を測る設問で、I-1/I-2の2問から1問を選択し、全受験者共通で課されます。
設問構成は、(1)多面的な課題抽出、(2)最重要課題の解決策、(3)新たに生じるリスクと対策、(4)技術者倫理・社会の持続可能性、という4部構成です。
防災・国土強靱化がこのフレームと相性が良いのは、論点が多面的に分解しやすいからです。
気候変動による激甚化、インフラの老朽化との重なり、財源と担い手の制約、住民の避難行動という社会的側面まで、ハードとソフトの両面で「複数の観点」を自然に出せます。
出題者が問題解決能力を見たいテーマとして選びやすい構造になっているわけです。
ただし「毎年防災が出る」わけではありません。人口減少・老朽化・脱炭素・国土形成・DXの各系統が交互に出るため、防災に張りつつも6系統を横断して準備するのが現実的です。
課題構造を3つの軸で分解する
論文で点を取る受験者は、テーマを漠然と「防災が大事」と書かず、課題を構造化して提示します。防災・国土強靱化なら、次の3軸で分けると多面性が担保できます。
ハード/ソフトの軸:堤防・施設の整備(ハード)と、ハザード周知・避難計画・土地利用規制(ソフト)の両輪。どちらか一方では限界がある、という論理が立てやすい。
外力の変化の軸:気候変動による降雨量増大・災害の激甚化頻発化。「過去の計画規模を超える外力」をリスクとして提示する根拠になる。
制約条件の軸:財源の制約と担い手不足。すべての箇所を一度に守れない以上、優先順位付けと重点投資が避けられない、という現実的な視点。
この3軸を頭に入れておくと、設問(1)の「多面的な課題抽出」で観点が散らからず、(2)の「最重要課題」へ自然に絞り込めます。
背景施策を正確に押さえる
課題抽出と解決策の説得力は、施策名を正確に使えるかで大きく変わります。防災・国土強靱化で最低限おさえたい背景は次のとおりです。
国土強靱化基本計画
大規模自然災害に対し、人命を守り、国家・社会の重要な機能を維持し、迅速に復旧する強靱な国土づくりの基本方針です。人命の保護・致命的被害の回避・被害最小化・迅速な復旧の4つを基本目標に置きます。
流域治水
河川管理者だけでなく、集水域から氾濫域までの流域に関わるあらゆる関係者が協働して水害リスクを軽減する考え方です。
気候変動下で「ハード整備の限界」を補う論拠として有効で、遊水地・雨水貯留・土地利用規制・避難体制といったハードとソフトの組み合わせを解決策の柱に据えると一貫性が出ます。
事前防災
被害が起きてから対応するのではなく、被害を未然に防ぐ・最小化する予防的な投資と計画です。
R06 I-2では能登半島地震を例に、DXを活用して事前の防災・減災と復旧・復興を効率化することが問われており、事前防災はその柱の一つでした。
施策名は「だいたいの意味」で書かず、定義を一言で添えられる状態にしておくと、専門知識の正確さが伝わります。流域治水を「ダムを増やすこと」と誤って要約するような答案は減点されやすいので注意してください。
論文全体の構成や添削観点をひととおり確認したい場合は、サイトの記述式論文の書き方ガイドもあわせてどうぞ。
必須科目Iの6系統と年度別出題の整理はこちらにまとめています。
防災・減災の論点を用語単位で網羅したい場合は、防災・減災の論点キーワード集もサイトにまとめています。
発注者視点を一文織り込む
ここで、発注者の立場から一つ補足します。
受注者側の受験者は技術的対策に寄りがちですが、発注者の現場では「どの箇所を先に守るか」という優先順位付けと予算配分、危険区域に暮らす住民の避難計画と合意形成、用地確保のための行政調整こそが防災事業の律速になります。
設問(2)の解決策や(4)の社会の持続可能性で、こうした制度・合意形成の論点を一文でも織り込むと、技術一辺倒の答案と差がつきます。
防災・国土強靱化は最頻出ゆえに対策の差が出にくいテーマでもあるからこそ、現実的な制約条件の扱いが効いてきます。
4部構成への落とし込み
最後に、課題構造と施策を必須科目Iの4部構成へどう流すかを骨格で示します。ここでは型だけ確認してください。
(1)課題抽出:上の3軸(ハード/ソフト・外力の変化・制約条件)で複数の課題を提示する。
(2)最重要課題と解決策:制約条件を踏まえ「優先順位付けと重点投資」を最重要に置き、流域治水のようにハードとソフトを組み合わせた解決策を述べる。
(3)新たなリスクと対策:重点配分すれば、選ばれなかった地域の取り残し・住民合意の難しさという副作用が生じる。これを新たなリスクとして提示し、リスクコミュニケーションや段階的整備で対策する。
(4)技術者倫理・持続可能性:公衆の安全を最優先する倫理と、将来世代まで持続する防災投資・地域づくりの視点で締める。令和8年度から明文化されるステークホルダー合意・持続可能な成果とも接続しやすい。
設問の動詞を読み違えないことが最優先です。「事前防災」を問われているのに復旧・復興(事後)を主軸にする、「大規模地震」を問われているのに風水害の話を中心に据える、といったズレは論点の的外れとして大きく失点します。
施策名の正確さ、課題の構造化、そして発注者視点を含む現実的な制約条件の扱いで、平凡な答案から一段抜け出すことを目指してください。
さらに深く学ぶには
この記事で示したのは、防災・国土強靱化を書ききるための「骨格」までです。実際の試験では、設問文の動詞をどう読み、3軸の課題をどの順で並べ、1,800字をどう配分するかという「答案そのもの」の精度が合否を分けます。
そこで、設問分解からフル模範解答までを揃えたのが、必須科目Iの模範解答集です。過去5年分に加え、令和8年度の予想問題まで収録しています。
防災・国土強靱化を含む過去問について、設問の読み解き・課題抽出・最重要課題の絞り込み・新たなリスクまで、発注者視点の論点を織り込んだ完成答案として読めます。
この無料記事で型をつかんだら、次は「実際に書かれた答案」で間合いを確かめてください。
よくある質問
Q. 防災・国土強靱化は必須科目Iでどのくらい出ますか?
A. 建設部門の必須科目Iは「防災・減災」と「人口減少・老朽化・脱炭素」など複数系統が交互に出題され、防災・国土強靱化は最頻出の系統です。
過去にもR01 I-2の自然災害に対する防災・減災、R05 I-1の大規模地震(関東大震災100年)、R06 I-2の能登半島地震等を踏まえた事前防災と、ほぼ年度をまたいで問われています。
他の系統が出る年もあるため、防災一本に絞らず6系統を横断して準備するのが安全です。
Q. 流域治水は論文でどう使いますか?
A. 流域治水は、河川管理者だけでなく集水域から氾濫域まで流域全体のあらゆる関係者が協働して水害を軽減する考え方です。
論文では「気候変動による降雨量増大に対し、堤防等のハード整備だけでは対応しきれない」という課題提示の根拠として置き、遊水地・雨水貯留・土地利用規制・避難体制といったハードとソフトの組み合わせを解決策の柱に据えると一貫性が出ます。
Q. 事前防災と事後対応はどう書き分けますか?
A. 設問が「事前防災」を求めている場合、被害が起きる前のリスク評価・優先順位付け・予防保全的な投資に論点を寄せます。具体的にはハザード評価、危険箇所の優先度判定、避難計画と住民合意、財源の重点配分などです。
復旧・復興(事後)の話を主軸にすると設問とずれるため、設問の動詞(「未然に防ぐ」等)を読み、軸を事前側に固定することが重要です。
Q. コンピテンシー改訂(令和8年度)は防災テーマにどう影響しますか?
A. 令和8年度からデータ活用・ステークホルダー合意・持続可能な成果・文化的価値の尊重が明文化されます。
防災テーマでは、ハザード情報のデータ活用、住民や関係機関との合意形成、長期的に持続する防災投資、地域の歴史的環境への配慮として、設問(4)以降に反映しやすい論点です。
建設部門のほかの記事・科目別 模範解答は「建設部門もくじ」から一覧できます。
