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【技術士 建設部門】低炭素社会・環境保全 必須科目I 論点キーワード

こんな人におすすめ

  • 必須科目Iの脱炭素・環境保全テーマで、答案に引ける用語・施策名をまとめて押さえたい

  • グリーンインフラ・NbS・Eco-DRRの関係がいまひとつ整理できていない

  • 「課題の背景」と「解決策の根拠」を、正確な計画名で書けるようにしたい

  • キーワードを丸暗記ではなく、課題と解決策に接続できる形で覚えたい

この記事でわかること

  • 低炭素社会・環境保全が必須科目Iで問われる理由

  • 答案の土台になる【現状・背景】の論点キーワード(脱炭素・自然環境・資源循環の3系統)

  • 解決策の根拠になる【計画・政策】の論点キーワード(地球温暖化対策計画・GX2040ビジョン・グリーンインフラ推進戦略2023ほか)


技術士第二次試験 建設部門の必須科目I(記述式・答案用紙3枚相当=1,800字)は、国土交通行政の重点施策と国土交通白書を出題源とします。

「低炭素社会・環境保全」はこのテーマの中でも出題頻度が高く、2021年度に循環型社会、2022年度にCO₂削減・吸収が正面から問われました。

2026年度からは第6次社会資本整備重点計画が始まり、重点目標IIIに「インフラ分野が先導するグリーン社会の実現」が掲げられています。

脱炭素・自然共生・資源循環という3本の柱は計画全体を貫くテーマであり、今後も出題が続くと考えるべきです。

国土交通省の環境行動計画(2025年6月改定版)は、我が国のCO₂排出量の約7割を国土交通分野が占めると明記しています。

インフラを建設・維持管理・運用する立場にある建設技術者が環境課題に対してどう応答するかは、試験委員が直接問いたいテーマです。

この記事では、論点キーワードを「脱炭素」「自然環境・生物多様性」「資源循環」の3系統に整理したうえで、計画・政策とのつながりを示し、答案への組み込み方の骨格を解説します。

課題抽出から解決策へ流す書き方の型は入口記事と必須科目Iのテーマ整理ハブに譲り、ここでは「知識の引き出し」を増やすことに絞ります。

なお筆者は、地方自治体の土木職(発注者)として工事の発注・監督・積算審査に携わり、道路・河川・都市計画の3科目で建設部門に合格しています。

建設部門は「必須科目I+選択科目」の組み合わせで合否が決まります。全受験者共通の「必須科目I 模範解答集(R03-R07+R8予想)」がまず1冊目。

あなたの選択科目の模範解答集は「建設部門もくじ」から選べます(単品を1本ずつ買うより約8割お得)。



なぜ低炭素・環境保全が必須科目Iで問われるのか

必須科目Iは「課題遂行能力」を測る設問で、(1)多面的な課題抽出、(2)最重要課題の解決策、(3)新たに生じるリスクと対策、(4)技術者倫理・社会の持続可能性という4部構成です。

「低炭素社会・環境保全」が問われる理由は、この4部すべてに対応する課題と解決策が建設分野に豊富に存在するからです。

(1)の課題として挙がるのは、気候変動の進行、生物多様性の損失、廃棄物の不適正処理などです。

IPCC第6次評価報告書は、大幅な排出削減がなければ21世紀中に温暖化が1.5℃・2℃を超える見込みが高いと結論づけており、建設分野もこの科学的知見を受けて対応が求められています。

(2)の解決策は、脱炭素技術・グリーンインフラ・建設リサイクルという三本柱で組み立てられます。

(3)のリスクは、低炭素材料のコスト増加、再生可能エネルギー導入に伴う生態系への影響、リサイクル材の品質管理難などが典型です。

(4)の締めでは、将来世代への環境負荷の転嫁を避ける技術者の倫理的責務を論じます。

作問者は社会資本整備重点計画の重点目標を念頭にテーマを選ぶとされており、第6次計画の「グリーン社会の実現(重点目標III)」は試験期間中ずっと意識すべき枠組みになります。

現状・背景の論点キーワード

課題の前提になる「動かしがたい現状」です。

答案の(1)課題抽出で使う材料になります。

脱炭素・自然環境・資源循環の3系統で整理します。

【脱炭素系統】

  • 2050年カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、排出を全体として実質ゼロにする目標です。我が国は2020年10月に宣言し、2030年度46%削減(2013年度比)、2035年度60%削減、2040年度73%削減という中間目標を地球温暖化対策計画(2025年2月改定)で定めています。答案では「2030年46%・2035年60%・2040年73%・2050年ネットゼロ」と数字をセットで示すと説得力が増します。

  • パリ協定:2015年12月にCOP21で採択された多国間の国際協定です。産業革命以前と比べた世界平均気温の上昇を「2℃より十分低く」抑えるとともに「1.5℃に抑える努力を追求する」こと、今世紀後半に排出と吸収を均衡させることを国際条約として初めて明示しました。

  • GX(グリーントランスフォーメーション):化石燃料中心の経済・社会・産業構造を、クリーンエネルギーへ転換し、産業競争力の向上につなげて経済社会システム全体を変革する取組です。建設分野では、GX建設機械(電動式・水素式)の導入や低炭素建材(低炭素型コンクリート・グリーンスチール)の普及が具体的な取組として位置づけられています。

  • まちづくりGX:気候変動対応や生物多様性の確保、Well-beingの向上に大きな役割を持つ都市緑地の多様な機能を発揮させ、都市におけるエネルギーの面的利用を推進する取組です。量と質の両面での都市緑地の確保を通じて生息・生育空間の保全・再生・創出を進め、生物多様性の確保にもつながるアプローチとして位置づけられています。

  • ブルーカーボン:藻場や干潟などの海洋生態系の生物を通じて吸収・固定される炭素のことです。2009年にUNEPの報告書で命名されました。第6次社会資本整備重点計画では「ブルーインフラ(藻場・干潟等及び生物共生型港湾構造物)の保全・再生・創出」が明記されており、吸収源対策の論拠として使えます。

【自然環境・生物多様性系統】

  • グリーンインフラ:社会資本整備や土地利用等において、自然環境が有する多様な機能(生物の生息地提供・良好な景観形成・気温上昇の抑制・CO₂吸収など)を活用し、持続可能な国土づくりを進める取組です。令和5年(2023年)9月に「グリーンインフラ推進戦略2023」が策定され、ネイチャーポジティブやカーボンニュートラルなどの社会情勢の変化を踏まえた全面改訂が行われています。

  • NbS(Nature-based Solutions、自然を活用した解決策):社会・経済・環境課題に効果的かつ順応的に対処し、人間の幸福と生物多様性の恩恵を同時にもたらす、生態系の保護・保全・回復・持続可能な利用・管理のための行動です。グリーンインフラはNbSのアプローチの一つに位置づけられます。

  • Eco-DRR(生態系を活用した防災・減災):生態系の保全・再生を通じて防災・減災や生物多様性保全などの地域課題を複合的に解決しようとする考え方です。森林・湿原・干潟などの生態系機能を積極的に活用して社会の脆弱性を低減し、気候変動緩和策としての効果も期待できます。

  • ネイチャーポジティブ(自然再興):自然生態系の損失を食い止めて回復させていくことです。「2030年ネイチャーポジティブ」は「生物多様性国家戦略2023-2030」(令和5年3月閣議決定)の中核目標として掲げられています。

  • 30by30:2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする国際目標です。2022年末のCOP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の主要ターゲットに位置づけられています。2024年8月現在、陸地の約20.6%・海洋の約13.3%が保護地域として登録されており、目標達成に向けてさらなる拡充が必要な状況です。

【資源循環系統】

  • 建設廃棄物・建設リサイクル法:建設廃棄物は産業廃棄物の中でも大きな割合を占め、不法投棄された産業廃棄物の件数では建設系廃棄物が7割超を占めています(2023年度)。建設リサイクル法(2000年制定)は、コンクリート・アスファルト・コンクリート・木材という特定建設資材の分別解体と再資源化を義務づけます。建設廃棄物全体の再資源化・縮減率は2000年度の約85%から2018年度には約97.2%へと大幅に向上しています。

計画・政策の論点キーワード

解決策の方向性は、国の計画・政策に沿わせると説得力が増します。

名称・策定時期・キーフレーズをセットで覚えるのがコツです。

  • 地球温暖化対策計画(2025年2月改定):地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画です。2035年度60%削減・2040年度73%削減(2013年度比)という中間目標を新たに設定し、「排出削減と経済成長の同時実現」を掲げています。

  • GX2040ビジョン(2025年2月策定):長期的な脱炭素政策の指針です。建設分野では公共工事における率先取組として、GX建設機械の導入・普及、低炭素型コンクリート・グリーンスチールといったグリーン建材の積極的な活用方策の検討が求められています。

  • グリーンインフラ推進戦略2023(2023年9月策定):2019年の推進戦略を全面改訂した国土交通省の取組方針です。グリーンインフラが「概念の定着期」から「本格的な実装フェーズ」へ移行することを宣言し、官と民が両輪となってあらゆる分野・場面に普及・ビルトインすることを目標とします。

  • 国土交通グリーンチャレンジ:2050年カーボンニュートラルを念頭に2030年度までの10年間に国土交通省が重点的に取り組む政策パッケージです。①省エネ・再エネ拡大、②グリーンインフラを活用した自然共生地域づくり、③交通・物流の電動化・DX、④港湾・海事のカーボンニュートラル、⑤インフラのライフサイクル全体での脱炭素と循環型社会の実現、という柱を掲げています。

  • 生物多様性国家戦略2023-2030(2023年3月閣議決定):「2030年ネイチャーポジティブ」を達成するための5つの基本戦略と行動計画を掲げた政府の法定計画です。30by30目標の達成、企業の情報開示(TNFD連携)、生態系サービスの可視化も盛り込まれています。

  • 社会資本整備重点計画(第6次)重点目標III:「インフラ分野が先導するグリーン社会の実現」のもと、2050年カーボンニュートラルの実現・自然共生社会の実現・資源循環型社会経済システムの構築という3つの「目指す社会の姿」が設定されています。2026年度からの計画期間にわたり、試験の出題根拠として直接引用できる枠組みです。

計画名の混同に注意してください。

「グリーンインフラ推進戦略2023」は国土交通省の推進方針(2023年改訂)、「生物多様性国家戦略2023-2030」は生物多様性基本法に基づく政府の基本計画(2023年閣議決定)、「地球温暖化対策計画」は地球温暖化対策推進法に基づく総合計画(2025年改定)です。

三者は守備範囲が異なるため、「誰が何のために策定したか」を整理して使い分けてください。

論文全体の構成や添削観点をひととおり確認したい場合は、サイトの記述式論文の書き方ガイドもあわせてどうぞ。

必須科目Iの6系統と年度別出題の整理はこちらにまとめています。

発注者視点で一段差をつける

ここで、発注者の立場から補足します。

受注者側の受験者は技術的対策(低炭素建材の適用・グリーンインフラの設計)に寄りがちです。

しかし発注者の現場では、次の3点こそが環境施策を実際に動かす律速になります。

一つ目は、総合評価落札方式での環境加点の設計です。

CO₂削減量の定量評価やグリーンインフラ採用の加点を仕様書に明記することで、市場全体の行動変容を促せます。

二つ目は、低炭素材料の初期費用増大を吸収するための積算基準の整備と予算確保です。

低炭素型コンクリート等は現時点でコストが高く、発注者側が調達基準を整えなければ普及は進みません。

三つ目は、グリーンインフラの多機能性(防災・生物多様性・景観・CO₂吸収)を発注仕様書に明示することです。

多機能性を定量評価の対象として位置づけることで、設計段階での選択肢として扱われるようになります。

(2)の解決策や(4)の持続可能性の段落でこうした制度・調達の論点を一文でも織り込むと、技術一辺倒の答案と差がつきます。

さらに深く学ぶには

この記事で示したのは、答案に引ける「キーワード」までです。

実際の試験では、設問文の動詞をどう読み、これらのキーワードをどの順で組み立て、1,800字をどう配分するかという「答案そのもの」の精度が合否を分けます。

そこで、設問分解からフル模範解答までを揃えたのが、必須科目Iの模範解答集です。

過去5年分に加え、令和8年度の予想問題まで収録しています。

脱炭素・環境保全テーマについて、課題抽出・最重要課題の絞り込み・新たなリスクまで、発注者視点の論点を織り込んだ完成答案として読めます。

この無料記事でキーワードをそろえたら、次は「実際に書かれた答案」で使い方を確かめてください。

よくある質問

Q. 脱炭素・環境保全は必須科目Iでどのように出題されていますか?

A. 2021年度は「廃棄物に関する問題に対する循環型社会の構築」、2022年度は「CO₂排出量削減及びCO₂吸収量増加のための取組」が出題されています。

テーマ名が変わっても、脱炭素・自然環境・資源循環の3系統を押さえておけば、課題抽出((1))から解決策((2))まで一貫して組み立てられます。

第6次社会資本整備重点計画の重点目標IIIが「インフラ分野が先導するグリーン社会の実現」であるため、今後も優先度の高いテーマです。

Q. 建設分野のCO₂を論じるときの着眼点を教えてください。

A. 「国土交通省環境行動計画」(2025年6月改定)によれば、我が国のCO₂排出量の約7割を国土交通分野が占めます。

建設分野のCO₂削減は、①資材(低炭素型コンクリート・グリーンスチールなど低炭素建材)、②施工(GX建設機械の電動化・ICT施工による作業時間短縮)、③運用(インフラの省エネ・再エネ化)の3段階に整理して論じると、課題と解決策の対応が明確になります。

Q. グリーンインフラとEco-DRR・NbSはどう違いますか?

A. NbSが最も広い概念で、自然や生態系を活用して社会・経済・環境課題を解決する行動全般を指します。

NbSの下位区分にグリーンインフラがあり、社会資本整備やまちづくりに自然の多様な機能を取り込む取組を意味します。

Eco-DRRはNbSの防災・減災に特化した概念です。

答案では「NbSの発想に立ち、グリーンインフラとEco-DRRを組み合わせる」という形で統合して使うと整理しやすくなります。

Q. 脱炭素とコストのトレードオフを答案でどう扱えばよいですか?

A. 低炭素建材は現時点でコストが高く、施工段階の電動化も初期投資が大きいという課題は、(3)「新たなリスク」として明示できます。

対策としては、GX2040ビジョンに位置づけられたカーボンプライシング・排出量取引による経済的インセンティブ、公共工事での率先導入による市場形成、LCC評価への切り替えを挙げると具体性が出ます。

発注者目線では「総合評価落札方式での環境加点」や「低炭素材料の積算基準整備」といった調達側の工夫にも触れると差がつきます。


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