営業所は、仕事がなくて終わるのではない。人が離れて終わる。
未来を見ない上司たちと、静かに始まった離脱
うちの営業所の行く末を考えることがある。
正直に言えば、かなり危ないところまで来ていると思う。
揃いも揃って、上司たちにビジョンがない。
未来をどう作るのか。どの仕事を伸ばすのか。どの仕事から撤退するのか。
誰を育てるのか。どんな営業所にしていくのか。
そういう話が、ほとんど聞こえてこない。
あるのは、目の前の仕事をどう埋めるか。上から怒られないようにどう動くか。既存の仕事をどう断らずにこなすか。
そればかりだ。
学ばない。
考えない。
未来を見ない。
そして、自分の上司にびびり上がり、上司の言うことを聞くだけのイエスマンになっている。
そのような状況で、正しい判断などできるはずがない。
毎日のように、突然仕事が入る。
予定が変わる。休みが変わる。若いメンバーに無理がかかる。急に出ろと言われる。急に動けと言われる。急に予定を組み替えられる。
もちろん、運送業には急な仕事がある。
それは分かっている。
だが問題は、急な仕事そのものではない。
問題は、その仕事の多くが、未来につながる仕事ではなく、安請け合いの仕事に見えることだ。
安い。きつい。急。
利益が薄い。人が疲弊する。次につながらない。
それでも、予定表を埋めるために受ける。
断れば次の仕事が来なくなるかもしれない。
荷主に嫌われるかもしれない。
上司に怒られるかもしれない。
その恐怖で、目の前の仕事に飛びつく。
以前から僕は何度も思ってきた。
これは、未来を犠牲にしている。
目の前の仕事を回しているように見えて、実は営業所の未来を削っている。
会社のブランドも、かなり下がっているのではないかと思う。
少し無理を言えば、受けてくれる。
安く頼めば、やってくれる。
急に言っても、何とかしてくれる。
断れない営業所だ。
荷主から、そう見られているのではないか。
仕事をいただくことは大事だ。
お客様は大切にしなければならない。
だが、大切にすることと、何でも言いなりになることは違う。
適正な金額をいただく。
無理な日程なら相談する。
人が壊れるような仕事は受け方を考える。
長く続く関係にするために、こちらも守るべきものを守る。
それが本来の取引だと思う。
しかし、今の営業所は、恐怖で動いているように見える。
断れば仕事が来なくなる。断れば怒られる。断れば関係が切れる。
その恐怖で、現場を無理に回そうとする。
そして、そのしわ寄せは部下へ行く。
僕は、上司に何度も話してきた。
このままでは厳しい。
このやり方では人が疲弊する。
新しい仕事を作らなければならない。
安い仕事で予定を埋めても未来はない。
人を大切にしなければ、営業所は持たない。
口酸っぱく話してきたつもりだ。
けれど、聞き入れられない。
普段は聞かない。動かない。変えようとしない。
ところが、どうにもならなくなった時だけ助けを求めてくる。
それでは話にならない。
本当に変えたいなら、苦しくなる前に学ばなければならない。
本当に営業所を守りたいなら、問題が小さいうちに手を打たなければならない。
火事になってから水を探すのでは遅い。
煙が出ている段階で、動かなければならない。
そんな中で、ただ一つ大きく前進している部門がある。
僕の美術の仕事だ。
美術品輸送。美術館。博物館。作家さん。ギャラリー。文化施設。展示作業。梱包。輸送。入札。見積もり。
この分野だけは、少しずつ前に進んでいる。
僕自身が走り回り、自分の足でドブ板営業し、自分で調べ、自分で道を切り開いてきた。
少しずつ相談も来るようになった。
案件も出てきた。入札も来た。
現場での信用も積み上がってきた。
だが、それも時間の問題かもしれない。
なぜなら、営業所全体が崩れれば、美術だけでは守りきれないからだ。
どれだけ一部門が前進しても、土台である営業所が壊れれば、その上には何も立たない。
美術以外の一般の仕事が、安くて、きつくて、未来のない仕事ばかりになっている。
その現実を見ないままでは、やがて全体が崩れる。
そして、僕が予想していたことが始まった。
部下たちの離脱だ。
人は、上司を信頼できなくなった時、静かに見切りをつける。
最初は我慢する。次に不満を言う。
その次に諦める。そして最後は、何も言わずに離れていく。
信頼がゼロになった職場では、人はもう本音を言わない。
相談もしない。期待もしない。改善も求めない。ただ、辞める準備をする。
僕はずいぶん前から警告していた。
このやり方では、必ず皆が疲弊する。
急に休みを変更して仕事を入れる。
会社の都合ばかりを優先する。
それを支えている人間の生活や心を後回しにする。
そんなことを続ければ、人は離れていく。それは当たり前だ。人は機械ではない。
予定がある。家庭がある。体調がある。心がある。守るべき生活がある。
そこを無視して、会社の都合だけを押しつければ、人は必ず壊れる。
壊れなければ、辞める。
僕は思う。
人が中心でなければならない。
仕事の裏には、人がいる。
人の裏には、家庭がある。
家庭の裏には、幸せがある。
その人が守ろうとしている人生がある。
会社は、そのことを忘れてはいけない。
「仕事だから仕方ない」
「人がいないから仕方ない」
「少数精鋭だから仕方ない」
「急な依頼だから仕方ない」
仕方ないという言葉は、とても便利だ。
だが、その言葉を何度も使っているうちに、人の心は削られていく。
仕方ないで済まされる人間の側に、必ず痛みが残る。
その痛みを見ない組織に、未来はない。
営業所の崩壊は、ある日突然起きるわけではない。
まず、不満が増える。
次に、会話が減る。
その次に、期待が消える。
そして、人が離れる。
最後に、残った人間だけで、さらに無理をする。
すると、また誰かが疲弊する。
そしてまた辞める。
この悪循環に入ると、組織は一気に弱くなる。
人が辞めるから仕事が回らなくなる。
仕事が回らないから無理をする。
無理をするからまた人が辞める。
こうして、営業所は静かに痩せ細っていく。
数字だけを見ている上司には、それが分からない。
予定表が埋まっている。
車が動いている。
仕事は入っている。
売上は一応ある。
だから大丈夫に見える。
だが、本当に見るべきものはそこではない。
人の目だ。
現場の空気だ。
若いメンバーの疲れ方だ。
報告の少なさだ。
笑顔の消え方だ。
信頼の減り方だ。
そこを見なければ、組織の危機は分からない。
今や、崩壊は近いと思う。
このままいけば、必ず終わる。
きつい言い方かもしれない。
だが、僕にはそう見える。
上司にビジョンがない。
学ばない。
上の顔色ばかり見る。
部下の生活を見ない。
安請け合いの仕事を入れる。
未来につながる営業をしない。
人が離れ始めても本質を見ようとしない。
この状態で、どうやって営業所が続くのか。
美術の仕事だけは前に進んでいる。
だが、美術以外には未来が見えない。
一般の仕事が疲弊の温床になっている。
安い仕事で人を使い、急な仕事で予定を壊し、上司の保身で現場を振り回す。
そんな営業所に、若い人が未来を見るはずがない。
会社は、仕事がないから終わるのではない。
人が離れるから終わる。
人が離れる前には、必ずサインがある。
疲れている。
怒っている。
諦めている。
話さなくなる。
笑わなくなる。
相談しなくなる。
期待しなくなる。
そのサインを見逃してはいけない。
だが、今の上司たちは、そのサインを見ようとしていない。
見えていても、見ないふりをしているのかもしれない。
なぜなら、そこを見ると、自分たちのやり方を変えなければならないからだ。
学ばなければならない。
考えなければならない。
部下と向き合わなければならない。
安い仕事を断る勇気を持たなければならない。
新規営業に足を運ばなければならない。
それが面倒なのだと思う。
だから、目の前の仕事を回す。
今日だけを終わらせる。
そして未来を失っていく。
僕は、この営業所をただ批判したいわけではない。
本当は、変わってほしい。
ここには、まだ可能性がある。
人もいる。
車もある。
経験もある。
過去に築いた信用もある。
新しく伸び始めた美術の仕事もある。
だからこそ、もったいない。
変われるはずなのに、変わろうとしない。
学べばいいのに、学ばない。
未来を見ればいいのに、目の前しか見ない。
人を大切にすればいいのに、会社の都合を優先する。
それが悔しい。
僕は、あと何年この営業所で戦えるのか分からない。
ただ、少なくとも今は、自分の道を進む。
美術の仕事を伸ばす。
新しいお客様に会う。
未来につながる仕事を作る。
報告書を書く。
見積もりを作る。
入札に挑む。
現場で信用を積む。
それが、僕にできる抵抗だ。
営業所全体が崩れていくのを、ただ黙って見ているつもりはない。
だが同時に、僕一人で全てを支えることもできない。
組織を守るには、上司が変わらなければならない。
人を中心に考えなければならない。
仕事の先に人がいることを、思い出さなければならない。
営業所の行く末は、まだ完全には決まっていない。
だが、このままなら終わる。
僕はそう思っている。
人が離れ始めた時点で、もう危機は始まっている。
その危機を、単なる退職者の問題として片づけてはいけない。
辞める人が悪いのではない。
辞めたくなる職場を放置した組織の問題だ。
信頼を失った上司の問題だ。
未来を見なかった営業所の問題だ。
人を後回しにした会社の問題だ。
仕事は、人がいて初めて回る。
人がいなくなれば、仕事も未来も消える。
その当たり前のことを忘れた営業所に、明日はない。
僕は、その崩壊の音を聞きながら、それでも前を向く。
美術だけでも、未来につながる道を作る。
この営業所にまだ光が残っているとすれば、そこからしか始まらないと思っている。
