「バラバラの営業所に、未来はあるのか」
僕の営業所は、正直に言えば
「仲が悪い会社」として有名だ。
なぜ、こうなったのか。理由はシンプルだ。
昔は、何もしなくても売上があったからだ。毎月1,000万円。夜間のルート配送があり、昼間は少し仕事をすれば、それで利益が出た。
営業をしなくてもいい。努力しなくてもいい。それでも会社は回っていた。
だから、誰も育たなかった。営業力も、人材育成も。ただ、与えられたレールの上を走るだけだった。
やがて、そのレールはなくなった。夜間ルート配送の廃止。
会社は、一気に自分たちの力で立たなければならなくなった。
でも、何も残っていなかった。営業できる人間がいない。人を育てる文化もない。残ったのは、プライドだけが高く、人を見下す空気だった。
親分・子分の関係。好き嫌いで決まる評価。先輩の悪い部分だけが受け継がれ、後輩はさらに悪くなる。完全な悪循環だった。
僕は、その中で思った。
このままでは、確実に終わる。
力仕事だけで、10年先も持つはずがない。人は歳を取る。体は確実に衰える。それでも同じことを続けるのか。
誰も、その問いを持っていなかった。
だから僕は、一人で動いた。
美術の仕事に力を入れた。美術品梱包輸送。展示作業。専門性が必要で、
信用がなければ任せてもらえない仕事。
最初は、誰も見向きもしなかった。でも、やり続けた。営業して、断られて、また行って。少しずつ、仕事が取れるようになった。
そして今、僕は会社には「柱」が必要だ。今の営業所には、2つ必要だと思っている。
ひとつは、美術。運ぶだけではなく、
梱包し、展示し、守る。専門性で選ばれる仕事だ。
もうひとつは、遺品整理と文化財継承。遺品の中には、価値あるものが眠っている。それを見つけ、守り、必要な場所へつなぐ。
これは、ただの仕事ではない。
地域の記憶をつなぐ仕事だ。
この2つがあれば、営業所は変わる。
運送会社ではなく、
「文化を守る会社」になる。
10年先。
若い人が「ここで働きたい」と思える場所。年を重ねても、技術で生きていける場所。
そんな営業所にしたい。
バラバラでもいい。
最初からまとまっている会社なんて、ない。でも
未来を見ている人間が一人でもいれば、会社は変わる。
