穴のあいた靴下を、楽しんで明日につなげる。
穴の開いた靴下を見つけたら、これまでは迷わず捨てていました。
「もう寿命だな」と思って。
最近、私はダーニングを習い始めました。
衣服の穴や擦り切れた場所を、色とりどりの糸で繕う手仕事です。
ダーニングは、傷んだ場所を目立たないように隠すものではありません。
赤や黄色、青や緑。自分の好きな糸を重ねて、穴のあった場所に新しい模様をつくっていきます。
繕い終えた靴下は、元の姿には戻ってはいません。
けれど、穴が開く前より、なんだか可愛くなっています。
「直したから、仕方なく履く」のではなく、
「この模様が好きだから、また履きたい」
そんな気持ちになるのです。
新しいものを買うことは簡単です。
安く、早く、きれいなものが、今はポチッとすれば、すぐに手に入ります。
でも、自分の手で少し時間をかけると、捨てるはずだったものが、世界にひとつだけの大切なものに変わります。
ダーニングには、基本的なステッチはあっても、その先に正解はありません。
糸の種類も、色も、縫い方も自由です。
少しくらいいびつでも、途中で色を変えても、それがその人だけのデザインになります。
だから、失敗はない。
そこが素敵です。
大量に作り、大量に安く買い、大量に捨てる暮らしを変えるには、立派な決意が必要だと思っていました。
けれど、未来のためにできることは、もっと小さく、もっと楽しいことなのかもしれません。
好きな色を一つ選び、一針ずつ手を動かす。
そうすれば、物の命が延びるだけでなく、針を動かす人の心も少し静かになります。
来春には、沖縄の「もうひとつの保健室」でも、みんなでダーニングをする時間をつくりたいと思っています。
今日は話す。
今日はお茶を飲む。
今日は足を休める。
そして、ある日は一緒に手を動かす。
穴の開いた靴下を捨てずに、好きな色の糸を重ねていく。
傷をなかったことにするのではなく、そこから新しい自分の景色をつくっていく。
そんな小さな一針も、きっと明日への一歩につながっているのだと思います。


