欠勤と遅刻に潜む“本当の理由”とは?アブセンティーズムを見抜く視点と最初の対策ステップ
イントロ|なぜ“また来なかった・遅れてきた”社員に声がかけにくいのか?
「また田中が急に来なくなった…」
中小製造業に勤務する35歳のラインリーダー・田中さんは、月に2〜3回の頻度で突発的な欠勤を繰り返していました。体調不良を理由にしてはいるものの、診断書の提出はなく、連絡も簡素なメール1本だけ。現場では「またか」という空気が漂い、管理者である工場長も深く事情を聞けないままでした。
欠勤・遅刻が増えると「また数字が悪化した」と勤怠データで判断してしまいがちです。しかし、その裏にある本当の理由を把握しなければ、対策は空回りします。
本稿では、「アブセンティーズム(欠勤・遅刻)」に潜む背景を、メンタルヘルス・家庭事情・職場環境の3つの切り口から掘り下げていきます。そして、経営者・管理者が現場で“最初に踏むべき一歩”として、声かけ・面談・記録のフレームをご紹介します。
アブセンティーズムとは何か?数字だけでは見えない“欠勤・遅刻”の本当の意味
アブセンティーズムとは、病気やストレスなどを理由に「仕事に来られない状態」を指します。一方で、出社はしているものの集中力や生産性が著しく低い状態は「プレゼンティーズム」と呼ばれます。
厚生労働省が2023年に発表した「労働者健康状況調査」では、**中小企業における欠勤率は年平均2.8%**とされ、大企業よりも高い傾向にあります。また、欠勤の主な理由としては以下のような項目が並びます。
• 精神的な不調(軽度うつ・適応障害など)
• 育児・介護など家庭事情
• 職場の人間関係や上司とのトラブル
多くの中小企業では、これらの背景が**「単なる欠勤」や「遅刻の常習者」として見過ごされている**のが現状です。
ミニワーク①:
直近1ヵ月の欠勤・遅刻者について、「理由が明確なもの」「不明なもの」「体調不良だが曖昧な表現だったもの」などに分類し、ホワイトボードや紙で可視化してみてください。
メンタルヘルスが原因のケースはどう見抜く?
あるIT系中小企業では、30代女性スタッフのCさんが「朝になると布団から起き上がれない」としてたびたび欠勤。診断の結果、軽度のうつ状態と判明しました。上司も最初は「やる気がないのでは?」と感じていたそうです。
メンタル不調は見た目にはわかりにくいため、早期の兆候を捉えることがカギです。たとえば以下のような変化がサインになります。
• 朝礼で発言や目線が減った
• メールの返信スピードが遅くなった
• 週明けに特に元気がなくなる
• 突然「私には無理かも」と口にする
企業規模にかかわらず、こうした兆候を察知できるのは、現場の上司や同僚しかいません。産業医や保健師との連携は重要ですが、それ以前に日常の対話が出発点となります。
ミニワーク②:
次の出勤日に、気になる社員に「最近、調子はどう?」とあえて雑談的に声をかけてみてください。その反応の変化を小さなメモに残しておくと、後の面談に活かせます。
家庭事情が影響するケースには何がある?
とある製造業(従業員50名)では、育休復帰直後のDさんが、毎週水曜の朝に遅刻・早退を繰り返していました。理由を聞くと、「保育園の送迎時間が合わず、夫と交代で対応している」とのことでした。
中小企業では、大企業に比べてフレックス制度や在宅勤務の柔軟性が乏しいケースが多く、家庭事情の影響を直接受けやすいという特徴があります。
代表的な家庭事情の影響:
• 保育園・学童保育の時間制限
• 介護施設の送迎や急な呼び出し
• 共働き家庭での調整困難
• 配偶者の転勤や家庭内トラブル
公的なサポート制度(育児・介護休業法など)や地域の保育延長サービスを調べ、社内で周知するだけでも安心感は大きくなります。
ミニワーク③:
「家庭の事情で欠勤・遅刻したことがありますか?」という3択アンケート(①ある②たまにある③ない)を社内で実施してみてください。集計結果を共有するだけでも、同じ悩みを持つ社員同士の気づきになります。
職場環境が原因で欠勤・遅刻が増えるのはなぜ?
「また遅刻か?やる気ないのか?」
中小企業の総務部長Eさんは、28歳の女性社員が5分遅れで出社した際に、強く叱責してしまいました。実はEさん、その日はひどい腹痛を我慢しながらの出勤でした。後日、体調悪化により数日欠勤することになります。
このように、職場に“休みにくい雰囲気”があると、小さな体調不良が悪化し、結果的に長期の欠勤につながるという逆効果を生むことがあります。
要因として考えられるのは:
• 管理者のマネジメントスタイル(恐怖型・成果主義)
• 無言の同調圧力(「みんな我慢している」空気)
• 評価制度が“勤怠の良さ”に偏っている
「心理的安全性」が確保されていないと、社員は本音を隠しがちになります。
ミニワーク④:
今週の朝礼や雑談タイムで、1人の社員に対して「最近、困ってることとかない?」と声かけしてみてください。その表情や言葉のトーンから、新たな兆候が見えるかもしれません。
まず何から始める?“欠勤・遅刻”の本当の理由を掴む最初のステップ
まず着手すべきは、本人との対話フレームを持つことです。形式ばった面談ではなく、ちょっとした時間でも構いません。
ステップ①:本人面談のフレームワーク
以下の3つの質問を軸にしましょう。
1. 「最近、仕事の量や内容で負担に感じることはありますか?」
2. 「ご家庭やプライベートで気がかりなことはありますか?」
3. 「職場の中でやりづらさや困りごとはありますか?」
ステップ②:定期的なミーティングの設計
15分×月1回の「1on1ミーティング」を導入し、簡単な議事録(3行メモ)で残しておくと、変化を追いやすくなります。
ステップ③:可視化と分析の仕組み
Googleスプレッドシートなどで以下のように記録しましょう。
• 欠勤・遅刻の日付と理由
• 分類:①メンタル ②家庭 ③職場 ④物理的要因(通勤など)
• 月末に棒グラフ化し、傾向を可視化
まとめ|なぜ現場に“気づきの視点”を持つことが最重要なのか?
欠勤や遅刻を「数字」でしか見ないと、問題の本質は隠れたままです。
一方で、メンタル・家庭・職場の背景を丁寧に把握することで、再発の予防と信頼関係の再構築につながります。
今すぐできるアクション:
1. 自社の欠勤・遅刻を2週間分だけExcelで集計してみる
2. 気になる社員1名に「最近どう?」と面談してみる
3. 次回記事「メンタルケア研修・制度づくり編」で、制度の仕組みを整える準備を始める
FAQ
Q1. アブセンティーズムとプレゼンティーズムの違いは?
A. アブセンティーズムは「欠勤や遅刻で職場に来られない状態」、プレゼンティーズムは「来てはいるが体調不良やメンタル不調で本来のパフォーマンスが出せていない状態」です。
Q2. 中小企業で面談リソースが足りない場合、まず何をすべき?
A. まずは「週に1回、3分でも管理者が『調子どう?』と声をかけるだけ」でも十分な予防効果があります。
Q3. 家庭事情を把握する際にプライバシーはどう守る?
A. 「家庭で何かありましたか?」ではなく「最近、ご家庭のことで変化はありましたか?」とオープンな聞き方をするのがポイントです。
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