【毎週ショートショートnote】急性カーテンコール中毒
長年在籍していた劇団を退団した。
台詞を覚え、時には嫌な役として本心でない感情を曝け出すことに段々と疲れてきたのだった。65歳になるし良い頃合いだろう。
劇団生活を振り返って一番嬉しかった事象は、無事に劇が終わった後のカーテンコールだ。
観客の拍手喝采を浴びた時は緊張が一気に解れて夢見心地になる。劇をやってて良かったと心底思う。
退団後暫くは少ない年金で暮らしていたが、段々と金銭的にきつくなってきて仕方なく週2でコンビニのバイトを始めた。
真面目に業務を遂行する私を見て、バイトが終わり帰宅する前に時々店長が声をかけてくれる。あなたの仕事振りは素晴らしいと。
褒められて嬉しいはずなのに、何かが物足りない……。
ある日のバイト終わり。その日も店長にボソッと褒められた。その時何故か怒りが込み上がり、気づけば無意識のうちにそれを声に出していた。
「何故店長しか褒めてくれないんですか! 無事にバイトを終えたんですよ。他の店員さんとかお客さんとか、皆が総立ちで拍手してくれたって良いじゃ……」
私は急に目眩がして倒れた。急性カーテンコール中毒だった。
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今週もたらはかにさんの企画『毎週ショートショートnote』に参加させていただきました!
