【ショートショート】誤字審査
ある日の午後。部下に声をかけられた。
「あ、課長。部長が呼んでましたよ」
「え、ああ、そうか……」
あのガミガミ部長のことだ。どうせいつものようにどうでもいいことをネチネチと言われるんだろうなあ。ああ、気が滅入る……。
俺は重い腰を上げ、部長のデスクへと向かった。
部長は、いつものように仏頂面で踏ん反り返っている。見るからに機嫌が悪そうだ。
「あ、あの、お呼びでしょうか」
「『イトウに関する報告資料』が誤字審査委員会から指摘をくらったぞ。これは君の課が作成したんだろ?」
「え、ええ……問題はなかったはずですが」
「いやいや大問題だよ。目を通したらすぐわかったよ。『イトウが食べられた』だと? イトウが食べられる訳ないじゃないか。誤字だろこれは。一体イトウが何をしたんだ」
……
「え? イトウは魚のイトウじゃなくて『人間』の方の伊藤? なんだそうだったのか。だったらそう書きたまえよ。紛らわしい……」
(409字)
今週も、たらはかに(田原にか)様の企画【毎週ショートショートnote】に参加させていただきました!
