本当に苦しい時に本は読めない
本当に苦しい時、本は読めない。悩み、困難、逆境、それらに押しつぶされそうな時、いつもは好きなはずの、気晴らしになるはずの本の文字列が全く目に入らない時があります。ページを開くのさえ億劫になることさえある。
でも、その困難が何らかの形で少しほぐれると、再び本を読めるようになる。「ここに書いてあることはヒントになりそうだ」とか、「ああ、この登場人物の言っていることは今の自分に分かるな」と納得できる。
その時、その人はもう回復への道のりを歩み出している。本が読めるということは、すでに回復を始めたということ。そのサイン。
では、「再び読み始める」までの間に何が起きているのか?それを考えた時に思い浮かんだのは、臨床心理士・東畑開人さんの『聞く技術 聞いてもらう技術』(ちくま新書)でした。
本は、「聞いてくれる」メディアではない。というか、生身の人間ではないのだから、読者の話を受け止めてくれる機能はどうしてもない。
でも、私たちが「読めない」とき、心は悩みでパンパンになっている。本当は、その思いを誰かに受け止めてほしい。聞いてほしい。でも聞いてもらえない。だから、本当に苦しい時に本は読めない。
『聞く技術 聞いてもらう技術』では、「聞いてもらう」と「聞く」が相互に循環し、ぐるぐると世界を巡っていると指摘されている。本はきっと「常に語りかける」メディアであって、私たちはまず、その本の言葉を味わうには「聞いてもらわなければ」ならない。
本が読めないほど苦しい時、私たちはきっと、人間を求めている。聞いてくれる誰かを。
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