子連れオランダ滞在記 1992年〜1993年 ⑫ケースおじさんのこと
大学の寮のエリアにあるスーパーマーケットの店主のケース・カップさん。
私達の住む家族向けのエリアにあり、我が家の一階がケースのスーパーだ。
初めて会って自己紹介した時から私達家族を温かく迎えてくれ、いろいろな事を教えてくれたり助けてくれた。
まずは子供用品のレンタルショップを教えてもらって、ベビーカーやベビーヤード、車のチャイルドシートなどレンタルすることができた。
オランダの家が全体にそうなのか、私達の部屋が古かったせいなのか分からないが、照明の電球は度々切れて交換するにもフードがなかなか取れなかったりして日本では苦労のないことによく手間取った。
時々、電球自体が回らなくて交換どうにも取り外せない時があった。もうなんでこうなんだとイライラすることも少なくなかった。
ケースに電気屋さんを教えてもらおうとすると、「OK!」といって部屋に来てくれて、電球を見てくれ、これはだめだね!といって戻って行った。どうしたものかとぽかんとしているとケースは工具を持ってきて、コードを切ってフードから電球を外すした。そしてまたつなげて、新しい電球を取り付けて行ってくれた。「これでOK!」といつもの笑顔。フードは無くなり裸電球になったけど。
洗濯機でバスマットを洗ったら、繊維が流れ出して排水が詰まってしまった。ケースの店に水漏れしたらしく、彼は、どうしたんだと見に来た。とんでもないことを、してしまったと平謝りした。「大したこと無いからOK!。そのバスマットはボロだったね」と言って帰って行った。本当に大丈夫だったのだろうか。次の日お店に行ってまた謝ると「問題ない。新しいバスマットは買ったかい?」と。本当に大丈夫だったのだろうか?
娘が風邪を引いた時、ホームドクターを紹介してくれたのもケースだ。
買い物に行くといつも子ども達に話しかけてくれた。それが私達にとってどれ程嬉しいことだったか。
彼がいなかったら、私達のオランダ生活はもっと困難だったろうと思う。
オランダから帰国する時、ご近所さんを招待して簡単なパーティーを開いたが、奥さんと二人で来てくれて、ケースはいつもの服装とは違う(いつもジーンズとシャツだった)、おしゃれなジャケットとネクタイをして来てくれた。
なんか恐縮した。
そして今度は彼の自宅にも招いてくれた。
私達と同じフラットの一つがケースの部屋だった。
スーパーにいるカジュアルなケースから想像するのとは違う伝統を感じる家具や調度品が飾られている素敵な部屋だった。
奥さんは無口だけれどしっかり者という感じの人だった。息子が2人いて、既に独立しているそうだった。
彼がどんな人生を送ってきたのか、もっと知りたかった。
勤勉で温かく情の深い、品格のあるオランダ人だった。

