挿絵小説でGo! 第二十六話
VRでの決戦から一ヶ月が経った。世の中が混乱からようやく落ち着きを取り戻す中、私は夏休み明けの学校で、冬月やケイン、ミア、恵らとホームルーム前の時間をともにしている。
「アレックス、亡くなったらしいね」
ミアの情報に私はうなずく。劣化クローンだけに身体維持に困難が伴う中、一切の処置を断っての衰弱死だったという。
冬月が口を開く。
「あいつは元々、米中双方から日本のサイバー空間を制するよう送られたエージェントだったんだ。だが、ナツを知りこの国を研究するうちに愛着が移ってしまった」
「そうさせるだけの魅力が、この国にはあった訳デス。ゆえにデジタルの力で乗っ取り自ら再興させようとネ」
同調するケインに私も異論はない。アレックスの心中は察してあまりあるが、さほど悲しみは感じていない。
──多分、アレックスには彼なりの流儀があったんだ。それを貫き全うした。ならそれを喜んであげないと。
思いを改めた私は、冬月とケインに問う。
「で、アンタらのパトロンとボスはどうなのよ? あわよくば日本を乗っ取る気だったんでしょう」
「まぁな。だが俺が止めさせた」
返答する冬月にケインも「僕もデス」と応じている。どうやら二人にも、この国に宿るアイデンティティーに感じ入るものが芽生えたらしい。
ラクロスを通じ、ともに敵として戦った後だけに私は納得を覚えている。
──日本の取るべき道は、成熟かそれとも成長か。政府は大きくあるべきか否か。
国の未来もさることながら、まずは自身である。私は第一歩を求めスマホに税理士の受験要綱を映し出した。然るべき受験資格を得た後、玄蔵爺さんや士郎兄にならって、己の道を切り開く覚悟を決めたのだ。
同時にラクロスに対しても、マイナースポーツを広める新たな道を模索している。
「ナツ、色々やるのはいいが、手を広げ過ぎじゃないか?」
呆れ気味の冬月に私は言った。
「器用貧乏の私には、それくらいで丁度いいのよ。いずれは世界へ打って出る。それまでは、この国も生き残っていてもらわないとね」
私はまだ見ぬ未来へと思いを馳せつつ、ホームルームに向け、軽い足取りで皆とともに席へとついた。(了)

