詩集:living
【海の詩Ⅰ (はじめに)】
心の奥から押し寄せる波に気付いたら
心全部が海になってしまう前に
ライフジャケットを着ておきましょう
泳ぎは得意ですか?
【海の詩Ⅱ】
思考は海
私の体の中の海
もし私がベッドへ横になったら
海も横になるかしら
そしてざばんとこぼれて
だから枕が濡れてしまうのかしら
【海の詩Ⅲ】
嵐の日にかぎって海は
奔放で美しいひとのように
髪を踊らせて私を抱く
いつも素っ気なく
私に無関心でいるくせに
怒濤が強かに私を打ち
飛沫が瞼を濡らす
ほら、痛いでしょう
泣けばいいじゃないの
今だけよ
こんな嵐の日は
いつかの朝に遠くへ行った
美しい姉を思い出す
【退屈な詩】
波が引いては寄せるのを
日がな一日見ている
この退屈な島国が少し
拡がったり狭まったりするのを
この退屈な肺が少し
膨らんだり萎んだりするのを
繰り返し 繰り返し
繰り返し 繰り返し
繰り返し 繰り返し
繰り返し 繰り返し
【しあわせの詩】
息を吸うのがしあわせで
息を吐くのがしあわせだったら
ずっとしあわせでいられるわ
みんなそうならいいんだわ
そしたら鯨は
世界で一番ふしあわせ
そしたら鯨は
さっさと陸へあがるでしょう
けれどもそれは、うそ
鯨はやっぱり海にいて
わたしはやっぱりふしあわせ
【一寸足りない詩】
わたしの脚は寸足らず
裾を切っちゃったスカートじゃ
パリのモデルになれません
パリのモデルも寸足らず
トーキョーでショーをするのなら
あの海股げる脚がいる
【living】
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