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ラブソングが聴けなくなったら結婚していた話

私には恋をするたびにラブソングを聴いて、相手のことを思う習性があった。

これは、小学3年生から続いている習慣である。

最初に聴いたのはaiko。
アルバム「桜の木の下」の「桃色」を何度も何度も聴きながら、隣のクラスの男の子のことを想った。
「あたしに今すぐ夢中になって〜♪」と願っていた(一部歌詞が過激だけどね、小学生にしては)。

それから毎回、毎回、新しい恋をするたびに、その男のテーマソングが誕生していった。

  • Hくんの時はaikoの「赤いランプ」(別れの予感を感じながら)

  • Wくんの時はYUKIの「ハミングバード」(付き合えそうで付き合えない切なさ)

  • Sくんの時はCrystal Kay「hard to say」(wanna know what you're feelingだった)

  • Tくんの時はbacknumberの「クリスマスソング」(クリスマスなんて💩食らえ!でも君が好きだ〜)

そんな感じで、誰かを好きになると、その時の心情にあうラブソングが聴きたくなったし、探していた。

それは「そうしよう」と計画してするものではなく、呼吸のような当たり前の習慣だった。




しかし、20代中盤になって変化が訪れた。

ラブソングが聴けなくなってきた。
気持ちも全然盛り上がらない。

社会人になり、自然な出会いも減り、
恋をしにくくなっていたからかもしれない。

はたまた、友人たちが次々と結婚し、
トキメキだの、LINEが来なくて震える夜だの
言ってる人が周りから消えていったからかもしれない。

悲しいことに、大好きだったaikoの曲にも共感できなくなっていった。

この現象を私は密かに「あたしの終焉」と呼んでいた。

あたしの終焉
どん・よく子の造語。aikoの曲に共感できなくなる現象を表す。
aikoの歌詞の一人称は基本的に「あたし」である。
彼が目の前を通るたびに胸を痛めるあたし、もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対なあたし、未練タラタラのあたし。そんなたくさんのあたしの物語に共感できなくなっていたので、終焉と名付けた。

そうして、このまま恋する気持ちを失って、
誰も好きになれず、独身で一生を終えるのかな...…

そんなどうすればいいかわからない焦りがあった。


一生一人でいると決意できるほど、
独身ライフに誇りを持てていなかったあの頃。

親からのプレッシャーもあり、友人が続々と既婚者となり疎外感を覚え始めた私は婚活を始めた。

私にとって婚活は、出会った初日から「結婚相手としてありか・なしか」を判断する作業。虚しかった。つまらなかった。


🔽虚無婚活時代

この頃はラブソングなんて聴かず、自分を奮い立たせる元気になれそうな曲ばかり聴いていた。


愛だの恋だの叫ばずに、
わちゃわちゃ騒げる曲
人生の応援ソング
激しいロックミュージック

ラブソングが聴けなくなった自分に戸惑いを覚えつつも
そういった元気ソングを楽しめている、新たな自分を発見できた。




それからまた数年経って、婚活をやめて海外で暮らし始めていた私は、ある男性に会った。

彼はとても優しく、男性がうっすら苦手な私でも、性別を意識せずゆっくりと本音を話せた。

ずっと抱えていた悩みを打ち明けて、彼の胸で子供のように大泣きしたときも、二人で初めて食事に行ったときも、ビーチで沈む夕陽を眺めたときも私の頭の中にラブソングは流れなかったし、彼のテーマソングを探そうとも思わなかった。

それでも彼と会うたびに、固く結んでいた心の紐はゆるんでいき、気づけば二人で暮らしていた。

そして今はかけがえのない家族になった。

これまでも、これからも、
彼のラブソングは流れない。探さない。

その理由が、最近ようやくわかってきた気がする。


なぜなら私にとってラブソングは非日常。
「妄想の中の相手」を楽しむものだから。

そこで描いている彼らは、彼らのような形をした私の理想の男たち。
彼らそのものではない。
私は私の空想の世界・世界に住んでいる彼らに恋焦がれていた。



でも、結婚して家族となった私の夫は、最初っから実在していた。

妄想の世界にトリップする暇がないくらい、私の生活には夫がいた。

目を合わせ、私の頭の中の言葉を声に出して、夫から生み出される言葉を聞いた。

たとえ私が泣き出して話せない日でも、英語で想いを伝えきれない日でも
夫はただ目の前にいて、理解することを諦めなかった。

二人で笑って、抱き合って泣いて、テレビを見て議論して、どでかいステーキを焼いて、BGMを流しながら踊って、クラクションのうるさい通りを手を繋いで歩いて、大きな木の下で昼寝をして、波の音を聞いて黙ったまま肩を寄せ合って...…



強いていうならば、それらすべてのやり取り、生活音が心地よいオリジナルのラブソングだったのかもしれない。


この木の下で夫と昼寝をした


🔽夫との出会い、詳細

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