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お兄ちゃんは、げんきじるし【最終話】

【最終話:わたしの家族は世界一】

「礼人じゃないよ……信じてもらえないかもしれないけど、ゆめのパパだよ」
「パパ? 絶対違う! パパはわたしが1歳の時に死んじゃったもん!」
「ごめん、びっくりするよな。急に現れて。パパはな、ママと礼人とゆめに謝りたかったんだ」
「えっ? 何で?」
「そりゃ、そうだろ(笑) だって、俺が居なくなったせいで、ママは働きっぱなし、礼人は友達からの遊びを断って、ゆめも最近まで学校でいじめられたらしいじゃん。俺が生きてたら、もう少し力になれたのになって。だから、ゆめ。パパらしいこと何もできずにごめんな」
「……パパ? 本当にパパなの?」
「そうだよ。でも、ゆめからしたら、礼人がパパみたいなもんだよな」
「……そんなことないよ! わたしね、パパのアルバムを見たんだ。わたしが生まれた時、嬉しくて泣いてたみたいだね」
「やっぱり、見てたか(笑) 恥ずかしい。おばあちゃんから聞いたかもしれないけど、男兄弟しか居なくて、いとこも男しか居なかったから、あまりにも嬉しくて泣いちゃったんだ。……まぁ、その頃から病気だったんだけど」
「そうだったらしいね。あっ、わたしね。保育園の頃、お兄ちゃんに、将来お兄ちゃんと結婚する!って言ったんだ。パパが生きてたら、パパに言ってたのかな?」
「そうかもな。……あっ、時間だ。パパはそろそろ帰らないといけないんだ。話せて良かったよ。元気でな、ゆめ。礼人とお母さんにもよろしくな」
「待って! パパ。……大好きだよ!」
「……俺も、大好きだよ。ゆめ」
 わたしは目を瞑ったまま、パパらしき人とたくさんお喋りをした。
 夢だと思ったけど、何となくリアルだった。
 きっと、わたしが熱を出して、苦しんでるのを上から見て、助けに来てくれたんだね。
 そのままわたしは眠りについた。
 ……朝になったみたい。
 さすがにパパはもう居ないよね。
 わたしは目を開ける。
 すると、わたしの近くで座って壁にもたれて寝てる人影が見える。……もしかして、
「パパ!!」
「わっ!!」
 ……なんだ、お兄ちゃんか。
「ゆめ、おはよう」
「おはよう。お兄ちゃん、もしかしてずっとここで壁にもたれて寝てたの?」
「うん」
「何で?」
「いや、ゆめが1人で寝るって、言ったけど、心配だったから、夜中こっそりここに座って様子を見てたんだ」
「えっ、惜しいことしたね(笑)」
「何が?」
「実は、昨日寝てすぐパパが来てくれて、色々喋ったんだ。すぐ帰っちゃったけど」
「……はっ? 何言ってんの」
「最初は夢だと思ったけど、妙にリアルだったから、あれはパパだね」
「へぇ、そうなんだ」
(……父さん、心配で来てくれたんだ)
「体調は、どう?」
「少しは良くなったと思う」
「そう? 熱測るか」
「うん」
「37度6分、少し下がったね」
「……うん」
「あっ、そうだ! おばあちゃんが言ってたけど、もう少しで母さん来るから」
「分かった!」
 ママ、心配で来るのかな? もう大丈夫なんだけど。
「すみません! みゆきです」
「あら、みゆきさん! ご無沙汰してます」
「ゆめと礼人は大丈夫ですか?」
「えぇ、向こうの部屋に居ます」
 遠くからママの声がした。
 ……来てくれたんだ。
「ゆめ、大丈夫?」
「ママ!」
「母さん、早かったね」
「ゆめ、体調はどう?」
「だいぶ良くなったよ。お兄ちゃんが看病してくれたし」
「ありがとう、礼人。ごめんね、昨日行けなくて」
「ううん、大丈夫。じいちゃんばあちゃんも居たし」
「そう、後でお礼を言わなきゃ」
「ママ、聞いて! 昨日の夜中、パパが様子を見に来てくれたんだ」
「えっ、パパが?」
「うん! 暗くてどんな人か分からなかったけど、声はかっこよかった」
「へぇ、良かったわね。ゆめ」
「うん!」
「礼人、大丈夫? なんかさっきから眠そうだけど」
「大丈夫だよ」
「ホントに? 無理しなくていいんだよ」
「まぁ、実は昨日ゆめが寝てる時、心配だから横で座って壁にもたれて寝てた」
「えっ? ちゃんと布団被った?」
「毛布は被ったよ」
「ちゃんと布団で寝ないと! ……今から寝てきなさい」
「えっ、大丈夫だよ。ゆめの様子見ないといけないし」
「しばらく、わたしが居るから大丈夫! 寝てきなさい」
「はーい」
 お兄ちゃんは他の部屋へ行っちゃった。
「ゆめ、もうすぐ誕生日だね。プレゼント、何がいい?」
「うーん、この前テレビでやってた、ぬいぐるみ」
「あぁ、ゆめ欲しいって言ってたね。分かったわ」
「ママ、お仕事は?」
「何とか、その日は帰れるようにする」
「ありがとう!」
 次の日、わたしの風邪は治り、おばあちゃん家を出ることになった。
「またね! おじいちゃん、おばあちゃん」
「次は、正月に来るね」
「ありがとうございました」
「いえいえ、3人ともありがとう」
「また来てね」
 わたしたちは、おじいちゃんとおばあちゃんに見送られ、車で家に帰った。

 わたしの誕生日が来た。
「おはよう、ゆめ!」
「おはよう、お兄ちゃん!」
「誕生日おめでとう!」
「ありがとう」
 ママはお仕事に行っちゃったみたい。
「今日は母さん、なるべく早く帰れるようにするみたいだから」
「ホント!? やったぁ」
「夜、楽しみにしててな」
「うん!」
「じゃあ、学校行くか」
「うん!」
 お兄ちゃんの学校に着いた。
 ……まぁ、わたしの学校でもあるか。
「ゆめちゃん、誕生日おめでとう!!」
「パチパチパチ」
 早速、フリースクールのみんながお祝いしてくれた。
「みんな、ありがとう」
「いくつになったんだっけ?」
「8歳になりました!」
「おめでとう!」
 こんなにも祝福されたことは今まで無かったから、嬉しかった。
「ゆめちゃん、今日は家族でもお祝いするの?」
 先生が聞いてくる
「はい!」
「ゆめちゃん、自分の名前がどうやって決まったか、知ってる?」
「知らないです」
「家に帰ったら、お母さんかお兄ちゃんに聞いてみな」
「……はい」
 わたしはよく分からなかったけど、聞いてみることにした。
 お兄ちゃんと家に帰り、ママが帰るのを待っている。
「ママ遅いね」
「そうだね。5時には帰るって言ってたけど」
「もう6時じゃん」
「……ママ、やっぱり来ないのかな?」
 わたしの目には涙が浮かぶ。
「ゆめ、泣くなよ(笑) 大丈夫だから!」
 お兄ちゃんがわたしの頭を撫でる。
 お母さんに聞きたいこともあったのに。
 ……すると、
「ただいま! ごめん、遅くなっちゃった!」
「ママ!」
 わたしは嬉しくてママに抱きつく。
「母さん、おかえり。仕事は大丈夫だった?」
「うん、ゆめの誕生日プレゼント探して遅れちゃってた」
 どうやらわたしの誕生日プレゼントを探して遅くなったみたい。
「ゆめ、これ欲しいって言ってたでしょ?」
「わぁ、ねこのにゃーただ! ありがとう、ママ大好き!」
「じゃあ、ケーキ食べるか!
「うん!」
「ふぅー!」
 わたしは8本のローソクを吹き消した。
「いただきます!」
 わたしたちは食べ始めた。
 ……ここかな?
「ねぇ、ママ! お兄ちゃんも」
「どうしたの? ゆめ」
「わたしの名前って、どうやって決まったの?」
「えっ? ゆめ?」
「うん」
「あぁ、言ってなかったか」
 お兄ちゃんは驚いた顔をする。
「実はね、ゆめって名前、パパが決めたんだ」
「えっ? パパ?」
「うん!」
「なんで、ゆめって名前にしたの?」
「わたしがね、色々名前を考えたんだけど、パパはどうしても、ゆめっていう名前にしたいって言ってて、なんで? って聞いたらね、わたしと結婚した時から、女の子ができたら、ゆめにしたかったんだって、詳しい理由は分からないんだけど」
「そうだったんだ」
「そん時の父さん、マジで頑固だったからな。今でも覚えてるわ」
 お兄ちゃんが笑いながら言う。
 パパが決めたって知った時、少し嬉しくなった。
「そうだ、ゆめ。お兄ちゃんからもプレゼントがあるぞ!」
「えっ? 何々?」
「お兄ちゃんからは手紙のプレゼント! 読み上げるね」
「楽しみ!」
「ゆめへ、8歳の誕生日おめでとう! 俺は、ゆめが生まれたのがこの間のことのように感じます。あれはまだ俺が小学生だった時、妹ができるって知って、とても嬉しかったよ。ゆめと色んなところに行ったよね。どれも、全部良い思い出です。ゆめは、本当に俺の大切な妹です。これからも、よろしくね」
 そうお兄ちゃんが読み上げる。
 ……嬉しい。……嬉しい。
「……う……う、お兄ちゃん! 大好き」
 わたしはお兄ちゃんに抱きついた。
 お兄ちゃんは少しびっくりしていた。
「俺も、ゆめと母さんと父さん、家族みんな大好きだよ」
 そうお兄ちゃんはつぶやいた。
 パパ、わたしの家族は世界一だよ!

 ……そうつぶやくと、
「そうに決まってんだろ(笑)」
 そんな声が聞こえた気がした。

 完

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