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戯曲「本能寺の変についての事前打ち合わせ会議」

※少し前に書いて投稿を忘れていたもの。順番的には「とりあえず100編」の最後となる(実質は102編目になるが、2編削るため)

時代:天正十年(1582年)
舞台:心斎橋のジャンカラ(ジャンボカラオケ広場)

登場人物

羽柴秀吉
森蘭丸
千利休
明智光秀
柴田勝家
足利義昭
徳川家康
織田信長

※実際に台詞を話すのは秀吉、蘭丸、信長のみ。他の役者は即興で会話。最近観た映画の感想や、基本的にどうでもいい話などをするように。特に役割のない柴田、足利については他の武将で代用もしくは削っても可。

一幕もの

大人数向けのカラオケルーム内、ホワイトボードが持ち込まれ「信長にはもうついていけない」と議題が書かれている。

秀吉「皆様、お忙しい中よくぞ集まってくださいました。それでは第一回『上様にはもうついていけない会議』を開催いたします」

一同、思い思いに騒ぎ出す。泣き出す者、歯を食いしばって膝を叩く者など。

秀吉「まあまあ落ち着いてくだされ。日々戦いに明け暮れ、終わりの見えない出世競争、その果てには何があるのか、勝利の先に勝利を重ねたとて、一度の敗北で見放され、叩き落とされ、いつ切腹を命じられるか分からない、そんな状況に皆様うんざりしているかと思われます。では上様を謀殺する名案を持たれている方おられれば、ぜひご意見を」

一同黙る。

秀吉「警戒心が強く、常に馬廻り衆を従え、隙のない御仁であられるから、やはり難しいのかもしれませぬな。こうなることをあらかじめ予測して、本日はゲストを呼んでおります。あの方を倒せる唯一の可能性を持つのは、この方を置いて他にはおりますまい。蘭丸どの、お願いいたします」

蘭丸「では」

蘭丸、壁をトントンと叩く。壁が回転する。仕掛け扉だったのだ。信長、出てくる。

秀吉「暴虐の王、絶対君主、パワハラモンスター、我らが主、信長様であられます」

一同、「さすが秀吉」「その手があったか」「王を倒せるのは王しかおらぬ」といった言葉を口々に喚きたてる。

信長「静まれい」

一同、静まる。
秀吉、ホワイトボードの「信長」の後に「様」を付け加える。

信長「騒げ」

一同、再び騒ぎ始める。タンバリンシャンシャン。エアギター、エアドラム。腹を叩いてリズムを刻む者、他の壁にも仕掛けがないか調べる者など。

信長「静まれい」

一同、静まる。利休が時計を確認する。一同にお茶のお代わりを入れていく。信長にだけはウーロン茶のペットボトルを差し出す。

秀吉「殿、偉大なる殿にお知恵を拝借させていただきたくお呼びしました。殿ならば、暴虐の王をどのようにすれば倒せるとお考えですか」
信長「それって儂のことだよね」
秀吉「とある国のとあるところに、とあるパワハラ上司がおりまして」
信長「蘭丸、刀を出せ」
蘭丸「家に忘れてきました」

利休、信長が手をつけないでいるウーロン茶のペットボトルを、信長に握らせる。
信長、ペットボトルを刀のように振ってみるが、やっぱり違うよな、という感じで下に置く。

信長「なあみんな」
一同、「ははっ」と平伏する。
信長「儂って嫌われてる?」
一同、「ははっ」と平伏する。
信長「儂って怖がられてる?」
一同、「ははっ」と平伏する。

信長、天井を見上げる。涙をこらえているように。

信長「儂ならまず、その王が厳重な警備を解いている時を狙う。それにはまず、近習からの詳細な情報を得られるようにしておかねばならぬ。たとえば、最も近しい者」

信長、蘭丸を見つめる。蘭丸、メモを取る。

信長「遠方で戦を続けている者が、もっともらしい理由をつけて王を呼ぶ。苦戦しているので、王の助力が必要とか言ってな」

信長、秀吉を見つめる。秀吉、メモを取る。

信長「その移動の際に、遠方からの客人の歓待も日程に付け加えておく。最近活躍してくれた同盟相手に対する感謝の意味も込めて。また、今後強大化して敵対する未来のことも考え、可能ならばついでに謀殺してしまおうか、といった意味も込めて。そいつの警戒心を解くために、自身の周囲も大量の兵士を置かないようにする」

信長、家康を見つめる。家康はメモを取らない。

信長「王を討つ部隊は、最も王を討たなさそうな、誠意に溢れ、忠実な者を選ぶ。『まさかあいつが』という展開にする」

信長、光秀を見つめる。光秀は「え、俺?」みたいな顔をする。

信長「当日は襲撃の部隊は全てが迅速に行われるように、逆に王の周辺は全てが滞るように事を進める。王が知らないだけで、全ては王を倒すために段取りされている。いや、王も知っている。なぜならその王こそが、それまでの段取りを全て整えていたからだ。部下に指示を出し、会議に登場し、助言を乞われ、適切な指示を与えていた」

秀吉「さすが殿。お見事でした」

フロントから電話がかかってくる。蘭丸が取る。

蘭丸「ラスト五分です。延長しますか?」

信長がマイクを取って延長したいような素振りをする。

秀吉「延長なしで」

信長「敦盛」を入れる。一同、握手や抱擁をしてから、一人ずつ部屋を出ていく。利休は茶器を片付ける。敦盛を歌い終えた信長、ウーロン茶を飲む。


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