ゆめとこスクールの生徒が小説を書いたら
ゆめとこスクールの生徒が素敵な作品を描いてくれました。お楽しみください!
※こちらはアクタージュの二次創作です。
ちよなぎちよが水族館でデートをする話。
くらげに心はないんだって。
〝二番ホームで待ってるわ〟
〝もうすぐ着くよ〟
「楽しみ♡」のスタンプとともに、
ピコン、と通知音が鳴る。
「…ふふっ」
これから始まる一日を思い浮かべると、自然と笑みがこぼれる。
……私も何かスタンプを送った方がいいかしら?
悩んでいるうちに、私の前に人影が差す。
「――ケイコ、お待たせ。待った?」
私を見下ろす彼女。マスクをずらしてはにかむ姿は、まるで映画のワンシーンを見ているみたいで。
「……ううん、今来たところよ!」
「良かった。じゃあ――デート、始めよっか」
ガタンゴトンと、静かな揺れに身を預ける。
電車を何本か乗り継ぎながら、目的地へ向かう。
「行き先はひみつ」なんて言われたものだから、昨夜はあまり眠れなかった。
そして、辿り着いたのは――
青く大きな建物。
その外壁には、水の中を泳ぐ魚の絵が広がっている。
「わあ……!カレン、すごいわ!」
私の弾んだ声に、彼女が「はしゃぎすぎ」と小さく肩を震わせる。
子供みたいに無邪気な私の横で、千世子ちゃんはいつの間にか受け付けを済ませていた。
「えっ、いつの間に!?千世……カレン、いくらだったの?払うわ!」
「いいよそんなの。別に、わたしが行きたかっただけだし」
「でも………」
そう言いかけたところで、千世子ちゃんが私の手をそっと取り、チケットを握らせる。
「水族館、行ったことないんでしょ?
ならきっといい刺激になるね。ケイコ、行くよ」
――前に現場で少し話しただけなのに。覚えてくれていたなんて。
千世子ちゃんの当たり前のような器用さに、胸の奥がきゅっとなる。
自動ドアが静かに開いた。
空気が変わった。まるで――別世界に足を踏み入れたみたいに。
一歩、また一歩。進むたび、光が揺れる。
天井から落ちる水色の影が、足元をすくっていく。
目の前いっぱいには、確かに青い海が広がっていた。
「……すごい」
私がそう呟くと、横にいた千世子ちゃんの笑い声がまたくすりとこぼれる。
「海の中って、こんな感じなのかしら?」
「ううん。たぶん、もっと暗くて寒いよ」
ふわふわと漂うくらげの水槽を前に、千世子ちゃんが立ち止まる。
綺麗に整えられた指先が――静かにガラスをなぞりあげる。
「ねえ、カレン。くらげに心はないんだって」
ぽつり、何かのセリフみたいに。
駆け回る子供の声も、嬉しそうに手を繋ぐ恋人たちも、すべては彼女を引き立てるための演出だと思った。
……いいえ、きっとそうに違いないわ。
私は千世子ちゃんの後ろ姿を見つめていた。
「美しくて、完璧で。怖いよね」
「どうして?」と問いかけると、わずかに静けさが残る。
ふわりと彼女のワンピースが揺らめき、
やがて、くるりとこちらを振り返る。
「だって。綺麗なものって、いつも嘘ばかりでしょ?」
そしてまた、彼女は水槽に視線を戻す。
美しいものが、嘘なら――……くらげに心がないのなら。
今の千世子ちゃんも、そうなのだろうか。
わたしはそっと横に立ち、千世子ちゃんと同じようにくらげを見つめる。
たとえ私と同じ景色を見ていても、
彼女の瞳には、まったく違う世界が映っているのだろう。
「……それでも、キレイよ」
以下、思いのままに。
百城千世子がどうしようもなく好きです。
傲慢だけど、世界でいちばん彼女を好きな自信がある。
もっともっと彼女を知りたかった。いつか仮面が外れる、その時まで。
そんな世界線を夢見てしまう、亡霊のひとりです。
