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近づかないという距離

昨年、久しぶりに霧多布岬に行きました。
ここ十数年の間に、ラッコが住み着いていると聞いていたからです。
最後に行った時には、ラッコはいませんでした。

行ってみると、
思っていたよりも静かなままでした。

正直なところ、もっと観光客で賑わっているのかと考えていました。

駐車場も、観光地らしい雰囲気ではなく、
昔訪れた時のままでした。

大型の観光バスなどはいません。
それどころか、私たち以外、だれもいませんでした。

運が良ければ見られるかもしれない、
その程度の期待でしたが、

ラッコはいました。

穏やかな海に、ただ浮かんでいました。

私たちは岬の遊歩道から、ただ眺めるだけです。

ラッコを見るために用意されたものは、何もありません。
見学や撮影のマナーを呼びかける看板があるだけでした。

その距離のまま、時間が流れていきます。

風と波の音、
ときおり聞こえるカモメの鳴き声。

それだけの世界でした。

何も与えず、
何も求めず、
ただそこにいるものを見るだけ。

それ以上でも、それ以下でもない。

観光地として考えれば、
少し物足りないのかもしれません。

でも、その場所には、
それを埋めるようなものは何もありませんでした。

ふと、思いました。

―こういう距離の取り方で、保たれているんだな―

ラッコは、ただそこにいました。

それだけで、十分な気がしました。

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