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宮崎市定が見通していた高関税と密輸がもたらす秩序崩壊

 尋常でない率の関税によって、関税を逃れるためのロービー活動=政治決定者への賄賂が増加するという危機感。これは、政権中枢だけではなく、現場レベルでも起きるのではないか。
 中国企業には、関税職員に出港地偽装を隠蔽してもらうために賄賂を渡すインセンティブが十分に生じることになる。アメリカ企業も、中国の要路に同様のことをするだろう。
 要すれば、米・中双方が、密輸まみれの国になるということ。

 中国史の泰斗である宮崎市定が、中国の近代史を論じる中で、アヘン戦争と太平天国の乱の関係について、重要な指摘をしている。太平天国の乱は、アヘン戦争によって阿片の流通が合法化され、その流通経路が広東から上海に変ったため、阿片密輸を生業にしていた広東省の労働者や秘密結社とそこからの阿片と関連物資、そして金の流れに寄食して生活していた失業者が、食えなくなり、大合流して大規模な反乱になったと分析している。

南京条約による上海開港は、これまで広東を起点としていた輸出入品の運搬経路に大変革を引起した。その中には密輸品たる阿片も含まれる。要するに広東中心の外国貿易が、上海中心の外国貿易に移るとともに、中国内地の交通路もそれに対応して、旧交通路がすたれて新交通路が興るという大変換を蒙らねばならなかったのであれる。

”太平天国の性質について”「宮崎市定全集 16巻」p81

 一旦、密輸が経済圏に定着してしまうと、その密輸を圧迫することで、内乱の危機を招くということだ。

 明朝は北虜南倭という、自ら作り出した密輸の取り締まりに苦しみ、特に東北地域との交易の取締り強化が、女真族の蜂起につながった面があること。
 また、アメリカ独立革命の口火を切ることになったボストン茶会事件は、その直線の東インド会社の優遇策が茶の密輸の抑圧政策であったため、そこへの反発が蜂起につながったこと。
 こういった歴史的事例(教訓)を忘れてはならない。
 内乱の可能性が喧伝される両国だけに、背筋が寒くなる。

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